所得税は1月1日から12月31日までの期間で税額を計算する暦年課税を原則としていますが、一定の要件を満たす場合には、当年の損失を翌年以降に繰り越すことや、前年の所得税の還付請求をすることができます。
損失の繰越しと繰戻し
所得税ではそれぞれの所得ごとに所得金額を計算し、一定のルールにしたがって黒字の所得と赤字の所得の損益通算を行いますが、損益通算をしてもなお残った損失(純損失)や雑損控除の控除不足(雑損失)がある場合には、一定の要件にしたがって純損失や雑損失を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。
また一定の純損失については前年の所得税の還付を請求することもできます。
純損失の繰越控除
純損失の金額は翌年以降3年間にわたって繰り越し、翌年以降の損益通算後の所得金額から差し引くことができます。
ただし、純損失の繰越控除を適用するには損失が生じた年に青色申告書(又は確定申告書)を提出し、その後毎年確定申告書を提出しなければなりません。
要件 | 繰越控除の対象となる損失 | |
青色申告の場合 | 損失が生じた年の青色申告書を提出し、その後毎年確定申告書を提出する | 純損失の金額 |
白色申告の場合 | 損失が生じた年の確定申告書を提出し、その後毎年確定申告書を提出する | 純損失の金額のうち変動所得の損失と被災事業用資産の損失 |
雑損失の繰越控除
雑損失の金額も純損失の金額と同様に翌年以降3年間にわたって繰越し、翌年以降の損益通算後の所得金額から対象となる損失の金額を差し引くことができます。
ただし、純損失の繰越控除を適用するには、損失が生じた年に確定申告書を提出し、その後毎年確定申告書を提出しなければなりません。
要件 | 繰越控除の対象となる損失 | |
青色・白色共通 | 損失が生じた年の確定申告書を提出し、その後毎年確定申告書を提出している | 雑損失の金額 |
純損失の繰戻し(青色申告の場合に限る)
青色申告者が純損失が生じた年の前年も青色申告をしている場合には、純損失の全部又は一部を前年に繰り戻して、前年に納税した税額の還付を請求することができます。
要件 | |
青色申告の場合 | 次の要件を両方とも満たす場合 (1)損失が生じた年の青色申告書を期限内に提出し、同時に還付請求書を提出する (2)前年についても青色申告書を提出している |
白色申告の場合 | 純損失の繰戻はできません |
(※)その年に事業の廃止、死亡などをしている場合には特別な取り扱いがあります
法令等
この記事は2020年4月1日現在の法令等に基づいて書かれています。また、この記事は税法学習者に税法の一般的な取り扱いを解説するものですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。