2.4.5 貸倒損失と貸倒引当金

所得税では事業から生じた売掛金、貸付金、前払金等の債権が貸し倒れた場合には、一定のルールにしたがって必要経費にすることができます。また貸し倒れに備えるためにあらかじめ貸倒引当金を計上することも認められています。

貸倒損失

貸倒損失の取り扱い

貸倒損失が発生した場合、所得税では「事業所得、不動産所得(事業的規模)、山林所得」から発生した貸倒損失か、それとも「不動産所得(事業的規模以外)、雑所得」から発生した貸倒損失かに応じて、それぞれ次のように取り扱います。

必要経費になる時期と金額

発生した貸倒損失は、次のいずれに該当するかに応じて、それぞれ必要経費になる時期と金額が定められています。

法律上の貸倒れ

会社更生法や特別清算等によって債権が法律的に切り捨てられた場合や債務免除した場合の取り扱いは次のとおりです。

発生したこと 必要経費
になる時期
必要経費
になる金額
(会社更生法等)
更生計画認可の決定、再生計画認可の決定によって債権が切り捨てられた
事実が
発生した年

切り捨てられた
金額

(特別清算)
特別清算に係る協定の認可の決定よって債権が切り捨てられた
(関係者の協議)
・債権者集会の協議決定による切捨てで合理的な基準によるもの
・行政機関や金融機関などのあっせんに基づく当事者間の協議による切捨てで合理的な基準によるもの
(債務免除)
債務者に書面で債務免除した(債務超過が相当期間継続して金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合に限る)
債務免除した金額

事実上の貸倒れ

債権の全額回収不能が明かな場合には、次のとおり取り扱います。

発生したこと 必要経費
になる時期
必要経費
になる金額
(全額の回収不能)
債務者の資産状況や支払能力などから考えて債権の全額が回収できないことが明らかになった(担保物がある場合を除く)
収不能が明らかになった年
債権の全額

形式上の貸倒れ

取引経過後一定期間を経過しているなど形式的な要件を満たす場合には次のとおり取り扱います。

発生したこと 必要経費
になる時期
必要経費
になる金額
(取引停止後1年以上経過)
継続取引していた債務者の資産状況や支払能力など悪化したため、取引を停止した場合で、取引停止と最後弁済の遅い方から1年以上経過した場合(担保物のある場合を除く)
取引停止後1年以上経過した年 売掛債権-1円
(取立費用に満たない)
同一地域の債務者に対する取立費用が売掛債権の総額よりも多く、支払を督促しても弁済がない場合
弁済がない時以後の年

貸倒引当金

所得税では不動産所得や事業所得、山林所得の事業から生じた売掛金や貸付金等の債権の貸倒れに備えるために、あらかじめ貸倒引当金を計上することを認めています。

計上できる貸倒引当金には、債権の長期棚上げ等の事実が生じている場合の「個別評価」と、それ以外の場合の「一括評価」の二種類があり、それぞれで定められた繰入限度額まで引き当てることができます。

個別評価

個別評価の貸倒引当金の対象になるのは、次の4種類の債権でそれぞれの計算式にしたがって貸倒引当金の繰入限度額を計算します。

・長期棚上げの債権
会社更生法等による弁済の猶予や、賦払いによって弁済される債権

・債務超過等の債権
債務者の債務超過状態が相当期間継続して回収の見込みがない債権

・更生手続きの開始の申し立て等があった債権
債務者が会社更生法の更生手続き開始の申し立て等をした債権

・外国政府等に対する長期の履行遅滞にある債権
長期の履行遅滞にあって経済的価値が著しく減少し、弁済を受けることが著しく困難な債権

一括評価

青色申告書を提出する居住者に事業所得を有する者は、年末の売掛金等の帳簿価額の合計額に、金融業は3.3%、金融業以外は5.5%を乗じて計算した金額まで貸倒引当金を繰り入れることができます。

・一括評価の対象になるものとならないもの

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2.4 必要経費の概要

法令等

この記事は2020年1月31日現在の法令等に基づいて書かれています。また、この記事は税法学習者に税法の一般的な取り扱いを解説するものですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。

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