2.4.4 繰延資産

支出の効果が将来の期間にわたって現れる費用を繰延資産といい、所得税ではそのような費用について必要経費にするための特別なルールを設けています。

繰延資産の内容と範囲

繰延資産とは?

所得税では、必要経費は原則として債務が確定した時に認識されますが、その支出の効果が将来にわたって現れる資産を繰延資産といい、効果が現れる期間にわたって必要経費にします。

例えば、建物を賃借するために支払う権利金は、建物の賃借という将来ために支出するものですので、支出時に全額が必要経費になるのではなく、いったん繰延資産として帳簿に資産計上し、その後、建物の使用に合わせて償却することによって必要経費になります

繰延資産の範囲

所得税では、開業費や開発費の他に税法固有の繰延資産が定めらているため、一般的な会計ルールよりも繰延資産の範囲が広くなっています。具体的には次のものが所得税の繰延資産になりますが、これらに該当する場合であっても、支出の効果が支出日から1年未満で終わるものについては繰延資産にはなりません。

繰延資産 具体例
開業費 事業開始前の開業準備のために特別に支出した費用
開発費 新たな技術や資源の開発、新市場の開拓などの費用
公共施設などを設置するための負担金 道路や堤防などを設置するための負担金
同業者団体の会員が共同で使用する会館の建設負担金
資産を賃借するための権利金等 建物を賃借するための権利金
電子計算機を賃借するための権利金
役務の提供を受けるための権利金等 ノウハウの頭金
広告宣伝資産の贈与費用 飲料メーカーの商品名が大きく描かれた冷蔵庫
その他、自己が便益を受けるための費用 プロスポーツ選手の契約金

繰延資産の償却方法

資産として計上された繰延資産は、それぞれ定められている償却期間にわたって、次の計算式で償却することによって必要経費になります。ただし、開業費と開発費については任意償却とされていますので、いつでも必要経費にすることができます。

20万円未満の場合は、繰延資産にしないで、他の費用と同様に債務が確定した年に全額を必要経費にすることができます。

(例)店舗を賃借するため、7月10日に権利金30万円を支払いました。繰延資産の償却期間が5年の場合。
資産を賃借するための権利金は繰延資産ですので、30万円は償却期間にわたって必要経費になります。
1年目の必要経費:
30万円×6カ月/60カ月=3万円
2年目~5年目の必要経費:
30万円×12カ月/60カ月=6万円
6年目の必要経費:
30万円×6カ月/60カ月=3万円

繰延資産の償却期間

開業費、開発費

開業費と開発費は60カ月の均等償却又は任意償却のどちらを選択できます。

任意償却とは任意の時に任意の金額を償却できるということで、例えば支出時に全額償却したり、赤字期間は全く償却せずに、黒字が出た年にだけ償却するなど、納税者が償却の時期と金額を自由に決められます。

繰延資産の内容 償却期間
開業費 60カ月の均等償却又は任意償却
開発費 60カ月の均等償却又は任意償却

公共的施設などを設置するための負担金

・公共施設を設置または改良するための費用の場合
(例)道路や堤防などを設置するための負担金

繰延資産の内容 償却期間
費用の負担者がもっぱら使用するもの その施設等の耐用年数×7/10
その他のもの その施設等の耐用年数×4/10

・協同施設を設置または改良するための費用の場合
(例)同業者団体の会員が共同で使用する会館の建設負担金

繰延資産の内容
償却期間
負担者又は構成員が共同の用に供するもの、協会等の本来の用に供するもの 負担金のうち施設の建設又は改良に充てる部分 その施設等の耐用年数×7/10
負担金のうち土地の取得に充てる部分 45年
商店街の共同アーケードや日よけ等のように、負担者の共同の用と一般公衆の用の両方に供されるもの
5年
(ただし、施設の耐用年数が5年未満の場合はその耐用年数)

資産を賃借するための権利金等

・建物の賃借の場合

繰延資産の内容
償却期間
新築建物の権利金等で、賃借期間の建設費の大部分に相当し、かつ、建物の存続期間中賃借できるもの 賃借する建物の耐用年数×7/10
上記以外の建物を賃借するための権利金 借家権として転売できるもの 賃借する建物の賃借権後の
見積残存耐用年数×7/10
借家権として転売できないもの 5年
(契約による賃借期間が5年未満で、契約更新時に再び権利金等を支払うことが明かな場合は賃借期間)

・電子計算機などの機器の賃借の場合

繰延資産の内容 償却期間
電子計算機などの機器の賃借に伴う費用 賃借する機器の耐用年数×7/10
(その年数が賃借期間を超える場合は賃借期間)

役務の提供を受けるための権利金等

繰延資産の内容 償却期間
ノウハウの頭金など 5年
(設定契約の有効期間が5年未満で、契約更新時に再び一時金や頭金を支払うことが明かな場合は有効期間の年数)

広告宣伝用資産の贈答費用

(例)飲料メーカーが寄贈する商品名が大きく描かれた冷蔵庫

繰延資産の内容 償却期間
広告宣伝用資産の贈与費用 贈与した資産の耐用年数×7/10
(その年数が5年を超えるときは5年)

その他自己が便益を受けるための費用

繰延資産の内容 償却期間
スキー場のゲレンデ整備費用 12年
出版権の設定の対価 契約に定める存続期間(存続期間の定めがない場合は3年)
同業者団体等の加入金 5年
プロスポーツ選手の契約金等 契約期間(契約期間の定めがない場合は3年)

関連記事

2.4 必要経費の概要

法令等

この記事は2019年9月30日現在の法令等に基づいて書かれていますまた、記事の内容は税法の一般的な取り扱いについての解説ですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。