2.4.3 資本的支出と修繕費

取得した固定資産も時の経過ともにメンテナンスが必要になります。また、性能を向上させるために改良する場合もあります。

所得税では固定資産の修理や改良をする場合には、それらにかかった金額を「資本的支出」と「修繕費」に区分して取り扱います。

資本的支出と修繕費とは?

「資本的支出」とは、固定資産の修理や改良などのため支出のうち、固定資産の使用可能期間を延ばしたり、固定資産の価値を上げたりするものをいいます。所得税では資本的支出を支出時の必要経費とはせずに、資本的支出の対象となった減価償却資産と種類及び耐用年数が同じ減価償却資産を新たに取得したものとして取り扱います。

一方、「修繕費」とは、固定資産の維持管理や原状回復のための費用のことをいい、資本的支出とは異なり修繕した年の必要経費になります。

資本的支出

資本的支出とは固定資産の修理や改良などの支出のうち、固定資産の使用可能期間を長くしたり価値をあげたりするものをいいます。

(例)フローリングを張り替えて使用可能期間が長くなったり価値が上がった場合

資本的支出の具体例

次のようなものが資本的支出に該当します。

資本的支出 具体的な内容
物理的に付加する費用 建物に追加で避難用階段を設置するなど、物理的に何かを付加するための費用
用途変更のための改造や改装 固定資産を従来の用途から変更するための改造や改装などに
直接必要な費用
高性能なものへの変更 機械の部品を特に品質や性能の高いものに交換した場合の通常の交換費用を超える部分
機能の追加向上 ソフトウエアの新たな機能の追加や向上などの費用
(例)機械の古くなった部品を交換しました。部品を新素材を使ったものに交換しました。通常の修理代金は300万円ですが、新素材を使ったため500万円かかりました。
通常の修理代金300万円は修繕費になりますが、200万円分は性能を向上させるもののため資本的支出になります。

資本的支出の取り扱い

資本的支出の金額は、資本的支出の対象となった減価償却資産と種類及び耐用年数が同じ減価償却資産を新たに取得したものとして取り扱います。

(例)耐用年数10年の機械の性能を向上させるため100万円の資本的支出をしました。
耐用年数10年の機械に対する資本的支出ですので、耐用年数10年の機械を新たに取得したものとして減価償却費を計算します。

修繕費

修繕費とは固定資産の修理や改良などの支出のうち、通常の維持管理や原状回復するために必要なものをいいます。

修繕費の具体例

次のようなものが修繕費に該当します。

修繕費 具体的な内容
移えいや解体移築 建物の移えいや解体移築の費用(解体移築の場合は旧資材の70%以上が再使用可能で、旧資材をそのまま利用して同じ規模、構造の建物を再建築するものに限ります)
機械装置の移設 機械装置の移設費用(集中生産などのための移設を除く)
地盤沈下した土地の地盛り 地盤沈下した土地を回復するための地盛り費用(土地の取得直後の地盛り、土地の用途変更や価値を著しく増加するための地盛り、地盤沈下により評価損を計上した土地の地盛りを除く)
床上げや地上げ、移設 地盤沈下によって海水などの浸害を受けたために行う床上げや地上げ、移設の費用(明らかな改良工事を除く)
砂利の敷設など 土地の水はけを良くするために行う砂利の敷設などの費用
ソフトウエアの障害除去や
パフォーマンスの維持
ソフトウエアの障害除去やパフォーマンス維持のためのプログラム修正費用等
災害により被害を受けた固定資産 被災した固定資産の原状を回復費用や被災前の効用を維持するための補強工事等(評価損を計上したものを除く)
少額の修理や改良等 一つの修理や改良等が20万円未満のものや、修理や改良等の周期がおおむね3年以内のもの

資本的支出と修繕費が混ざっている場合

修理や改良等に資本的支出と修繕費が混ざっている場合には、資本的支出の金額と修繕費の金額を次のように区分します。

原則的な取り扱い

一つの修繕や改良の中に資本的支出と修繕費が混ざっている場合には、原則として「使用期間が延びた場合」と「価値が上がった場合」に応じて次のように区分します。
(使用期間が延びた場合と価値が上がった場合の両方に該当する場合には、いずれか多い方を資本的支出の金額にします)

使用期間が延びた場合

修理や改良等によって固定資産の使用期間が延びた場合には、次の計算式によって資本的支出の金額と修繕費の金額を区分します。

資本的支出:支出額×(b)/(c)
修繕費:支出額×(a)/(c)

(例)工事用車両の修理を行い200万円を支払いました。通常の管理修理を行った場合の残存使用可能期間3年、今回の修理後の使用可能期間は5年です。
資本的支出: 200万円×(5年-3年)/5年=80万円
修繕費: 200万円×3年/5年=120万円

価値が上がった場合

修理や改良等によって固定資産の価値が上がった場合には、次のように資本的支出の金額と修繕費の金額を区分します。

資本的支出:修理や改良後の時価-通常の維持修理をした場合の時価
修繕費:資本的支出以外の部分

(例)事務所建物の修繕をしました。工事代金は1,000万円で、修繕後の事務所建物時価は3,000万円、通常の管理・修理だけをした場合の事務所建物の時価は2,600万円です。
資本的支出: 3,000万円-2,600万円=400万円
修繕費: 1,000万円-400万円=600万円

特例:形式基準、区分の特例

固定資産の修理や改良等の費用を資本的支出と修繕費に分けることは容易ではありません。そこで資本的支出か修繕費か明らかでない金額については、次の方法で区分することが認められています。

形式基準

(例)80万円で機械の修理をしましたが、資本的支出と修繕費を区分できません。この機械の前年末の取得価額は1,000万円でした。
修理費用80万円≦前年末取得価額1,000万円×10%→全額を修繕費にできます

資本的支出と修繕費の区分の特例

(例)150万円で車両の修理をしましたが資本的支出と修繕費を区分できません。この車両の前年末の取得価額は300万円、毎年区分の特例を適用しています。
修繕費: 修理費用150万円×30%=45万円>前年末取得価額300万円×10%=30万円→修繕費は30万円。
資本的支出: 修理費用150万円ー修繕費30万円=120万円

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2.4.1 減価償却費

法令等

この記事は2020年1月31日現在の法令等に基づいて書かれています。また、この記事は税法学習者に税法の一般的な取り扱いを解説するものですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。

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