2.4.1 減価償却費

建物や構築物などの減価償却資産を取得した場合には、取得にかかった金額の全額が取得した年の必要経費になるわけではなく、いったん固定資産として帳簿に記帳した後、耐用年数にわたって少しずつ必要経費にしていきます。

減価償却資産とは?

減価償却資産になるもの

減価償却資産とは不動産所得、事業所得、山林所得、雑所得で使用される資産で、「有形減価償却資産」「無形減価償却資産」「生物」の3種類があり、固定資産として帳簿に記帳された後、使用期間する期間にわたって減価償却を通じて必要経費として認識していきます。

減価償却資産と減価償却費のイメージ(耐用年数4年、取得価額100万円の定額法)

減価償却資産にならないもの

減価償却資産には、有形減価償却資産、無形減価償却資産、生物の3種類がありますが、これらに該当するものであっても、少額なものや時間の経過に応じて価値が減少しないもの(土地、金地金、一定の美術品等など)などは減価償却資産にはなりません。

減価償却資産にならないもの 取り扱い
取得価額が10万円未満のもの 取得価額全額が使用開始した年の必要経費になります
取得価額が10万円以上30万円未満のもの(※)
使用可能期間が1年未満のもの
時間の経過で価値が減少しないもの 減価償却できません(資産として計上)
棚卸資産、建設(製造)中のもの 減価償却できません(資産として計上)

(※)一定の要件を満たす青色申告者が取得するものに限ります

減価償却資産の取得価額

減価償却資産を取得した場合には、購入代金だけではなく取得するためにかかった付随費用(引取り運賃や荷役費など)も取得価額に含まれます。したがって、付随費用を含めた取得価額が減価償却資産として帳簿に記帳され、耐用年数にわたって減価償却されることになります。

購入した資産

購入した減価償却資産の取得価額は、購入代金に購入のために要した費用、事業の用に供するために直接要した費用を加えた額になります。

(例)機械を100万円で購入し、引取運賃と設置費用に20万円かかった場合。
引取運賃や設置費用は機械の取得価額に含まれます。したがって機械の取得価額は120万円になります。

自分で製造、建設、製作した資産

自己で製造、建設、製作した減価償却資産の取得価額は原材料費、労務費、経費に事業の用に供するために直接要した費用を加えた額になります。

減価償却費の計算方法

減価償却費の計算には「定額法」「定率法」「生産高比例法」などの方法がありますが、代表的な方法である定額法と定率法について解説します。なお、減価償却資産であっても稼働休止中のものや建設中のものなど業務に使用していないものは減価償却することができません。

定額法

原則

減価償却資産の耐用年数にわたって、毎年同じ金額を減価償却費として必要経費にする方法です。毎年の減価償却費は「取得価額」に「定額法償却率」を乗じて計算します。

(例)1月に新品の測定用の工具を100万円で購入し、すぐに使用開始しました(測定用工具の耐用年数は5年、定額法の償却率は0.200です)。
減価償却費は次のように計算します。

減価償却費 減価償却後の帳簿価額
1年目 1,000,000円×0.200=200,000円 800,000円
2年目 1,000,000円×0.200=200,000円 600,000円
3年目 1,000,000円×0.200=200,000円 400,000円
4年目 1,000,000円×0.200=200,000円 200,000円
5年目 (償却前帳簿価額ー※1円)
200,000円ー1円=199,999円
1円

(※)有形固定資産は帳簿価額が1円になるまでしか減価償却できません

年の途中で使用開始した減価償却資産

減価償却資産を年の途中から使用開始した場合には、1年目の減価償却費は使用月数に応じて月数按分して計算します。
(例)7月10日に新品の測定用の工具を100万円で購入し、すぐに使用開始しました(測定用工具の耐用年数は5年、定額法の償却率は0.200)。
減価償却費は次のように計算します。

減価償却費 減価償却後の帳簿価額
1年目 1,000,000円×0.200×6月/12月=100,000円 900,000円
2年目 1,000,000円×0.200=200,000円 700,000円
3年目 1,000,000円×0.200=200,000円 500,000円
4年目 1,000,000円×0.200=200,000円 300,000円 
5年目 1,000,000円×0.200=200,000円 100,000円 
6年目 (償却前帳簿価額ー※1円)
100,000円ー1円=99,999円
1円 

(※)有形固定資産は帳簿価額が1円になるまでしか減価償却できません

定率法

原則

定率法は「年初の帳簿価額」に「定率法償却率」を乗じて減価償却費を計算する方法で、使用が進むにつれて減価償却費が減少する特徴があります。

ただし、通常の減価償却費(「年初帳簿価額」×「定率法償却率」)が償却保証額(「取得価額」×「償却保証率」)を下回った場合には、「改定取得価額×改定償却率」によって減価償却費を計算します。

(用語の意味)
償却保証額

「取得価額×償却保証率」で計算した金額です。通常の減価償却費が償却保証額を下回る場合には、「改定取得価額×改定償却率」によって減価償却費を計算します。
改定取得価額
初めて「通常の減価償却費<償却保証額」となったときの帳簿価額をいいます。
(例)1月に新品の測定用の工具を100万円で購入し、すぐに使用開始しました(測定用工具の耐用年数は5年、定率法の償却率は0.400、改定償却率は0.500、償却保証率0.10800)。
帳簿価額に定率法償却率を乗じて減価償却費を計算しますが、その金額が償却保証額の10.8万円(=取得価額100万円×償却保証率0.10800)を下回った場合には、以降は改定取得価額×改定償却率によって減価償却費を計算します。

減価償却費 減価償却後の帳簿価額
1年目 1,000,000円×0.400=400,000円 600,000円
2年目 600,000円×0.400=240,000円 360,000円
3年目 360,000円×0.400=144,000円 216,000円
4年目 216,000×0.400=86,400円<108,000円
(したがって、改定取得価額×改定償却率で計算)
216,000円×0.500=144,000円
108,000円
5年目 (償却前帳簿価額ー※1円)
108,000円ー1円=107,999円
1円

(※)有形固定資産は帳簿価額が1円になるまでしか減価償却できません

年の途中で使用開始した減価償却資産

減価償却資産を年の途中から使用開始した場合には、1年目の減価償却費は使用月数に応じて月数按分して計算します。

(例)7月10日に新品の測定用の工具を100万円で購入し、すぐに使用開始しました(測定用工具の耐用年数は5年、定率法の償却率は0.400、改定償却率は0.500、償却保証率0.10800)。
5年目に通常の減価償却費が償却保証額の10.8万円(=取得価額100万円×償却保証率0.10800)を下回ったため、以降は改定取得価額×改定償却率によって減価償却費を計算します。

減価償却費 減価償却後の帳簿価額
1年目 1,000,000円×0.400×6/12=200,000円 800,000円
2年目 800,000円×0.400=320,000円 480,000円
3年目 480,000円×0.400=192,000円 288,000円
4年目 288,000円×0.400=115,200円 172,800円
5年目 172,800×0.400=69,120円<108,000円
(したがって、改定取得価額×改定償却率で計算)
172,800円×0.500=86,400円
86,400円
6年目 (償却前帳簿価額ー※1円)
86,400円ー1円=86,399円
1円

(※)有形固定資産は帳簿価額が1円になるまでしか減価償却できません

償却方法の選択

減価償却費の計算方法は、減価償却資産の区分(建物、建物附属設備、構築物など)に応じて次のとおり決められています。

一つの減価償却資産に複数の償却方法がある場合には、どの方法を採用するか税務署長に届け出なければならず、届け出ない場合は青字の償却方法(法定償却方法)で減価償却費を計算します。

・2016年4月以降に取得した減価償却資産の償却方法(所得税)

減価償却資産の区分 償却方法
1. 建物 定額法
2. 建物附属設備 定額法
3. 構築物
定額法
4. その他の有形減価償却資産
(鉱業用減価償却資産とリース資産を除く)

定額法、定率法
5. 鉱業用減価償却資産  建物、建物附属設備、構築物   生産高比例法、定額法
 その他  生産高比例法、定額法、定率法
6. 無形減価償却資産(鉱業権を除く)、生物
定額法
7. 鉱業権
 生産高比例法定額法
8. リース資産
リース期間定額法

これら以外にも特別な償却方法が認められる場合があります。

償却可能限度額

減価償却資産には資産の種類ごとに減価償却できる限度額が決められており、例えば有形減価償却資産であれば「取得価額-1円」まで(帳簿価額が1円になるまで)しか減価償却することができません。

・2007年4月以降に取得した減価償却資産の償却可能限度額

減価償却資産の種類 償却可能限度額
有形減価償却資産
(坑道、リース資産を除く)
取得価額-1円
(帳簿価額が1円になるまで)
生物 取得価額-1円
(帳簿価額が1円になるまで)
坑道 取得価額全額
(帳簿価額が0円になるまで)
無形減価償却資産 取得価額全額
(帳簿価額が0円になるまで)
リース資産 取得価額-残価保証額
(帳簿価額が残価保証額になるまで)

一括償却資産

減価償却資産の取得価額が20万円未満の場合は、一括償却資産として使用開始から3年間、毎年取得価額の3分の1ずつを必要経費にすることができます。

(例)2020年10月に18万円で購入し、すぐに使用開始したパソコンを一括償却資産として取り扱う場合

一括資産の償却額
2020年 18万円÷3年=6万円(10月から使用開始ですが月数按分しません)
2021年 18万円÷3年=6万円
2022年 18万円÷3年=6万円

法令等

この記事は2020年1月31日現在の法令等に基づいて書かれています。また、この記事は税法学習者に税法の一般的な取り扱いを解説するものですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。

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