2.2.8 譲渡所得の計算

土地や建物、株式、船舶、航空機などを譲渡した場合は、事業所得や山林所得等になるものを除いて譲渡所得として所得税が課税されます。ここでは、譲渡所得の金額をどのように計算するのかを解説します。

譲渡所得の範囲

譲渡所得とは、資産の譲渡による所得のことをいいます。ただし、棚卸資産や棚卸資産に準ずる資産の譲渡、営利目的のために継続的に行われる資産の譲渡、山林の伐採や譲渡、金銭債権の譲渡を除きます。

譲渡とは?
有償・無償に係わらず所有権が移転される一切のことです。したがって、売買だけではなく、交換や競売、代物弁財、収用、現物出資なども譲渡になります。

次のような所得は譲渡所得との区別が難しいので注意しないといけません。

譲渡所得の区分

譲渡所得では、譲渡対象物(何を譲渡するか)によって総合課税分離課税に分けられます。例えば土地や建物等の譲渡であれば分離課税として他の所得(例えば事業所得や不動産所得)とは区分して所得税の額を計算しますが、船舶や航空機等の譲渡の場合は総合課税になりますので他の所得と合算して所得税の額を計算します。

分離課税になる場合は所得税の計算上、他の所得の影響を受けませんが、総合課税になる場合は譲渡所得だけではなく他の所得と合算した合計額に応じて所得税の税率が決められます。

また、譲渡する資産を所有していた期間に応じて長期譲渡所得短期譲渡所得に区分します。長期譲渡所得と短期譲渡所得では税率等が異なりますので、同じ所得金額であっても長期譲渡所得に区分された方が短期譲渡所得よりも所得税の額が小さくなります。

・総合課税と分離課税、長期と短期の違い

  総合課税 分離課税
 長期譲渡所得 ・他の所得と通算して累進課税
・税負担が短期譲渡所得よりも軽い
・他の所得と通算しないで単一税率
・税負担が短期譲渡所得よりも軽い
 短期譲渡所得 ・他の所得と通算して累進課税
・税負担が長期譲渡所得よりも重い
・他の所得と通算しないで単一税率
・税負担が長期譲渡所得よりも重い

一般の譲渡所得(総合課税されるもの)

譲渡所得の金額

一般の譲渡所得は短期譲渡所得(総合短期)と長期譲渡所得(総合長期)に分けて、それぞれ次のように所得金額を計算します。

・総合短期

・総合長期

(※)特別控除額は総合短期と総合長期と合わせて最高50万円で、最初に総合短期から控除します。

計算された所得金額については、総合短期では所得金額の全額をそのまま他の所得と合算しますが、総合長期は所得金額に2分の1を乗じてから他の所得と合算するため所得税の負担が小さくなります。

(例)2019年の譲渡所得の金額は次のとおりでした。譲渡所得以外には事業所得があります。

総収入金額 取得費 譲渡費用
 総合短期  300万円 270万円 10万円
 総合長期 500万円 340万円 10万円

・総合短期
総収入金額300万円ー取得費270万円ー譲渡費用10万円ー特別控除額20万円=0円
・総合長期
総収入金額500万円ー取得費340万円ー譲渡費用10万円ー特別控除額30万円=120万円
・総所得金額の計算(他の所得との合算)
譲渡所得(総合長期)120万円に2分の1を乗じた60万円を事業所得の金額と合算して総所得金額を計算します。

総収入金額

譲渡所得の総収入金額は、次の収入金額収入の時期に基づいて計算します。

・収入金額

収入金額
 原則  譲渡価額
法人に対する贈与や限定承認による相続等 贈与、相続、遺贈時の時価
法人に対する低額譲渡(時価の50%未満) 譲渡時の時価
借地権又は地役権の設定 権利の設定対価

・収入の時期

収入の時期
 原則  資産の引き渡し日
売買契約の効力発生日とすることも可)
農地又は採草放牧地の譲渡で許可や届出が必要なもの 農地又は採草放牧地の引き渡し日
(売買契約締結日とすることも可)
借地権又は地役権の設定 借地権、地役権の設定日
法人に対する贈与や限定承認による相続等 贈与、相続、遺贈があった日
(例)船舶を1,000万円で譲渡しました。船舶の引き渡し日は2020年1月ですが、代金は2019年12月中に500万円を、引き渡し後に残りの500万円を受け取る契約になっています。収入の時期は資産の引き渡し日とします。
現金の収受に係わらず1,000万円の全額が引き渡し日である2020年の収入になります。

取得費

取得費とは譲渡した資産の取得に要した金額に、設備費や改良費を加えて、償却費を控除した金額になります。

・取得費に要した金額
購入代金だけではなく取得のための付随費用(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税、取得資金の借り入れ利子で一定のもの等)を含みます。
・償却費
業務に使用していた資産の場合は償却費の累計額とします。業務に使用していなかった資産の場合は、通常の償却費の計算とは異なる特別な方法で計算します。
(例)航空機を譲渡しました。航空機は28億円で購入して、2億円をかけて内装工事をしています。購入から譲渡までの償却費は12億円でした。
・取得費
航空機28億円+内装工事2億円ー償却費12億円=18億円

譲渡費用

譲渡費用とは資産の譲渡のための費用で、具体的には次のようなものがあります。

譲渡費用の具体例
資産の譲渡のために直接要した費用(仲介手数料、運搬費、登記や登録の費用など)
立退料、土地等を譲渡するための建物等の取壊費用など
売買契約締結済みの資産を更に有利な条件で他に譲渡するための契約解除の違約金
資産の譲渡価額を増加させるために譲渡に際して支出した費用

土地、建物等の譲渡

土地、建物等の譲渡は分離課税(他の所得とは合算しないで譲渡所得だけで所得税の額を計算する)になりますが、所有期間に応じてさらに分離長期と分離短期に区分されます。また、優良住宅の造成や居住用財産の譲渡など一定のものについては、一般の土地、建物等の譲渡所得と比較して税率が適用されます。

また、株式等の譲渡であっても、実質的に短期の土地譲渡に類似するものについては、株式等の譲渡ではなく土地の譲渡として所得税が課税されます。

株式等の譲渡

株式等の譲渡は原則として上場株式等と一般株式等に区分して、申告分離課税で所得税が課税されます(非課税になるものや総合課税の対象になるものもあります)

特例

譲渡所得には収用があった場合は、居住用財産を譲渡した場合、交換の場合など多くの特例が認められています。

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2.2 所得の種類

法令等

この記事は2019年9月30日現在の法令等に基づいて書かれています。また、記事の内容は税法の一般的な取り扱いについての解説ですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。