2.2.8 譲渡所得の計算

土地や建物、株式、船舶、航空機などを譲渡した場合には、事業所得や山林所得等になるものを除いて譲渡所得として所得税が課税されます。ここでは、譲渡所得の金額をどのように計算するのかを解説します。

譲渡所得の範囲

譲渡所得とは資産の譲渡による所得のことをいいますが、棚卸資産や棚卸資産に準ずる資産の譲渡、営利目的のために継続的に行われる資産の譲渡、山林の伐採や譲渡、金銭債権の譲渡は譲渡所得の範囲から除かれます。

譲渡所得
具体例
資産の譲渡
(棚卸資産や山林の譲渡等を除く)
土地、建物、借地権、株式、金地金、宝石、書画、船舶、航空機、機械、特許権、鉱業権などの譲渡
譲渡とは?
有償・無償に係わらず所有権が移転される一切のことです。したがって、売買だけではなく、交換や競売、代物弁財、収用、現物出資なども譲渡になります。

・譲渡所得と他の所得との区別

譲渡所得の区分

譲渡所得は譲渡対象物によって総合課税と分離課税、保有期間によって長期と短期に区分されます。

例えば船舶や航空機等の譲渡は総合課税の対象であるため他の所得と合算して所得税の計算をしますが、土地や建物等の譲渡は分離課税であるため他の所得とは区分して所得税を計算します(総合課税が他の所得と合算して課税されるため他の所得と合算した合計額に応じて税率が決まるのに対して、分離課税では譲渡所得だけで税額計算するため他の所得の影響を受けないといった特徴があります)。

また、譲渡対象物の保有期間5年を境に長期と短期に区分されており、それぞれで適用される税率等が異なります。

  総合課税 分離課税
 長期譲渡所得 ・他の所得と通算して累進課税
・税負担が短期譲渡所得よりも軽い
・他の所得と通算しないで単一税率
・税負担が短期譲渡所得よりも軽い
 短期譲渡所得 ・他の所得と通算して累進課税
・税負担が長期譲渡所得よりも重い
・他の所得と通算しないで単一税率
・税負担が長期譲渡所得よりも

一般の譲渡所得(総合課税されるもの)

譲渡所得の金額

一般の譲渡所得は短期譲渡所得(総合短期)と長期譲渡所得(総合長期)に区分して、それぞれ次のように所得金額を計算します。

・総合短期

・総合長期

(※)特別控除額は総合短期と総合長期を合わせて最高50万円、最初に総合短期から控除します。

計算された譲渡所得の金額については、総合短期では所得金額の全額をそのまま他の所得と合算しますが、総合長期は所得金額に2分の1を乗じてから他の所得と合算するため所得税の負担が小さくなります。

(例)譲渡所得の金額は次のとおりで譲渡所得以外には事業所得がありました。

総収入金額 取得費 譲渡費用
 総合短期  300万円 270万円 10万円
 総合長期 500万円 340万円 10万円

・譲渡所得(総合短期)
総収入金額300万円ー取得費270万円ー譲渡費用10万円ー特別控除額20万円=0円
・譲渡所得(総合長期)
総収入金額500万円ー取得費340万円ー譲渡費用10万円ー特別控除額30万円=120万円
・総所得金額(他の所得の合算)
譲渡所得(総合長期)120万円×1/2=60万円を事業所得の金額と合算して総所得金額を計算します。

総収入金額

譲渡所得の総収入金額は、次の収入金額と収入の時期に基づいて計算します。

・収入金額

収入金額
 原則  譲渡価額
法人に対する贈与や限定承認による相続等 贈与、相続、遺贈時の時価
法人に対する低額譲渡(時価の50%未満) 譲渡時の時価
借地権又は地役権の設定 権利の設定対価

・収入の時期

収入の時期
 原則  資産の引き渡し日
売買契約の効力発生日とすることも可)
農地又は採草放牧地の譲渡で許可や届出が必要なもの 農地又は採草放牧地の引き渡し日
(売買契約締結日とすることも可)
借地権又は地役権の設定 借地権、地役権の設定日
法人に対する贈与や限定承認による相続等 贈与、相続、遺贈があった日
(例)船舶を1,000万円で譲渡しました。引き渡し2020年1月ですが、代金のうち500万円を2019年12月、残りの500万円を引き渡し後に受け取る契約になっています。
現金の収受に係わらず1,000万円の全額が引き渡し日(売買契約の効力発生日とすることも可)である2020年の収入金額になります。

取得費

取得費とは譲渡した資産の取得に要した金額に設備費や改良費を加えて、償却費を控除した金額になります。

・取得費に要した金額
購入代金だけではなく取得のための付随費用(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税、取得資金の借り入れ利子で一定のもの等)を含みた金額です。
・償却費
業務に使用していた資産の場合は償却費の累計額としますが、業務に使用していなかった資産の場合は通常の償却費の計算とは異なる方法で計算します。
(例)28億円で購入2億円で内装工事した航空機を譲渡しました。購入から譲渡までの減価償却費は12億円でした。
取得費:
取得に要した金額28億円+内装工事2億円ー減価償却費12億円=18億円

譲渡費用

譲渡費用とは仲介手数料や運搬費、立退料など資産の譲渡のためにかかった費用で、具体的には次のようなものが譲渡費用になります。

譲渡費用の具体例
(1) 資産の譲渡のために直接要した費用(仲介手数料、運搬費、登記や登録の費用など)
(2) 立退料、土地等を譲渡するための建物等の取壊費用など
(3) 売買契約締結済みの資産を更に有利な条件で他に譲渡するための契約解除の違約金
(4) 資産の譲渡価額を増加させるために譲渡に際して支出した費用

土地、建物等の譲渡

土地や建物等の譲渡は分離課税になるため他の所得とは合算せずに所得税の計算をしますが、所有期間に応じて分離長期と分離短期の二種類に区分されます。また、優良住宅の造成や居住用財産の譲渡など一定のものについては、一般の土地や建物等の譲渡所得と比較して低い税率が適用されます。

株式等の譲渡であっても、実質的に短期の土地譲渡に類似するものについては、株式等の譲渡ではなく土地の譲渡として所得税が課税されます。

株式等の譲渡

株式等の譲渡は原則として上場株式等と一般株式等に区分して申告分離課税で所得税が課税されます(例外的に非課税になるものや総合課税の対象になるものもあります)。

譲渡所得の特例

譲渡所得にはここで解説されたもの以外に、収用による譲渡、居住用財産の譲渡、交換による譲渡の場合など多くの特例があります。

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2.2 所得の種類

法令等

この記事は2019年11月30日現在の法令等に基づいて書かれています。また、このサイトは税法を学ぶ方に税法の一般的な取り扱いを解説するものですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。