所得税の青色申告-特典と適用要件

所得税は申告納税方式の税金であるため、適切な申告と納税を行うためには納税者自らが帳簿書類を備え付けて、それに基づいた所得金額と税額の計算をする必要があります。

そこで、納税者の帳簿書類の備え付けを促進するために、一定の帳簿書類を備え付けている納税者が税務署長の承認を得た場合には、税務上の特典を受けられる制度として「青色申告」制度が設けられています。

青色申告の主な特典

青色申告とは、一定の帳簿を備え付けた納税者が税務署長の承認を得て行う申告のことで、様々な税務上の特典を受けることができる制度です。青色申告以外の申告については、青色申告と区別するために、一般に白色申告といいます。

青色申告の主な特典
(1) 青色申告特別控除
(2) 青色事業専従者給与
(3) 現金主義
(4) 純損失の繰越控除、繰戻還付
(5) 更正の制限、推計課税の禁止
(6) 引当金の計上
(7) 棚卸資産の低価法
(8) 特別償却、特別控除

青色申告特別控除

青色申告者は青色申告特別控除として所得金額から最高で65万円を控除することができます。ただし、特別控除できる金額は、特別控除前の所得金額を限度とします(言い換えれば、所得金額が0円になるまでしか控除できません)。

青色申告の場合 白色申告の場合
所得金額から最高65万円を控除 適用なし
(例)青色申告者のAさんは2020年に事業所得として売上1,000万円、必要経費が950万円ありました。
(1) 特別控除前の所得金額: 売上1,000万円ー必要経費950万円=50万円
(2) 特別控除額: 65万円>50万円((1)の金額) したがって50万円
(3) 所得金額: 売上1,000万円ー必要経費950万円ー特別控除額50万円=0円

青色事業専従者給与

青色申告者と同一生計の親族(15歳以上)が、その青色申告者の事業に専従する場合には、一定の届出を要件に、その専従者に対する給与を青色申告者の必要経費にすることができます。

ただし、専従者に対して支給する給与が高額すぎる場合には、適正と認められる金額までしか必要経費にはできないため注意が必要です。

青色申告の場合 白色申告の場合
支給額の全額が必要経費になる
(支給額が高額過ぎる場合は適正額まで)
最高50万円まで控除できる
(専従者が配偶者の場合は最高86万円)
 (例)青色申告者のAさんは妻に毎月20万円の給与を支給しています。妻の経験や技能、資格から考えて20万円は適正な金額です。
妻に支給する20万円をAさんの必要経費にすることができます(妻には受け取った給与に対する所得税が課税されます)。

現金主義

前々年の不動産所得と事業所得の合計が300万円以下の青色申告者は、現金主義によって所得金額を計算することが認められています。

青色申告の場合 白色申告の場合
所得要件を満たす場合、現金主義が認められる 適用なし
現金主義
現金の支出と収入があったときに、費用と収益を認識する経理方法です。
(例)青色申告者のBさんは、要件を満たしているため現金主義によって所得金額を計算しています。2019年12月に販売した商品の代金を2020年1月に受領ました。
現金主義では商品を販売したとき(2019年)ではなく、代金を受領したとき(2020年)の売上として所得金額を計算します。

純損失の繰越控除と繰戻還付

青色申告者に発生した純損失の金額は翌年以降3年間繰り越すことができます。また、純損失を翌年以降に繰り越さずに、前年に繰り戻して前年に納付した所得税の還付を請求することもできます。

青色申告の場合 白色申告の場合
繰越控除と繰戻還付ができる 変動所得等の繰越控除のみできる
純損失
事業所得、不動産所得、譲渡所得、山林所得の計算上発生した損失で、他の所得と損益通算してもなお残った金額をいいます。
(例)青色申告者のCさんは2020年の事業所得が700万円でしたが、2019年から繰り越した純損失が500万円ありました。
2019年から繰り越した純損失500万円を、2020年の事業所得700万円から控除することができます。

更正の制限など

税務署長等は青色申告者に対して帳簿書類の調査に基づかない更正、推計による更正や決定をすることができません。

青色申告の場合 白色申告の場合
帳簿書類の調査に基づかない更正、推計による更正や決定ができない 帳簿書類の調査に基づかない更正、推計による更正や決定ができる
(例)青色申告者のDさんは居酒屋を営んでいますが、Dさんの財産や債務の状況、ビールの仕入数量、店員の人数などから考えて申告した以上の所得があると推計されます。
Dさんは青色申告者ですので、税務署長は財産や債務の状況などから推計して所得税の更正をすることはできません。更正するには帳簿書類の調査が必要です。

引当金

青色申告者は貸倒引当金や退職給付引当金を繰り入れて、限度額までを必要経費にすることができます。

青色申告の場合 白色申告の場合
貸倒引当金や給与引当金を必要経費にできる 個別評価の貸倒引当金のみ必要経費にできる
(例)青色申告者のEさんは2020年末の決算直前に貸倒引当金が100万円ありました。2020年末の貸倒引当金の繰入限度額は120万円です。
繰入限度額120万円-決算直前の貸倒引当金100万円=20万円を必要経費にできます。

棚卸資産の低価法

青色申告者は低価法によって棚卸資産の評価をすることができます。
青色申告の場合 白色申告の場合
低価法で棚卸資産の期末評価ができる 適用なし
(例)青色申告者のFさんは棚卸資産を最終仕入原価法の低価法で評価しています。12月末に商品Xの在庫が1,000個、最後に仕入れた時の単価は1万円でしたが、時価は8,000円まで下落しています。
最終仕入原価法の年末評価額は1,000個×1万円(最後仕入単価)=1,000万円ですが、低価法の年末評価額は1,000個×8,000円(時価)=800万円ですので、800万円を棚卸資産の評価額とすることができます。差額の200万円は評価損として必要経費になります。

特別償却と特別税額控除

青色申告者が一定の要件を満たす場合には特別償却や特別控除が認められています。

青色申告の場合 白色申告の場合
特別償却、特別控除ができる 適用なし
(例)青色申告者のGさんは加工用の機械を購入しました。特別控除の要件を満たしています。
特別控除の要件を満たしているので特別控除額を所得税から控除できます。

青色申告を行うための要件

青色申告を行うには次の三つの要件を全て満たす必要があります。

青色申告を行うための三つの要件
(1) 不動産所得、事業所得又は山林所得があること
(2) 青色申告の承認手続き
税務署長に青色申告承認申請書を提出して承認されていること
(3) 帳簿書類の保存
法定の帳簿を備え付けて取引を記録し、その帳簿を保存していること

青色申告の承認手続き

青色申告を開始する場合

青色申告の適用を受けるためには、適用開始する年の3月15日まで(1月16日以降に業務を開始した場合は、業務開始から2カ月以内)に青色申告承認申請書を税務署長に提出しなければいけません。

青色申告承認申請書の提出期限

提出された青色申告承認申請書について税務署所長は承認又は却下をしますが、12月末まで(11月以降に業務開始している場合は翌年2月15日まで)に承認や却下がない場合には承認されたとみなします。

承認が取り消される場合

帳簿書類の備付け、記録、保存が法令の要件に従っていなかった等の事実があった場合には、青色申告の承認はその事実があった年に遡って取り消されます。

青色申告の承認が取り消される場合
法令に従った帳簿書類の備付け、記録、保存ができてなかった
帳簿書類について税務署長の指示に従わなかった
帳簿書類に取引を隠ぺい又は仮装した記載があった
電子取引の取引情報が適切に保存されていなかった

青色申告をやめる場合

青色申告者が青色申告の適用をやめる場合には、青色申告をやめようとする年の翌年3月15日までに税務署長に青色申告の取りやめの届出書を提出する必要があります。

帳簿書類の保存

青色申告者は、次のとおり帳簿(原則として複式簿記)及び書類を保存する必要があります。

帳簿書類 保存期間
帳簿(総勘定元帳、仕訳帳等) 7年間
決算関係書類(貸借対照表、損益計算書、棚卸表等) 7年間
現金取引等関係書類(領収証、預金通帳、借用証等) 7年間(※)
その他の書類(請求書、見積書、契約書、納品書等) 5年間

(※)前年の所得金額が300万円以下の場合は5年間

青色申告書の添付書類

青色申告者は提出する青色申告書に貸借対照表や損益計算書など財務省令に定められた書類を添付しなければなりません。
青色申告書の添付書類
貸借対照表、損益計算書
不動産所得、事業所得、山林所得の計算明細書
純損失の金額の計算明細書

法令等

この記事は2020年4月1日現在の法令等に基づいて書かれています。また、この記事は税法学習者に税法の一般的な取り扱いを解説するものですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。

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