1.5 所得税の申告と納付

所得税は申告納税方式の税金ですので、納税者は原則として毎年、所得の金額と税額を自ら計算して所轄税務署長に申告します。

確定申告

確定申告と納付の期限

所得税の確定申告期限は毎年、翌年の2月16日から3月15日までなっています。また、申告した税金の納期限も申告期限と同様に翌年の2月16日から3月15日までです。

(例)個人事業主の2019年の確定申告期限と納期限
申告期限と納期限は翌年の3月15日まですが、2020年3月15日は日曜日のため、申告期限と納期限は2020年3月16日(月)になります。

確定申告義務がある人

所得のある人は原則として所得税の申告義務がありますが、年末調整をされたサラリーマンで一定の要件を満たす人は確定申告をする必要がないといった例外的な取り扱いがあります。

これらの例外を考慮して確定申告する義務の有無をフローチャートにまとめると以下のようになります。フローチャートのうち一つにでも該当する場合は確定申告をする義務があります

(1) 給与所得の場合

サラリーマンや会社役員のように給与所得がある人については、通常年末調整によって申告前に所得税の額が一度精算されていますので、給与所得以外の所得(例えば事業所得や不動産所得など)が多くない場合は確定申告をしないでよいことになっています。

ただし、年末調整されている場合であっても、給与等(俸給、給与、賃金、歳費、賞与など)が2,000万円を超える場合は、給与所得以外の所得の有無にかかわらず確定申告をすることになっています。

(例)A社から給与等として年間500万円が支給されているサラリーマンですが副業で25万円の収入(必要経費は10万円)がありました。これら以外に収入はありません。
副業の所得は雑所得で、収入25万円から必要経費10万円を控除した15万円が所得金額になります。給与等2,000万円以下で、かつ雑所得が20万円以下ですので確定申告をする義務はありません。

(2) 退職所得の場合

退職一時金などの退職所得については、退職一時金などを受け取ったときに源泉徴収された税額が退職所得に対する税額よりも多い場合は確定申告する必要がありません(確定申告義務がない場合でも所得税の還付を受けるために確定申告することができます)

(3) 国外に出国する場合

国外に出国する場合、1月1日から出国までの所得について出国の時までに確定申告(正式には準確定申告といいます)をしないといけません。

ただし出国する人に納税管理人がいる場合には、通常通り1月1日~12月31日までの所得について翌年2月16日~3月15日までに納税者に代わって納税管理人が確定申告をすることになります。

(4) (1)~(3)以外の場合

(1)~(3)のいずれにも該当しない人については、納付税額がある場合(課税所得に対する税額が配当控除を超える場合)は、確定申告をしないといけません。

確定申告義務がなくても確定申告できる場合

所得税の確定申告義務は上記の解説のとおりですが、確定申告義務がない場合であっても税額の還付を受けるためや損失を翌年以降に繰越すなどのために、自ら確定申告をすることが認められています。

還付を受けるための申告

確定申告する義務がない場合でも、1年間の所得税額よりも予定納税や源泉徴収によって既に納付した税額の方が大きい場合は、納付しすぎた税額の還付を受けるための確定申告ができます。

(例)年末調整をされた会社員で給与所得以外には何も収入がありません。ただし医療費として20万円支出しました。
年末調整をされているので確定申告義務はありません。ただし医療費控除によって源泉徴収されて税額の還付を受けられる場合には確定申告をすることができます。

確定損失申告

確定申告する義務がない場合でも、その年に純損失や雑損失が発生したため、純損失や雑損失を翌年以降に繰越す場合、または、純損失の繰戻しによる還付を受ける場合には確定申告をすることができます。

純損失と雑損失
純損失とは事業所得、不動産所得、譲渡所得、山林所得の計算上発生した損失で、他の所得と通算しきれずに残った損失をいいます。一方、雑損失とは災害や盗難、横領によって発生した損失のうち、雑損控除によって控除しきれなかった損失をいいます。
(例)商店を営む個人事業主ですが2019年の事業所得は1,000万円の赤字でした。この他に主有する不動産の所得が300万円あります。
事業所得の損失1,000万円を不動産所得300万円と通算してもなお700万円の純損失が残りますので、700万円の純損失を翌年以降に繰越す(または繰戻しによる還付を受ける)ために確定損失申告をすることができます。

準確定申告(死亡した場合、または出国する場合)

納税者が死亡した場合や出国する場合は、通常の確定申告とは異なった期限までに申告をしないといけません。このような申告を確定申告と区別して準確定申告といいます。

納税者が死亡した場合

納税者が死亡した場合、相続人は原則として相続の開始があったことを知った日から4か月以内に準確定申告をしないといけません。

この場合、準確定申告書は相続人の連名で死亡した人の所轄税務署長に提出しないといけません。

納税者が出国する場合

納税者が出国する場合は、原則として出国の時までに準確定申告をしないといけません。ただし、出国する人が納税管理人を届け出ている場合は、準確定申告ではなく、通常どおり1月1日~12月31日までの所得について翌年2月16日~3月15日までに納税管理人が確定申告をします。

予定納税

所得税では確定申告によって1年間の税額を計算し、申告・納付しますが、1年間の税額を全て一度に納付することは納税者にとっても負担になりますし、国にとっても歳入が平準化しないといった問題があります。そこで一定の要件を満たす納税者は確定申告より前に一定の税額を納付することになっています。これを予定納税といいます。

予定納税する人と予定納税額

所得税の納税者のうち予定納税基準額が15万円以上の人は、7月と11月に予定納税基準額の1/3ずつを納税しないといけません。ただし、特別農業所得者については予定納税基準額の半分を11月に納税します。なお、予定納税額は6月15日までに所轄税務署から書面で通知されるため自ら計算する必要はありません。

予定納税基準額
予定納税基準額は前年の所得税額に一定の調整をした金額から源泉徴収税額を控除した金額をいいます。
特別農業所得者
特別農業所得者とは農業所得が総所得金額の70%超で、かつ、9月1日以降の農業所得が年間農業所得の70%超の人をいいます。

予定納税額の減額の申請

予定納税額は原則として前年の税額(予定納税基準額)に基づいて計算されるため、例えば事業を廃業・休業した場合や業績不振などによって当年の所得が前年を大きく下回る場合には大きな負担になってしまいます。

そこで、その年の所得税額(1年間の見積額)が予定納税基準額を下回ると見込まれる場合は、所轄税務署長に予定納税額の減額を申請することができます。予定納税額の減額が申請された場合、所轄税務署長は調査を行った減額の承認または却下をします。

法令等

この記事は2019年7月31日現在の法令等に基づいて書かれています。