所得税は申告納税方式の税金のため、納税者が自ら所得金額と税額を計算して所轄税務署長に申告しなければなりません。では、「どのような場合にいつまでに」所得税の申告をしなければならないのでしょうか?
目次
確定申告
確定申告と納付の期限
所得税の確定申告及び納付の期限は毎年、翌年の2月16日から3月15日までです。1年間(1月~12月)の所得は、翌年のこの期間に申告書を提出し、納税を済ませなければなりません。
確定申告と納付の期限は翌年の3月15日のため、2020年分の確定申告と納付の期限は、2021年3月15日になります。
(※)新型コロナウイルス感染症の影響により2019年分の確定申告期限は2020年4月16(木)まで延長されました。
確定申告義務がある人
給与所得がある人や退職所得がある人など、それぞれの区分に応じて次の(1)~(4)に該当する人は確定申告をする義務があります((1)~(4)のうち一つでも申告義務ありに該当する場合には確定申告義務があります)。
(1) 給与所得がある場合
会社員や会社役員、公務員などの給与所得者については年末調整によって所得税の精算がされるため、給与所得以外の所得(「事業所得」「不動産所得」など)が少額な場合には確定申告をする必要がありません。
ただし、年末調整を受けている場合であっても、給与等が2,000万円超の場合などには確定申告義をしなければなりません。
副業収入25万円から必要経費10万円を控除した15万円が雑所得の金額になります。給与等が2,000万円以下で、その他の所得が20万円以下の要件を満たすため確定申告義務はありません。
(2) 退職所得がある場合
退職一時金などの退職所得については、退職所得に対する税額が源泉徴収された税額よりも大きい場合や、源泉徴収されていない退職手当等がある場合には確定申告義務があります。
(3) 国外に転出する場合
納税者が国外に転出する場合には、1月1日から転出の時までの所得について、転出の時までに準確定申告をしなければなりません。ただし、国外転出する人に納税管理人がいる場合には、通常どおり1月1日~12月31日までの所得について翌年2月16日~3月15日までに納税管理人が確定申告をすることになります。
(4) (1)~(3)以外の場合
(1)~(3)のいずれにも該当しない人は、納付税額がある場合(課税所得に対する税額が配当控除を超える場合)に確定申告をしないといけません。
確定申告できる場合
納税者は確定申告義務がない場合であっても、所得税の還付を受けるためや、損失を翌年以降に繰り越すために確定申告をすることができます。
還付を受けるための申告
予定納税や源泉徴収によって既に納付した税額が年所得税額を超える場合には、確定申告義務が無い場合であっても、過納税額の還付を請求するために確定申告をすることができます。
給与所得が2,000万円以下で、他に収入がないため確定申告義務はありませんが、医療費控除によって所得税の還付を受けるために、確定申告をすることができます。
確定損失申告
その年に発生した純損失や雑損失を「翌年以降に繰越す」ため、又は純損失の「繰戻しによる還付」を受けるために確定申告をすることができます。
「純損失」とは、事業所得、不動産所得、譲渡所得、山林所得の計算上発生した損失で、他の所得と損益通算しても残った損失をいいます。
一方「雑損失」とは、災害、盗難、横領によって資産に受けた損失のうち、災害等が発生した年分の雑損控除として控除しきれなかった金額をいいます。
事業所得の損失1,000万円を不動産所得300万円と通算してもなお700万円の純損失が残りますので、700万円の純損失を翌年以降に繰越控除(又は繰戻還付)ために確定損失申告をすることができます。
準確定申告(死亡した場合、又は国外転出する場合)
納税者が死亡した場合や国外転出する場合には、一定の期限までに申告と納付をする必要があります。これを準確定申告といいます。
納税者が死亡した場合
納税者が死亡した場合には、相続人は原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に、準確定申告をしなければなりません(準確定申告書は相続人の連名で死亡した人の所轄税務署長に提出します)。
納税者が国外転出する場合
納税者が国外転出する場合には、原則として国外転出の時までに準確定申告をしなければなりません。
ただし、国外転出する人が納税管理人を届け出ている場合には、通常どおり翌年2月16日~3月15日までに納税管理人が確定申告をすることになります。
予定納税
所得税は確定申告によって1年間の税額を計算して申告・納付しますが、年間の税額を一度に納付することは納税者にとって負担が大きい上、国の歳入も平準化しないといったデメリットがあります。
そこで一定の要件を満たす場合には、年の中途であらかじめ一定額を予定納税することになっています。
予定納税する人と予定納税額
所得税の納税者のうち予定納税基準額が15万円以上の人は、7月と11月に予定納税基準額の3分の1ずつを納税しなければなりません。
前年の所得税額に一定の調整を行い、源泉徴収税額を控除した金額をいいます。
ただし、特別農業所得者については上記に関わらず予定納税基準額の半額を11月に予定納税します。
農業所得が総所得金額の70%超で、かつ、9月1日以降の農業所得が年間農業所得の70%超の人をいいます。

予定納税額の減額の申請
予定納税額は原則として前年の税額(予定納税基準額)に基づいて計算されるため、休廃業や業績不振などによって当年の所得金額が前年を大きく下回る場合には、負担が大きくなります。
そこで、その年の所得税額(1年間の見積額)が予定納税基準額を下回ると見込まれる場合には、所轄税務署長に予定納税額の減額を申請することができます。予定納税額の減額が申請された場合、所轄税務署長は調査したうえで減額の承認又は却下を行います。
法令等
この記事は2020年4月1日現在の法令等に基づいて書かれています。また、この記事は税法学習者に税法の一般的な取り扱いを解説するものですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。