実質所得者課税の原則

個人の事業や資産の運用などから得た収益には所得税が課税されますが、これらの収益を得たとされる人が単なる名義人であって、収益を享受していない場合には、誰に対して所得税が課税されるのでしょうか?

所得税の課税の原則である実質所得者課税の原則について解説します。

実質所得者課税の原則

事業や資産から収益を得たとされる人が単なる法律上の名義人であって、実質的にはその名義人以外の人が収益を得ている場合には、法律上の名義人ではなく実質的に収益を得ている人に対して所得税が課税されます。これを「実質所得者課税の原則」といいます。

資産から生じる収益

土地や建物などの不動産賃料、株式の配当、公社債の利息など、資産の所有によって生じる収益の場合には、原則として資産の真実の所有者に対して所得税が課税されます。

ただし、資産の真実の所有者が誰であるのか明らかではない場合には、資産の名義人に対して所得税が課税されます。

資産から生じる収益が課税される人の判定フローチャート

(例)Aさんは親戚のBさんから譲り受けた事務所用の建物を第三者に賃貸しています。親戚から譲り受けたものなので所有権移転登記は「そのうちやれば良い」と思っており、登記簿上はBさんが所有者のままになっています。
事務所用建物の登記簿上の所有者はBさんのままですが、既にAさんが譲り受けているため真実の所有者はAさんになります。したがって賃貸収益の所得税はAさんに課税されます。

事業から生じる収益

事業から生じる収益は、事業用資産の所有者や事業の免許を受けている名義人といった形式的なものにはとらわれずに、実質的にその事業を経営していると認められる人(事業主)に対して課税されます。

事業から生じる収益が課税される人の判定フローチャート

(例1)同一生計の父と息子の二人で旅館を経営していますが、息子はまだまだ経験が足りないため経営方針の最終決定は父が下しています。
経営方針の最終決定を下しているのが父ということですので、旅館の経営者は父であると推定されます。
(例2)Cさんは飲食店の営業許可や各契約の名義人になっていますが、単に名義を貸しただけで、Dさんが資金管理や利益の処分、従業員管理を行うなど実質的に事業を支配管理しています。
Dさんが事業を支配管理し収益を享受しているため、営業許可や各契約の名義にかかわらず、経営者はDさんであると推定されます。

法令等

この記事は2020年4月1日現在の法令等に基づいて書かれています。また、この記事は税法学習者に税法の一般的な取り扱いを解説するものですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。

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