2.6.3 調整対象固定資産とは?

固定資産は長期間にわたって使用されるために、取得時の状況だけで税額計算することが適切ではない場合もあります。そこで消費税の計算では一定の条件を満たす固定資産(調整対象固定資産)を取得した後に課税売上割合が大きく変動した場合には、仕入控除税額の調整をすることにしています。

仕入控除税額の調整が必要な理由

仕入税額控除の仕組み

事業者が納税する消費税は、原則としてその事業者が受け取った消費税から支払った消費税を控除した残額として計算される仕組みになっています。これは同一の商品やサービスに二重、三重に消費税が課税されないようにするためのもので、このように納付する消費税額から仕入れ時に支払った消費税を控除することを仕入税額控除といいます。

・仕入税額控除の計算のイメージ(全額控除できる場合)

ただし、仕入税額控除を比例配分法によって計算している場合には、原則として支払った消費税に課税売上割合(売上全体のうちに課税売上と免税売上の占める割合)を乗じた金額までしか仕入税額控除ができません(非課税売上があっても、課税売上の金額などよって全額控除できる場合もあります。詳しくはこちらをご覧ください)

・仕入税額控除の計算のイメージ(一括比例配分方式、課税売上割合50%の場合)

課税売上割合が変動した場合の調整

比例配分法での仕入控除税額は、上記のように仕入れ時に支払った消費税額にその課税期間の課税売上割合を乗じて計算します。

しかし、例えば長期間使用する固定資産を課税売上割合が80%の課税期間中に購入したものの、その後の課税期間で課税売上割合が20%に低下したような場合でも、仕入れ時の課税売上割合の80%で仕入控除税額を計算することが適切なのでしょうか?(課税売上割合が20%から80%に増加するような場合にも同様の疑問があります)

そこで消費税法では、一定の要件を満たす固定資産(調整対象固定資産)については、仕入れた課税期間から3年の間に課税売上割合が著しく変動した場合には、3年目の課税期間に仕入控除税額の調整をすることにしています。

調整対象固定資産の範囲

仕入控除税額の調整の対象になる固定資産を調整対象固定資産といいますが、具体的には建物、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品などのうち1単位あたりの税抜金額が100万円以上のものをいいます(棚卸資産を除く)。

(例)販売用の機械を1台300万円で仕入れました。
1単位あたり100万円以上の固定資産ですが、棚卸資産(販売用)ですので、調整対象固定資産ではありません。

調整が必要か否かの判定

調整対象固定資産を取得したからといって必ずしも仕入控除税額の調整が必要なわけではなく、具体的には次の(1)から(3)の全ての要件を満たす場合に限って仕入控除税額の調整を行います。

(1) 仕入れ時に比例配分法で仕入控除税額を計算している

比例配分法とは次の方法をいいます

比例配分法
個別対応方式のうち課税資産と非課税資産に共通する課税仕入等として、課税売上割合を乗じて仕入控除税額を計算する方法
一括比例配分方式
課税仕入等の全額が控除される場合

(2) 調整対象固定資産を3年間保有している

3年間とは具体的には、調整対象固定資産の仕入れ等の課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の末日までをいいます

(3) 3年間の通算課税売上割合が著しく変動している

3年間の通算課税売上割合が著しく変動している場合とは次の両方の要件を満たすものをいいます
・通算課税売上が仕入れ時の課税売上割合と比べて50%以上変動

・通算課税売上割合が仕入れ時から5%以上変動
(例)当社は2016年度に調整対象固定資産の課税仕入を行い2018年度末まで保有しています。各課税期間の売上金額は次のとおりで、毎期一括比例配分方式を適用しています。

課税期間 課税売上
非課税売上 課税売上割合
2016年度
(2016年4月1日~2017年3月31日)
9,000万円
1,000万円 90%
2017年度
(2017年4月1日~2018年3月31日)
500万円
4,500万円 10%
2018年度
(2018年4月1日~2019年3月31日)
500万円
9,500万円 5%
合計
(2016年4月1日~2019年3月31日)
1億円
1億5,000万円
40%

(1) 比例配分法
調整対象固定資産の課税仕入を行った2016年度は一括比例配分方式を適用しています。
(2) 3年間保有
仕入れの課税期間の初日(2016年4月1日)から3年を経過する日の属する課税期間の末日(2019年3月31日)まで調整対象固定資産を保有しています。
(3) 課税売上割合の著しい変動
・(仕入れ時90%ー通算40%)÷仕入時90%=55.55%≧50%
・仕入れ時90%ー通算40%=50%≧5%
(1)~(3)の全ての要件を満たすので2018年度に仕入控除税額の調整が必要です。

調整額の計算

調整対象固定資産について仕入控除税額の調整が必要と判定された場合は、次の計算式によって仕入控除税額の調整額を計算します。

(例)当社は2016年度に調整対象固定資産を税込1,100万円(うち消費税78万円、地方消費税22万円)で仕入れ2018年度末まで保有しています。各課税期間の売上金額は次のとおりで、毎期一括比例配分方式を適用しています。

課税期間 課税売上
非課税売上 課税売上割合
2016年度
(2016年4月1日~2017年3月31日)
9,000万円
1,000万円 90%
2017年度
(2017年4月1日~2018年3月31日)
500万円
4,500万円 10%
2018年度
(2018年4月1日~2019年3月31日)
500万円
9,500万円 5%
合計
(2016年4月1日~2019年3月31日)
1億円
1億5,000万円
40%

(1) 仕入控除税額の調整が必要かどうかの判定
・2016年度に一括比例配分方式を適用している
・3年間保有している
・課税売上割合が著しく変動している
3つの要件を全て満たすので仕入控除税額の調整が必要
(2) 調整額の計算
消費税(国税分)の調整額:78万円×(仕入時90%ー通算40%)=39万円
通算課税売上割合が減少しているので2018年度の仕入控除税額を39万円減額します。

法令等

この記事は2019年10月31日現在の法令等に基づいて書かれています。また、記事の内容は税法の一般的な取り扱いについての解説ですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。