消費税の調整対象固定資産とは?

固定資産は長期間にわたって使用されるため、取得時の状況だけで仕入税額控除の計算をすることが適切ではない場合もあります。そこで消費税の計算では一定の条件を満たす固定資産(調整対象固定資産)を取得した後に課税売上割合が大きく変動した場合には、仕入税額控除の調整をすることにしています。

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仕入税額控除の調整が必要な理由

仕入税額控除の仕組み

事業者が納税する消費税は、原則としてその事業者が受け取った消費税から支払った消費税を控除した残額として計算される仕組みになっています。これは同一の商品やサービスに二重、三重に消費税が課税されないようにするためのものですが、このように納付する消費税額から仕入れ時に支払った消費税を控除することを仕入税額控除といいます。

・仕入税額控除の計算のイメージ(全額控除できる場合)

ただし、その事業者に非課税売上があるため仕入税額控除を比例配分法によって計算している場合には、支払った消費税に課税売上割合(売上全体のうちに課税売上と免税売上の占める割合)を乗じて仕入税額控除の計算をします。

・仕入税額控除の計算のイメージ(比例配分法、課税売上割合50%の場合)

課税売上割合が変動した場合の調整

比例配分法では支払った消費税額に課税売上割合を乗じて仕入税額控除の計算をしますが、課税売上割合が課税期間ごとに著しく変動する場合には、長期間にわたって使用する固定資産について、仕入れ時の課税売上割合だけで仕入税額控除の計算をすることが適切だとは言えません。

そこで一定の要件を満たす固定資産(調整対象固定資産)を仕入れた課税期間から3年の間に、課税売上割合が著しく変動した場合には、3年目の課税期間に仕入税税額控除の調整をすることにしています。

調整対象固定資産の範囲

仕入税額控除の調整対象になる固定資産とは「建物、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品」など(棚卸資産を除く)のうち1単位あたりの税抜金額が100万円以上のものをいい、これらを調整対象固定資産といいます。

(例)販売用の機械を1台300万円で仕入れました。
1単位あたり100万円以上の機械ですが棚卸資産(販売用)ですので調整対象固定資産ではありません。

調整の判定

事業者は調整対象固定資産を取得したからといって必ずしも仕入控除税額の調整が必要なわけではなく、次の(1)から(3)の全ての要件を満たす場合に限って調整が必要になります。

(1) 仕入れ時に比例配分法で仕入控除税額を計算している

比例配分法とは次のものをいいます。
・個別対応方式のうち課税資産と非課税資産に共通する課税仕入等
・一括比例配分方式
・課税仕入等の全額が控除された場合

(2) 調整対象固定資産を3年間保有している

3年間とは「調整対象固定資産の仕入れ等の課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の末日まで」をいいます。

(3) 3年間の通算課税売上割合が著しく変動している

3年間の通算課税売上割合が著しく変動している場合とは「通算課税売上割合が仕入れ時の課税売上割合と比べて50%以上変動」かつ「通算課税売上割合が仕入れから5%以上変動」している場合をいいます。

① 仕入税額控除に加算する場合

② 仕入税額控除を減算する場合
(例)当社は2016年度に調整対象固定資産の課税仕入を行い2018年度末まで保有しています。各課税期間の売上金額は次のとおりで、毎期一括比例配分方式を適用しています。

課税期間 課税売上
非課税売上 課税売上割合
2016年度
(2016年4月1日~2017年3月31日)
9,000万円
1,000万円 90%
2017年度
(2017年4月1日~2018年3月31日)
500万円
4,500万円 10%
2018年度
(2018年4月1日~2019年3月31日)
500万円
9,500万円 5%
合計
(2016年4月1日~2019年3月31日)
1億円
1億5,000万円
40%

(1) 比例配分法
調整対象固定資産の課税仕入を行った2016年度は一括比例配分方式を適用しています。
(2) 3年間保有
仕入れの課税期間の初日(2016年4月1日)から3年を経過する日の属する課税期間の末日(2019年3月31日)まで調整対象固定資産を保有しています。
(3) 課税売上割合の著しい変動
・(仕入れ時90%ー通算40%)÷仕入時90%=55.55%≧50%
・仕入れ時90%ー通算40%=50%≧5%
(1)~(3)の全ての要件を満たすので2018年度に仕入税額控除の調整が必要です。

調整額の計算

調整対象固定資産について仕入税額控除の調整が必要と判定された場合は、次の計算式によって調整額を計算します。

① 仕入税額控除に加算する場合

② 仕入税額控除を減算する場合

(例)当社は2016年度に調整対象固定資産を税込み1,080万円(うち消費税63万円、地方消費税17万円)で仕入れ2018年度末まで保有しています。各課税期間の売上金額は次のとおりで、毎期一括比例配分方式を適用しています。

課税期間 課税売上
非課税売上 課税売上割合
2016年度
(2016年4月1日~2017年3月31日)
9,000万円
1,000万円 90%
2017年度
(2017年4月1日~2018年3月31日)
500万円
4,500万円 10%
2018年度
(2018年4月1日~2019年3月31日)
500万円
9,500万円 5%
合計
(2016年4月1日~2019年3月31日)
1億円
1億5,000万円
40%

(1) 仕入控除税額の調整が必要かどうかの判定
・2016年度に一括比例配分方式を適用している
・3年間保有している
・課税売上割合が著しく変動している
3つの要件を全て満たすので仕入税額控除の調整が必要
(2) 調整額の計算
消費税(国税分)の調整額:63万円×(仕入時90%-通算40%)=31.5万円
通算課税売上割合が減少しているので2018年度の仕入税額控除を31.5万円減額します。

法令等

この記事は2020年4月1日現在の法令等に基づいて書かれています。また、この記事は税法学習者に税法の一般的な取り扱いを解説するものですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。

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