2.6.2 仕入税額控除の計算

事業者が資産の譲渡や貸付け、役務の提供をした場合には消費税が課税されますが、そのままでは生産者から流通業者を通して消費者に商品が届くような場合には、商品が消費者の手元に届くまでに、繰り返し消費税が課税されることになってしまいます。

そこで消費税には仕入税額控除という制度を設けており、消費税が繰り返し課税されない仕組みになっています。

仕入税額控除とは?

仕入税額控除の仕組み

消費税法では、同一の商品やサービス等に対して消費税が繰り返し課税されることを避けるため、事業者が確定申告で納付する消費税から仕入時に支払った消費税を控除することを認めており、これを仕入税額控除といいます。

その結果、例えば生産者から卸売業者、小売業者を通して消費者に渡った商品であっても、生産から流通の全ての過程を通して納税される消費税の合計額は、消費者が支払った消費税と原則として一致するようになっています(課税売上割合が95%未満の場合などでは一致しないこともあります)。

納付税額と仕入税額控除

確定申告での納付する消費税額は、課税標準額に税率を乗じた金額から各種の税額控除をして計算されます(中間申告分を除く)。仕入税額控除はこれらの税額控除のうちの一つですが、一般的には最も金額が大きくなるものですので、その仕組みを正しく理解することは消費税額を計算する上でとても大切です。

仕入税額控除の計算

上記の例では、事業者が確定申告で納付する消費税額は、事業者が受け取った消費税から支払った消費税を控除した金額としましたが、正確には仕入時に支払った消費税の全額を控除することができるのは、次の要件を満たす場合に限られます。

全額を仕入税額控除できる場合
(1)課税売上割合が100%の場合
(2)次の両方を満たす場合
①課税期間中の課税売上高(課税期間が1年未満の場合は1年に換算した金額)が5億円以下
②課税売上割合(売上全体のうちに課税売上と免税売上が占める割合)が95%以上の場合

したがって、これらの条件を満たさない場合は仕入時に支払った消費税の全額を控除することができず、個別対応方式又は一括比例配分方式のどちらか一つを選択して仕入控除税額を計算することになります。

なお、一定の中小事業者については、簡易な方法で仕入控除税額を計算することが認められており、これを簡易課税制度といいます。

課税売上割合とは?
総売上高のうちに課税売上高と免税売上高の占める割合をいい、次の計算式で計算します。
2年間の継続適用
仕入控除税額を個別対応方式と一括比例配分方式のどちらの方法で計算するかは事業者が選択できますが、一括比例配分方式を適用した場合は2年以上継続した後でなければ個別対応方式に変更することができません。

全額控除できる場合

課税売上割合が100%の場合や、課税期間中の課税売上高(課税期間が1年未満の場合は1年分に換算した金額)が5億円以下で、かつ、課税売上割合が95%以上の場合は仕入れ時に支払った消費税額の全額を納付税額から控除できます。

(例)当課税期間の課税売上高は1億円でした。他に課税売上はなく課税標準額は1億円、課税仕入額は6,000万円、課税売上割合は98%でした(中間申告等は考慮しない)。
課税売上高5億円以下、かつ、課税売上割合95%以上ですので、仕入れ時に支払った消費税額の全額を控除できます。

項目 計算
(1) 課税標準に対する消費税額(国税) 課税標準1億円×7.8%=780万円
(2) 仕入控除税額(国税) 課税仕入6,000万円×7.8%=468万円
(3) 納付税額(国税) (1)780万円-(2)468万円=312万円
(4) 納付税額(地方税) (3)312万円×2.2%/7.8%=88万円
(5) 納付税額(国税+地方税) (3)312万円+(4)88万円=400万円

個別対応方式

課税期間中の課税売上高が5億円を超える場合や課税売上割合が95%未満の場合は仕入れ時に支払った消費税額の全額を控除することができません(課税売上割合が100%の場合は全額控除できます)。

この場合、事業者は個別対応方式又は一括比例配分方式のいずれかの方法によって仕入控除税額を計算します。

個別対応方式の計算

個別対応方式では課税仕入等を、課税資産の譲渡等にのみ要するもの、非課税資産の譲渡等にのみ要するもの、課税資産の譲渡等と非課税資産の譲渡等の両方に要するものの3種類に区分して、それぞれ次のように仕入控除税額を計算します。

(例)個別対応方式によって仕入税額控除の計算をしています。課税売上割合は90%、課税仕入等の金額は次のとおりでした。

項目 課税仕入等(税込)
(1) 課税資産の譲渡等のみに要するもの
1億1,000万円
(2) 非課税資産の譲渡等のみに要するもの
1,100万円
(3) 課税資産と非課税資産の両方に要するもの
5,500万円
合計 1億7,600万円

個別対応方式を選択しているため、課税仕入等を3種類に区分して次のように仕入控除税額を計算します。

項目 仕入控除税額の計算(国税分)
(1) 課税資産の譲渡等のみに要するもの
1億1,000万円×100/110×税率7.8%=780万円
(2) 非課税資産の譲渡等のみに要するもの
仕入税額控除なし
(3) 課税資産と非課税資産の両方に要するもの
5,500万円×100/110×税率7.8%×課税売上割合90%=351万円
合計 780万円+351万円=1,131万円

課税資産の譲渡等にのみ要するもの

課税資産の譲渡等にのみ要するものとは、課税仕入等のうち課税資産の譲渡等のためだけに行われたもので、例えば課税売上の対象になる商品の仕入れがこれに該当します。

課税資産の譲渡等にのみ要するもの(具体例)
そのまま譲渡される課税資産
課税資産の原材料、容器、包紙、機械及び装置、工具、器具、備品
課税資産の保管料、運送料、広告宣伝費、支払手数料、加工賃
(例)弁当店を経営していますが白米を10万円で仕入れました。白米は全て販売される弁当のために消費されます。
白米は全てが課税売上(弁当の販売)のために消費されるので、白米の仕入は課税資産の譲渡等にのみ要するものになります。

非課税資産の譲渡等にのみ要するもの

非課税資産の譲渡等にのみ要するものとは、課税仕入等のうち非課税資産の譲渡等のためだけに行われるもので、例えば賃貸住宅の建築費用がこれに該当します。

非課税資産の譲渡等にのみ要するもの(具体例)
販売用の土地の造成費用
賃貸用住宅の建築費用
土地譲渡の仲介手数料
有価証券の売買手数料
(例)賃貸経営のためにアパートを建築しました。アパートは全て住宅用として賃貸されます。
建築されたアパートは全てが非課税売上(住宅の賃貸)のために使用されるので、アパートの建築費用は非課税資産の譲渡等にのみ要するものになります。

課税資産と非課税資産の譲渡等の両方に要するもの

課税資産と非課税資産の譲渡等の両方に要するものとは、課税仕入等のうち「課税資産の譲渡等についてのみ行われるもの」と「非課税資産の譲渡等についてのみ行われるもの」以外のもので、例えば課税売上と非課税売上がある会社の本社家賃がこれに該当します。

課税資産と非課税資産の譲渡等の両方に要するもの(具体例)
本社の家賃、福利厚生費、交際費等の一般管理費(資産の譲渡等が課税資産の譲渡等のみの会社を除く)
土地と建物を一括で譲渡する場合の仲介手数料
(例)本社の社員が使用する文房具を購入しました(課税売上と非課税売上があります)
本社の社員は会社全体のために働きますが、課税売上と非課税売上があるということですので、購入した文房具は課税売上と非課税売上の両方のために消費さえると考えられます。したがって課税資産と非課税資産の譲渡等の両方に要するものになります。

一括比例配分方式

課税期間中の課税売上高が5億円を超える場合や課税売上割合が95%未満の場合で、個別対応方式の他に事業者が選択できるもう一つの方式が一括比例配分方式です。

一括比例配分方式の計算

一括比例配分方式では個別対応方式のように課税仕入等を区分することなく、課税仕入等に係る消費税額の全額に課税売上割合を乗じて仕入控除税額を計算します。

(例)Y社は一括比例配分方式によって仕入税額控除の計算をしています。課税売上割合は90%、課税仕入等の金額は次のとおりでした。

項目 課税仕入等(税込)
(1) 課税資産の譲渡等のみに要するもの
1億1,000万円
(2) 非課税資産の譲渡等のみに要するもの
1,100万円
(3) 課税資産と非課税資産の両方に要するもの
5,500万円
合計 1億7,600万円

一括比例配分方式では課税仕入等を区分しないので、一括で次のように仕入税額控除を計算します。

項目 仕入控除税額の計算(国税分)
課税仕入等の全て 1億7,600万円×100/110×税率7.8%×課税売上割合90%=1,123.2万円

簡易課税制度

仕入控除税額を計算するためには課税仕入や非課税仕入等を区分して経理しなければならないなど経理事務に負担がかかりますが、消費税法では中小事業者の負担を考慮して、基準期間の課税売上高が5千万円以下の場合には、上記の方法に代えて簡易な方法によって仕入控除税額を計算することを認めています。これを簡易課税制度といいます。

簡易課税制度の詳しい解説は簡易課税制度をご覧ください。

法令等

この記事は2019年10月31日現在の法令等に基づいて書かれています。また、このサイトは税法を学ぶ方に税法の一般的な取り扱いを解説するものですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。