2.6.2 仕入税額控除の計算

資産の譲渡等があった場合には消費税が課税されますが、例えば生産者から流通業者を通して消費者に商品が届く場合には、商品が消費者の手元に届くまでに、何度も消費税が課税されることになります。この点について消費税法では仕入税額控除という制度を設けて消費税が何度も価額に転嫁されない仕組みになっています。

仕入税額控除とは?

仕入税額控除の仕組み

同一の商品やサービスなどに対して消費税が繰り返し課税されることを避けるため、事業者は販売時に受け取った消費税から仕入時に支払った消費税を控除した残額を確定申告で納税することにしています。

このように仕入時に支払った消費税額を納税額から控除することを仕入税額控除といい、例えば生産者から卸売業者、小売業者を通して消費者に渡った商品であっても、生産から流通の全ての過程を通して納税される消費税の合計額が、消費者が支払った対価の8%(地方消費税を含む)になるようにされています。

納付税額と仕入税額控除

消費税の確定申告での納付税額は、課税標準額に税率を乗じた金額から各種の税額控除をして計算されます。

仕入税額控除は税額控除のうちの一つで、一般的には税額控除のうち最も金額の大きいものですので、その仕組みを正しく理解することは消費税の計算でとても大切です。

仕入税額控除の計算

上記の例では、事業者が確定申告で納付する消費税額は受け取った消費税から支払った消費税を控除した金額としましたが、正確には仕入税額控除できる金額は必ずしも仕入時に支払った消費税の全額とは限りません。

具体的には、①課税期間中の課税売上高が5億円以下(課税期間が1年未満の場合は1年に換算した金額)で、かつ、②課税売上割合が95%以上の場合は仕入時に支払った消費税の全額を控除できるのですが、課税売上高が5億円超であったり、課税売上割合が95%未満の場合は全額を控除することができません。

この場合は、これから説明する個別対応方式又は一括比例配分方式のどちらか一つを選択して仕入控除税額を計算することになります。

ただし、個別対応方式や一括比例配分方式は経理処理が煩雑なため、一定の中小事業者には簡易な方法で仕入控除税額を計算することが認められており、これを簡易課税制度といいます。

課税売上割合とは?
課税売上割合とは、総売上高のうちに課税売上高と免税売上高の占める割合をいい、具体的には次のように計算します。
2年間の継続適用
仕入控除税額を個別対応方式と一括比例配分方式のどちらの方法で計算するかは事業者が決めてよいのですが、一括比例配分方式を適用した場合は2年以上継続した後でなければ個別対応方式に変更することができません。

全額控除できる場合

課税期間中の課税売上高(課税期間が1年未満の場合は1年分に換算した金額)が5億円以下で、かつ、課税売上割合が95%以上の場合は仕入れ時に支払った消費税額の全額を納付税額から控除できます。

(例)X社は当課税期間に商品1億円を販売しました。他に課税売上等はなく課税標準額は1億円、課税仕入額は6,000万円、課税売上割合は98%でした。中間申告等は考慮しません。
課税売上高が5億円以下、かつ、課税売上割合が95%以上ですので、仕入れ時に支払った消費税額を全て控除できます。
(1) 課税標準に対する消費税額(国税)
課税標準1億円×6.3%=630万円
(2) 仕入控除税額(国税)
課税仕入6,000万円×6.3%=378万円
(3) 納付税額(国税)
課税標準に対する消費税額630万円-仕入税額控除額378万円=252万円
(4) 納付税額(地方税)
納付税額(国税)252万円×1.7%/6.3%=68万円
(5) 納付税額(合計)
納付税額(国税)252万円+納付税額(地方税)68万円=320万円

個別対応方式

課税期間中の課税売上高が5億円を超える場合や課税売上割合が95%未満の場合は仕入れ時に支払った消費税額の全額を控除することができません(課税売上割合が100%の場合は全額控除できます)

この場合、事業者は個別対応方式又は一括比例配分方式のいずれかの方法によって仕入控除税額を計算します。

個別対応方式の計算

個別対応方式では課税仕入等を(1)課税資産の譲渡等にのみ要するもの(2)非課税資産の譲渡等にのみ要するもの(3)課税資産の譲渡等と非課税資産の譲渡等の両方に要するものの3種類に区分して仕入控除税額を計算します。

(例)Y社は個別対応方式によって仕入税額控除の計算をしています。課税売上割合は90%、課税仕入等の金額は次のとおりでした。

・仕入税額控除額の計算(国税分)
個別対応方式では課税仕入を三種類に区分して仕入税額控除額を計算します。
(1) 課税資産の譲渡等にのみ要するもの
1億800万円×100/108×税率6.3%=630万円
(2) 非課税資産の譲渡等にのみ要するもの
仕入税額控除なし
(3) 両方に要するもの
5,400万円×100/108×税率6.3%×課税売上割合90%=283.5万円
(4) 合計
630万円+283.5万円=913.5万円

課税資産の譲渡等にのみ要するものとは?

課税資産の譲渡等にのみ要するものとは、課税仕入等のうち課税資産の譲渡等のためだけに行われる課税仕入等で、例えば課税売上の対象になる商品の仕入などがこれに該当します。

(例)弁当店を経営していますが米を10万円で仕入れました。米は全て販売される弁当のために消費されます。
仕入れた米は全てが課税売上(弁当の販売)のために消費されるので、この場合、米の仕入は課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入等になります。

非課税資産の譲渡等にのみ要するものとは?

非課税資産の譲渡等にのみ要するものとは、課税仕入等のうち非課税資産の譲渡等のためだけに行われる課税仕入等で、例えば賃貸住宅の建築費用等がこれに該当します。

(例)賃貸経営のためにアパートを建築しました。アパートは全て住宅用として賃貸されます。
建築されたアパートは全てが非課税売上(住宅の賃貸)のために使用されるので、アパートの建築費用は非課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入等になります。

課税資産と非課税資産の譲渡等の両方に要するものとは?

課税資産と非課税資産の譲渡等の両方に要するものとは、課税仕入等のうち課税資産の譲渡等についてのみ行われるものと非課税資産の譲渡等についてのみ行われるもの以外のものをいいます。例えば課税売上と非課税売上がある会社の本社家賃などです。

(例)本社の社員が使用する文房具を購入しました。当社は課税売上と非課税売上があります。
本社の社員は会社全体のために働きますが、課税売上と非課税売上があるということですので、購入した文房具は課税売上と非課税売上の両方のために消費さえると考えられます。したがって課税資産と非課税資産の譲渡等の両方に要する課税仕入等に該当します。

一括比例配分方式

課税期間中の課税売上高が5億円を超える場合や課税売上割合が95%未満の場合で、個別対応方式の他に事業者が選択できる方式が一括比例配分方式です。

一括比例配分方式の計算

一括比例配分方式では個別対応方式のように課税仕入等を区分せずに、課税仕入等に係る消費税額の全額に課税売上割合を乗じて仕入控除税額を計算します。

(例)Y社は一括比例配分方式によって仕入税額控除の計算をしています。課税売上割合は90%、課税仕入等の金額は次のとおりでした。

・仕入税額控除の計算(国税)
一括比例配分方式では課税仕入等を区分することなく仕入税額控除を計算します。
(1億800万円+1,080万円+5,400万円)×100/108×税率6.3%×課税売上割合90%=907.2万円

簡易課税制度

仕入控除税額を計算するには課税仕入や非課税仕入などを区分して経理しなければならないため経理事務に負担がかかります。

そこで消費税法では中小事業者の負担を考慮して、基準期間の課税売上高が5千万円以下の場合には、簡易な方法によって仕入税額控除の計算をすることを認めています。これを簡易課税制度といいます。

簡易課税制度の詳しい解説は簡易課税制度をご覧ください。

法令等

この記事は2019年6月30日現在の法令等に基づいて書かれています。