2.6.1 税額控除とは?

事業者が行う資産の譲渡や貸付け、役務の提供には消費税が課税されますが、例えば商品が生産者から卸売業者、小売業へと渡り、最終的に消費者に販売される場合に、流通の各段階で消費税が課税されてしまうと同一の商品に対して何度も消費税が課税され、価格が雪だるま式に膨らんでしまいます。

そこで消費税では税額控除という仕組みを設けて、同じ商品等に繰り返し消費税が課税されないようにしています。

税額控除の効果

税額控除の仕組みを理解するために、税額控除のうちもっとも代表的な仕入税額控除について、商品が生産され、卸売業者と小売業者を経て消費者に販売されるケースで考えてみます。

・仕入税額控除がない場合

資産を譲渡した場合には消費税が課税されますので、仕入税額控除という制度がない場合、商品が譲渡される都度(生産者→卸売り業者への譲渡、卸売り業者→小売業者への譲渡など)消費税が課税されることになり、下図のように最終的な消費者への販売価額はとても高額になってしまいます。

・仕入税額控除がある場合

上記のような事態を避けるために必要な制度が税額控除で、事業者(上記のケースでは生産者、卸売業者、小売業者)は譲渡時に受け取った消費税から仕入れ時に支払った消費税を控除した額を税務署に納付することになっています。

この場合、各事業者が納付する消費税の合計額は、消費者の購入価額×10%(消費税率)と一致しますので、同じ商品に対して一度だけ消費税が課税されたことになります。

(例)商品が次のように生産者→卸売業者→小売業者→消費者へと譲渡される場合。
このとき各事業者が納付する消費税額は原則として次のとおりです(おおよそのイメージです。正確な税額計算にはもう少し複雑な計算が必要です)

事業者 消費税の納税額
生産者 600円(受取消費税600円)
卸売業者 200円(受取消費税800円-支払消費税600円)
小売業者 200円(受取消費税1,000円-支払消費税800円)
1,000円(消費者が払った金額と一致する)

税額控除の種類

ここまで税額控除の効果について解説してきましたが、消費税の税額控除には上記で説明した仕入税額控除の他に3種類、あわせて4種類があります。

4種類の税額控除
 仕入税額控除
売上対価の返還等の税額控除
特定課税仕入の返還等の税額控除
貸倒れの税額控除

仕入税額控除

事業者が国内で課税仕入や課税貨物を保税地域から引き取った場合、確定申告で納付する税額から課税仕入や課税貨物を引き取った時に支払った消費税額を控除できます。これを仕入税額控除といいます。

ただし、仕入税額控除は支払った消費税の全額を控除できるとは限らず、各課税期間の課税売上高(課税期間が1年未満の場合は1年に換算)が5億円超の場合や、課税売上割合(売上全体のうちに課税売上と免税売上が占める割合)が95%未満の場合は、一定の方法によって控除する金額を計算します。

また、一定の条件を満たす中小事業者は簡便な方法(簡易課税)で仕入税額控除の計算をすることも認められています。

詳しい解説は2.6.2 仕入税額控除の計算をご覧ください。

売上対価の返還等の税額控除

事業者が国内で課税資産の譲渡や貸付け、役務の提供を行った場合には消費税が課税されますが、その後に返品や値引き、割戻しによって売上の返還等が発生することもあります。このような場合には、その返還等に係る消費税額を返還等があった課税期間の納付税額から控除できます。

(例)電気屋を営む個人事業主ですが、X1年に販売した商品10万円(税抜き)がX2年に返品されました。

課税期間 取り扱い
 X1年 販売額10万円に対する消費税を納税する
X2年 返品額10万円に対する消費税を納付税額から控除する

特定課税仕入の返還等の税額控除

事業者が国内で特定課税仕入れを行った場合には消費税が課税されますが、特定課税仕入を行った後に値引きや割戻しによって、特定課税仕入の対価の返還等が発生することもあります。このような場合には、その返還等に係る消費税額を納付税額から控除できます。

(例)前課税期間に米国企業が提供するインターネットサービスの対価を支払いましたが、問題が発生したため当課税期間に全額の返金を受けました(課税売上割合は95%未満、本則課税の場合)。
海外の事業者からインターネット等を通じて行われる役務の提供は特定課税仕入になります。前課税期間に納付した消費税については、返金を受けた当課税期間の納付税額から控除できます。

貸倒れの税額控除

事業者が国内で課税資産の譲渡や貸付け、役務の提供を行った場合には消費税が課税されますが、その後、その売掛債権等が貸倒れた場合、貸倒れた部分に対する消費税額を貸倒れた課税期間の納付税額から控除できます。

法令等

この記事は2019年10月31日現在の法令等に基づいて書かれています。また、このサイトは税法を学ぶ方に税法の一般的な取り扱いを解説するものですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。