2.6.1 税額控除とは?

資産の譲渡等には消費税が課税されますが、例えば商品が生産者から卸売業者、小売業と渡り、最終的に消費者に販売される場合、流通の各段階で消費税が課税されてしまうと、同一の商品に対して何度も消費税が課税されて、価格が雪だるま式に膨らんでしまいます。

そこで消費税では税額控除という仕組みを設けて、同じ商品等に対して繰り返し消費税が課税されることを避けるようにしています。

税額控除の効果

税額控除がない場合

税額控除がある場合とない場合を比較するために、簡単なケースとして商品が生産され、卸売業者や小売業者を経て消費者に販売される場合を考えてみます。

資産の譲渡には消費税が課税されますので、生産者から卸売業者、卸売業者から小売業者、小売業者から消費者へと販売される各段階で消費税が課税されることになりますが、これをそのまま放置すると、下図のように「生産者→卸売業者→小売業者→消費者」と商品が販売されるたびに消費税が価格に上乗せされ続け、最終的に消費者への販売価額がとても高額になってしまいます。

税額控除がある場合

このような事態を避けるために必要な制度が税額控除で、事業者(上記のケースでは生産者、卸売業者、小売業者)は販売時に受け取った消費税から仕入れ時に支払った消費税を控除することができ、控除後の金額を税務署に納付することになっています。

この場合、消費者の購入価額に対して消費税率8%(2019年4月現在の税率。地方消費税を含む)を乗じた金額だけが税務署に納付されることになり、同じ商品に対して一度だけ消費税が課税されることになります。

(例)生産者が商品Aが生産し、その後、次の図のように卸売業者→小売業者→消費者へと販売されていきます。

このとき各事業者が納付する消費税額は次のとおりになります(おおよそのイメージです。正確な税額計算にはもう少し複雑な計算が必要です)
生産者の納税額 : 480円(受取消費税480円)
卸売業者の納税額: 160円(受取消費税640円-支払消費税480円)
小売業者の納税額: 160円(受取消費税800円-支払消費税640円)
この結果、税務署に納付される消費税の合計は800円となり、消費者への販売価額10,000円の8%と一致することになります。

税額控除の種類

ここまで税額控除について説明してきましたが、消費税の税額控除には説明したもの(仕入税額控除)の他に3種類、あわせて4種類があります。

・仕入税額控除
・売上対価の返還等の税額控除
・特定課税仕入の返還等の税額控除
・貸倒れの税額控除

仕入税額控除

事業者が国内で課税仕入を行った場合課税貨物を保税地域から引き取った場合、課税仕入や課税貨物の引き取り時に支払った消費税を納付税額から控除できます。これを仕入税額控除といいます。

ただし、仕入税額控除は、その課税期間の課税売上の金額等によって計算方法が異なり、支払った消費税の全額を控除できるとは限りません。

詳しい解説は2.6.2 仕入税額控除の計算をご覧ください。

売上対価の返還等の税額控除

事業者が国内で課税資産の譲渡や貸付け、役務の提供を行った場合には消費税を納税することになりますが、その後に返品や値引き、割戻しによって売上の返還等があった場合には、その返還等に係る消費税額を納付税額から控除することができます。

(例)電気屋を営む個人事業主ですが、X1年に販売した商品10万円(税抜き)がX2年に返品されました。
返還された10万円に対する消費税をX2年の納付税額から控除することができます。

特定課税仕入の返還等の税額控除

事業者が国内で特定課税仕入れを行った場合には消費税を納税することになりますが、特定課税仕入を行った後に値引きや割戻しによって、特定課税仕入の対価の返還等があった場合には、返還等に係る消費税額を納付税額から控除することができます。

(例)Y社は前課税期間に米国企業が提供するインターネットサービスの対価を支払いましたが、契約不履行のために当課税期間に全額の返金を受けました。Y社の課税売上割合は95%未満で、簡易課税制度を適用していません。
海外の事業者からインターネット等を通じて行われる役務の提供は特定課税仕入になりますので、Y社は前課税期間に消費税を納付することになりますが、当課税期間に返還を受けているため、当課税期間の納付税額から返還に係る消費税を控除できます。

貸倒れの税額控除

事業者が国内で課税資産の譲渡や貸付け、役務の提供を行った場合には消費税を納税しないといけませんが、その後その売掛債権等が貸倒れた場合、貸倒れた部分に対する消費税額を納付税額から控除することができます。

法令等

この記事は2019年6月30日現在の法令等に基づいて書かれています。