事業者は各課税期間ごとに消費税の申告と納付をする義務がありますが、「消費税はどのように計算するのか?」についてその概要を解説します。
目次
消費税が課税される取引
事業者が行った売上や仕入の中には消費税が課税される取引と課税されない取引があるため、消費税額を計算するにあたっては、最初に事業者が行った取引を消費税が課税される取引(課税取引)と課税されない取引(課税対象外取引、非課税取引、免税取引)に区分しなければなりません。
(ステップ1)4要件を全て満たすか?
消費税が課税される取引は、(1)国内で行う取引、(2)事業者が行う取引、(3)対価を得て行う取引、(4)資産の譲渡・貸付け、役務の提供の4つの要件を全て満たすものに限られます。
(1) 国内で行う取引
消費税が課税される取引は日本国内で行われる取引に限られます。海外で行った取引に日本の消費税は課税されません。
A社は日本に本社がある会社ですが、ハワイにあるビルの譲渡ですので海外での取引になります。したがって日本の消費税は課税されません。

(2) 事業者が行う取引
消費税が課税される取引は事業者が行う取引に限られます。事業者ではない人が資産の譲渡等を行っても消費税が課税されることはありません。
Bさんは事業者ではなく、個人的に持っていた宝石を売っただけですので消費税は課税されません。

(3) 対価を得て行う取引
消費税は税抜き1万円で販売した商品には1,000円(税率10%)といった具合に、対価の額に税率を乗じて計算するため、対価がない取引(無償取引)には原則として消費税は課税されません。
非常食100万円分を提供していますが、寄附ですので消費税は課税されません。

(4) 資産の譲渡・貸付け、役務の提供
消費税は資産の譲渡や貸付け、役務の提供に対して課税されます。したがって、例えば保険金や損害賠償金等を受け取っても、資産の譲渡や貸付け、役務の提供ではありませんので、消費税は課税されません。
法律相談は役務の提供ですので、受け取った報酬には消費税が課税されます。

(1)から(4)の要件を満たすものの他に特定課税仕入については消費税が課税されます。特定仕入については消費税の2種類の納税義務者とは?の「特定課税仕入の場合」の項目をご覧ください。
(ステップ2)非課税取引に該当するか?
上記の4要件を満たす取引であっても、土地の譲渡や貸付け等、住宅の家賃や、学校の授業料など一定のものについては消費税が課税されません。これを非課税取引といいます。
主な非課税取引 |
土地の譲渡や貸付け |
有価証券の譲渡 |
商品券の譲渡 |
学校の授業料 |
住宅の貸付け |
(ステップ3)輸出取引に該当するか?
消費税は国内で財やサービスが消費されることに対して課税される税金ですので、海外に輸出されるものに対しては消費税が免除されます。これを輸出免税といいます。
主な輸出免税 |
海外への資産の輸出 |
外国貨物の譲渡や貸付け |
国際運輸 |
国際通信サービス |
消費税の計算の概要
消費税の仕組み
消費税の課税対象となる取引が明らかになったら、次に具体的な消費税の計算についてですが、事業者が申告納付する消費税の額は、大まかには「課税売上に対する消費税(受け取った消費税)」と「課税仕入に対する消費税(支払った消費税)」の差額として計算されます(本則課税で全額仕入控除可能な場合)。
例えば小売業者が8,800円(消費税800円)で仕入れた商品を消費者に11,000円(消費税1,000円)で販売した場合、小売業者が納税する消費税の額は原則として受け取った1,000円と支払った消費税800円の差額の200円として計算します。
商品の生産されてから消費者にわたるまでの全体を眺めてみると、次のように原則として事業者(生産者、卸売業者、小売業者)が納税する消費税の合計額1,000円(=600円+200円+200円)は消費者が支払った消費税1,000円と一致する仕組みになります。

具体的な税額計算方法
一般的に消費税の税率は10%(軽減税率を除く)と言われますが、正確には国税部分の7.8%と地方税部分の2.2%に分かれているため、実際の計算では最初に国税部分を計算し、次に国税部分の税額に一定の率を乗じて地方税部分の税額を計算します(申告と納付は国税部分と地方税部分を一緒に行います)。
・消費税(国税部分)の計算
課税標準額(課税対象の売上)に7.8%を乗じた金額から税額控除(事業者が支払った消費税額等の控除)して納付税額を計算します。
・地方消費税(地方税部分)の計算
国税部分の税額に22/78を乗じて地方税部分を計算します。国税分の税率7.8%に22/78を乗じるので地方税分は2.2%、合計で10%ということになります。
課税標準額
課税標準額とは消費税の課税対象になる取引の対価の額(税抜金額)をいいます。
商品の譲渡対価の額(税抜金額)が課税標準額になります。
課税標準額: 3,300万円×100/110=3,000万円
課税標準額に対する消費税: 3,000万円×7.8%=234万円
税額控除
税額控除にはいくつか種類がありますが最も一般的なものが仕入税額控除で、事業者が支払った消費税額(課税仕入や課税貨物の引き取りで支払った消費税額、特定仕入に係る消費税)を課税標準に対する消費税額から控除する仕組みです。
ただし、非課税売上がある場合や簡易課税制度を適用している場合には支払った消費税額の全額を控除できないことがあります。
項目 | 計算 |
課税仕入れ(税抜き) | 2,200万円×100/110=2,000万円 |
控除対象仕入税額 | 2,000万円×7.8%=156万円 |
計算例
・消費税(国税部分)の計算
項目 | 計算 |
課税標準額に対する消費税 | 3,300万円×100/110×7.8%=234万円 |
控除対象仕入税額 | 2,200万円×100/110×7.8%=156万円 |
納付する消費税額 | 234万円-156万円=78万円 |
・地方消費税(地方税部分)の計算
項目 | 計算 |
納付する地方消費税額 | 78万円(国税部分)×22/78=22万円 |
・納付税額の合計(国税部分+地方税部分)
78万円+22万円=100万円
法令等
この記事は2020年4月1日現在の法令等に基づいて書かれています。また、この記事は税法学習者に税法の一般的な取り扱いを解説するものですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。