2.1 消費税額の計算の概要

小規模事業者として消費税が免除される場合等を除いて、事業者は課税期間ごとに消費税の申告と納付をする必要があります。事業者が申告納付する消費税の金額がどのように計算されるのか、その概要について解説します。

消費税の仕組み

事業者が申告納付する消費税の額は、大まかには事業者が受け取った消費税と支払った消費税の差額として計算されます(非課税売上がある場合や簡易課税制度を適用している場合等を除く)。

したがって、例えば小売業者が8,800円(うち消費税800円)で仕入れた商品を、消費者に11,000円(うち消費税1,000円)で販売した場合、小売業者が税務署に納税する消費税の額は原則として受け取った1,000円と支払った消費税800円の差額200円になります。

商品の生産から消費者への販売までの全体を眺めてみると、次の図のように事業者(生産者、卸売業者、小売業者)が納税する消費税の合計額1,000円(=600円+200円+200円)は消費者が支払った消費税1,000円と一致する仕組みになっています。

消費税が課税される取引

事業者が申告・納付する消費税の額を計算するにあたって、最初に行わないといけないのが、消費税が課税される取引と課税されない取引を区分することです。具体的には次のように取引を、課税取引、課税対象外(不課税)取引、非課税取引、免税取引に区分します。

消費税の取り扱い 取引の区分
消費税が課税される取引 課税取引
消費税が課税されない取引 課税対象外(不課税)取引
非課税取引
免税取引

課税取引、課税対象外(不課税)取引、非課税取引、免税取引をどのように区分するかをフローチャートでまとめると次のようになります。

(ステップ1)4要件を全て満たすか?

消費税が課税される取引は、(1)国内で行う取引、(2)事業者が行う取引、(3)対価を得て行う取引、(4)資産の譲渡・貸付け、役務の提供の4つの要件を全て満たすものに限られます。

(1) 国内で行う取引
消費税が課税されるのは日本国内で行われる取引に限られ、当然のことながら海外で行った取引に日本の消費税が課税されることはありません。

(例)A社(本社:東京)はハワイに保有するビルを1,000万ドルで譲渡しました。
A社は日本に本社がある会社ですが、ハワイにあるビルの譲渡ですので海外での取引になります。したがって日本の消費税は課税されません。
国内で行う取引の詳しい解説は国内取引の判定をご覧ください。

(2) 事業者が行う取引
消費税が課税されるのは事業者が行う取引に限られ、事業者ではない人が資産の譲渡等を行っても消費税が課税されることはありません。

(例)会社員のB子さんは不要になった宝石を東京の貴金属店で売りました。
B子さんは事業者ではなく、個人的に持っていた宝石を売っただけですので消費税は課税されません。

(3) 対価を得て行う取引
消費税は税抜き1万円で販売した商品には1,000円(税率10%)といった具合に、対価の額に税率を乗じて計算するため、対価がない取引(無償取引)には原則として課税されません。

(例)C社は震災支援のために備蓄していた非常食100万円分を寄附しました。
非常食100万円分を提供していますが、寄附ですので消費税は課税されません。
対価を得て行う取引の詳しい解説は対価を得て行う資産の譲渡等とは?をご覧ください。

(4) 資産の譲渡・貸付け、役務の提供
消費税は資産の譲渡や貸付け、役務の提供に対して課税されます。したがって、例えば保険金や損害賠償金等を受け取っても、資産の譲渡や貸付け、役務の提供ではありませんので、消費税は課税されません。

(例)弁護士のDさんは都内の事務所で法律アドバイスを行い報酬を受け取りました。
 法律アドバイスは役務の提供ですので、受け取った報酬には消費税が課税されます。
(補足)特定課税仕入
(1)から(4)の要件を満たすものの他に特定課税仕入については消費税が課税されます。特定仕入についての詳しい解説は特定課税仕入れをした場合をご覧ください。

(ステップ2)非課税取引に該当するか?

上記の4要件を満たす取引であっても、土地の譲渡や貸付け等のように消費ではないものや、住宅の家賃や学校の授業料等のように社会政策的な配慮が必要なものには消費税は課税されません。これを非課税取引といいます。

非課税取引の詳しい解説は非課税取引とは?をご覧ください。

主な非課税取引
土地の譲渡や貸付け
有価証券の譲渡
商品券の譲渡
学校の授業料
住宅の貸付け

(ステップ3)輸出取引に該当するか?

消費税は国内で財やサービスが消費されることに対して課税される税金ですので、海外に輸出されるものに対しては消費税の課税を免除しています。これを輸出免税といいます。

主な輸出免税
海外への資産の輸出
外国貨物の譲渡や貸付け
国際運輸
国際通信サービス

消費税額の計算

一般的に消費税の税率は10%(軽減税率を除く)と言われますが、実際には国税部分の7.8%と地方税部分の2.2%に分かれています。そのため、消費税額の計算では最初に国税部分を計算し、計算された国税部分の税額に一定の率を乗じて地方税部分の税額を計算することになっています(申告と納付は国税部分と地方税部分を一緒に行います)。

・消費税(国税部分)の計算
課税標準額に7.8%を乗じた金額から税額控除(事業者が支払った消費税額等を控除)して納付税額を計算します。

・地方消費税(地方税部分)の計算
国税部分の税額に22/78を乗じて地方税部分を計算します。国税分の税率7.8%に22/78を乗じるので地方税分は2.2%、合計で10%ということになります。

課税標準額

課税標準額とは消費税の課税対象になる取引の対価の額(税抜金額)をいいます。

(例)E社は課税期間中に商品(消費税の課税資産)を税込み3,300万円で販売しましたこれ以外に課税対象の売上はありません)。
商品の譲渡対価の額(税抜金額)が課税標準額になります。
課税標準額:3,300万円×100/110=3,000万円
課税標準額の詳しい解説は消費税の課税標準をご覧ください。

税額控除

税額控除にはいくつか種類がありますが最も一般的なものが仕入税額控除で、これは課税標準に対する消費税額から事業者が支払った消費税額(課税仕入れや課税貨物の引き取りで支払った消費税額、特定仕入がある場合は特定仕入に係る消費税を含みます)を控除する仕組みです。

ただし、仕入税額控除の計算にはいくつかの方法があり、非課税売上がある場合や簡易課税制度を適用している場合には、支払った消費税額の全額を控除できないことがあります。

(例)E社は課税期間中に商品の仕入(消費税の課税対象)を、税込み2,200万円で行いました(非課税売上はなく、簡易課税制度も適用していません)。

項目 計算
課税仕入れ(税抜き) 2,160万円×100/108=2,000万円
控除対象仕入税額 2,000万円×7.8%=156万円
税額控除の詳しい解説は税額控除とは?をご覧ください。

具体例

(例)E社は課税期間中の課税売上が合計で税込3,300万円、課税仕入が合計で2,200万円ありました(非課税売上はなく簡易課税制度も適用していません)
・消費税(国税部分)の計算

項目 計算
課税標準額(税抜き) 3,300万円(税込み)×100/110=3,000万円
控除対象仕入税額 2,200万円×100/110×7.8%=156万円
納付する消費税額 3,000万円×7.8%-156万円=78万円

・地方消費税(地方税部分)の計算

項目 計算
納付する地方消費税額 78万円(国税部分)×22/78=22万円

・納付税額の合計(国税部分+地方税部分)
78万円+22万円=100万円

法令等

この記事は2019年10月31日現在の法令等に基づいて書かれています。また、記事の内容は税法の一般的な取り扱いについての解説ですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。