1.2 納税が免除される事業者とは?

国内で事業を行う事業者は非課税になる場合などを除いてお客さんから受け取った消費税を納税しないといけません。

ただし、小規模な事業者の事務負担を考慮して、一定の要件を満たす小規模事業者は消費税を納める義務が免除されます。消費税を納める義務が免除されるということは、お客さんから消費税分として受け取った代金を納税する必要がないということです。

納税義務が免除されるとどうなる?

消費税の納税義務が免除されるとどのようになるのでしょうか?スーパーが問屋から商品を仕入れて消費者に販売するケースを例にして、消費税の納税義務がある場合と免除される場合を比較してみます。

納税義務がある場合

スーパーが問屋から商品を仕入れた代金として10,800円(うち消費税800円)を支払い、その商品を消費者に16,200円(うち消費税1,200円)で販売したとします。

この場合、スーパーの手元には差し引き400円(=1,200円-800円)の消費税が残りますが、課税事業者(納税義務がある事業者を課税事業者)である場合、この400円を納税することになります。

実際の税額計算はもう少し少し複雑ですが、スーパーが非課税になる商品の販売をしていない場合、おおまかにこのように計算になります。

納税義務が免除される場合

納税義務がある場合のケースと同様にスーパーが問屋から商品を10,800円(うち消費税800円)で仕入れて、その商品を消費者に16,200円(うち消費税1,200円)で販売した場合を考えてみます。

この場合もスーパーの手元には差し引き400円(=1,200円-800円)の消費税が残りますが、納税義務が免除されている場合、この400円を納税せずに収益としてしまうことができます。このように納税せずに事業者の収益になる消費税を益税と言います。

納税義務が免除される事業者

消費税の納税義務が免除される事業者とは、基準期間の課税売上高特定期間の課税売上高のいずれもが1,000万円以下の事業者をいいます。

基準期間と特定期間とは?
基準期間:個人事業者の場合はその年の前々年、法人の場合は原則として前々事業年度
特定期間:個人事業者の場合はその年の前年の1月1日から6月30日、法人の場合は原則として前事業年度開始の日以後6カ月の期間

ただし、新規に設立された法人(基準期間がない法人)で資本金又は出資金が1,000万円以上のものや、事業者が自ら課税事業者を選択した場合(消費税課税事業者選択届出書を提出した場合)などは、基準期間や特定期間の課税売上高に関係なく課税事業者になります。

(1) 基準期間の課税売上高が1,000万円超

基準期間の課税売上高1,000万円を超える事業者は、消費税の納税義務が免除されず、課税事業者になります。

ただし、法人の場合は、基準期間(原則として前々事業年度)が1年間とは限りませんので、そのような場合は基準期間の課税売上高を1年間に換算したうえで、1,000万円を超えるか否かを判定します。

個人事業者の場合は基準期間の途中で事業を開始していても、課税売上高を1年間に換算せずに、前々年1年間の課税売上高が1,000万円超か否かで納税義務を判定します。

(例)当社は3月決算で事業年度が1年間です。2017年度の課税売上高は1,500万円、2018年度の課税売上高は1,000万円でした。
2019年度の納税義務:基準期間(2017年度)の課税売上高は1,500万円です。
2020年度の納税義務:基準期間(2018年度)の課税売上高は1,000万円です。

(2) 特定期間の課税売上高又は給与等の支払額が1,000万円超

特定期間の課税売上高又は給与等の支払額1,000万円を超える事業者は、消費税の納税義務が免除されず、課税事業者になります。

ただし、法人の前事業年度が短期事業年度(7カ月間以下の事業年度など)に該当する場合は、前々事業年度開始の日以後の6カ月間が特定期間になります。

(3) 新規に設立された一定の法人

新規に設立された法人には基準期間や特定期間がないため、基準期間や特定期間の課税売上高もありません。したがって、新規に設立された法人は原則として免税事業者になりますが、基準期間がない法人のうち、次のものは課税事業者になります。

・資本金又は出資金が1,000万円以上の法人
基準期間がない法人(社会福祉法人を除く)のうち、事業年度開始の日の資本金又は出資金が1,000万円以上のもの(新設法人といいます)は課税事業者になります。

・特定新規設立法人
特定新規設立法人(大企業の子会社等)に該当する場合は課税事業者になります。

特定新規設立法人とは?
特定新規設立法人とは基準期間がない法人(社会福祉法人等を除く)のうち、一定規模以上の課税売上高がある者に株式等の50%超を保有されているものをいいます。

(4) 消費税の課税事業者を選択している?

上記(1)から(3)のいずれにも該当しない場合は免税事業者として消費税の納税義務が免除されますが、そのような場合であっても、免税事業者ではなくあえて課税事業者になることを選択することができます。

課税事業者になることを選択するには、消費税課税事業者選択届出書を所轄税務署長に提出する必要があります。届出書を提出した場合は、提出した日の翌課税期間(事業を開始した課税期間に提出した場合は、その課税期間)から課税事業者になります。

本来ならば納税義務が免除されるはずの事業者が、なぜあえて課税事業者になることを選択するかについては、なぜわざわざ課税事業者を選択するのか?で詳しく解説しています。

その他の例外的な取り扱い

相続、合併、分割などがあった場合

事業者が相続や合併、分割等によって他の事業者の事業を承継している場合は、一定の要件にしたがって被相続人、被合併法人、分割親法人等を含めて基準期間における課税売上高を計算します。

例えば相続人(息子)が被相続人(父)の事業を相続した場合、息子の基準期間の課税売上高だけで、息子の納税義務の有無を判定することは適切ではないからです。

(例)Aさんは2019年3月に相続をして父親の事業を引き継ぎました。Aさんはこれまで事業をしていません。父親の事業の2017年の課税売上高は3,000万円でした。
Aさんは相続前に事業をしていなかったので基準期間の課税売上高はありません。ただし被相続人である父親の基準期間(2017年)の課税売上高が1,000万円超のため、その事業を相続したAさんは2019年に納税義務が免除されません。

高額特定資産を取得した場合

高額特定資産の課税仕入等を行った場合(免税事業者や簡易課税が適用されている場合を除く)、その課税仕入れ等をした日から3年間(高額特定資産の課税仕入れ等をした日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間まで)納税義務が免除されず課税事業者になります。

高額特定資産とは?
高額特定資産とは次の①と②をいいます。
① 税抜き1,000万円以上の棚卸資産
② 調整対象固定資産(建物、建物附属設備、構築物、機械装置、船舶、航空機、車両運搬具、工具器具備品、鉱業権などの資産で税抜き100万円以上のもの。棚卸資産を除く)
(例)2018年度に高額特定資産の課税仕入れを行いました。当社の各課税期間は1年間で、2018年度は課税事業者(簡易課税の適用なし)でした。
2018年度に高額特定資産の課税仕入れを行っているため2019年度と2020年度は、基準期間や特定期間の課税売上高等にかかわらず課税事業者になります。

調整対象固定資産を取得した場合

課税事業者になることを選択した事業者や、資本金又は出資金が1,000万円以上の新規に設立された法人(新設法人といいます)、特定新規設立法人が調整対象固定資産の課税仕入等を行った場合は、一定期間免税事業者になることができません。

法令等

この記事は2019年5月31日現在の法令等に基づいて書かれています。