第3回 予算の策定

年度予算の策定では自社の現状把握と外部環境分析を踏まえて戦略を具体的な数字に落とし込んでいくことになりますが、今回は前回解説した「利益センタ」と「原価センタ」を使って年度予算を策定する方法を解説します。なお、ここで解説する内容は一つの例であり、各社の状況にに応じて最適な方法は異なりますのでご留意ください。

トップダウンとボトムアップ

年度予算では自社分析や外部環境分析などを踏まえて戦略を立て具体的な数字に落とし込んでいきますが、年度予算の策定方法には大きく分けて経営幹部が主体的となって策定する「トップダウン」と、現場からの意見を吸い上げて策定する「ボトムアップ」という二つの方法があります。

どちらがより優れた方法であるかは各社の状況に応じて異なりますが、筆者がこれまで見てきた中では「現場が自ら考えて数字に責任を持つ」ためにボトムアップを主としつつもトップダウンと整合性を取る方法が良いのではないかと思います。

具体的には経営陣が大きな視点からトップダウンで計画を作る一方で現場ではボトムアップの計画を作成し、現状分析や戦略などの議論を通じて双方の数値を修正しながらトップダウンとボトムアップで合意形成を取っていく方法です。

売上と売上原価

第2回 利益センタと原価センタでも解説しましたが、売上予算を立てるにあたっては会社の状況に合わせてどの単位で売上の管理をするのかを最初に決める必要があります。

例えば、取り扱い商品数があまり多くない場合は各商品ごとに売上の管理をするのも一つの方法ですし、取扱商品数が多い場合やあまり細かなモニタリングを必要としない場合は複数の商品をまとめた商品群などで管理する方法もあります。

また、季節性などを考慮して売上計画を月ごと立てておけば、異常値が出た場合にはスピーディーな検出と原因究明、改善アクションが可能になります。

営業費用

営業費用については「積極的に営業費用を支出して売上増に結び付ける」「費用をセーブして利益を増やす」などの会社の戦略に基づいて予算を立てることになりますが、最初に行わなければならないのが営業予算を管理する単位(原価センタ)の決定で、これが決定されてから各原価センタごとに具体的な予算内容の議論に入ります。

そして、各原価センタで営業費用が集計されたらそれだけで終わらずに、次の図のように「セールスルマンの人数」や「売上」「取扱数量」など最も合理的と思われる割合で営業費用を各利益センタに配賦することによって、利益センタ(「商品」や「商品群」など)ごとの営業損益の管理が可能になります。

このように利益センタごとに営業費用を各利益センタに配賦すると、下図のように利益センタごとの売上と利益のモニタリングが可能になり、「どの商品の販売により注力すべきか」「会社の利益率が低下した理由は何か」などの分析や素早い改善アクションがとりやすくなります。

営業損益以外の項目

予算では損益以外にも様々な計画を立てると思いますが、その中でも「営業外損益、特別損益」「経常運転資金」「人員計画」「投資計画」の4つを紹介したいと思います。

営業外損益、特別損益

営業損益以外でも、資金調達コスト、固定資産の除却や売却などの見込み額については予算に織り込んでおく必要があります。

発生確率がそれほど高くないものについては一般的には予算に含めませんが、どのようなリスクが想定されているのか「リスクの内容」と「金額」をリスト化しておくことがリスク管理の上で有用です。

経常運転資金

経常運転資金とは会社を円滑に運営していくために必要な資金のことで、「売掛金(受取手形)-買掛金(支払手形)+棚卸資産」で計算します。

例えば売掛金の支払いサイトを2カ月から3カ月に延長した場合には、売掛金の回収が1カ月遅くなるため売上1カ月分に相当する資金を新たに調達する必要が出てきます。このように経常運転資金は金額が大きいため資金の効率的な利用(資金繰り悪化防止)のためには予算と実績の管理することが大切です。

経常運転資金は売上が増えるとそれに合わせて増えますが、少なくとも売上の成長以上のスピードで経常運転資金が増えることは良い兆候ではありません。

人員計画と投資計画

人員は業績が好調だからと言って急に増やしたり、当初の計画通りにいかないからと言って急に減らすことが難しく中長期的な視点が必要になってきます。また、投資についても同様に投資した時だけではなく将来の費用として発生するため中長期的な視点が必要です。

したがって、これらの数値計画については会社の中長期的な戦略とともに十分議論されて設定されることが望ましいです。

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