第1回 年度予算とは?

これまで決算書入門(全10回)と財務諸表分析(全3回)で決算書の基礎とその見方を解説してきましたが、ここからは数値の部分を中心に「予算策定と管理の方法」について解説したいと思います。

なお、予算の策定や管理に決められた方法はなく各会社の状況によって最適な方法は異なります。ここでの解説はたくさんある方法のうち筆者の経験に基づいた一つの方法であることにご留意ください。

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「年度予算」の位置づけ

各年度に作成される予算を年度予算といいますが、一般的には会社の経営理念(会社の存在意義や使命)とそれに基づくビジョン(会社が成し遂げたいこと)、現状分析(自社分析と外部環境分析)を踏まえて3年~5年程度の計画である中期経営計画が策定され、さらにそれを各年度に落とし込んだものが年度予算という位置づけになります。

年度予算の位置づけ

予算策定のサイクル

予算は会社にとってとても重要な事柄ですので、さまざまな分析や議論を経て策定されることになり、良いものを作成しようとするとなかなか骨の折れるものです。

そのため予算を策定すること自体が目的となってしまい、その後のモニタリングや分析が十分でないケースも見受けられますが、予算策定からその後のフォローアップも含めた一連のプロセスがあって初めて十分な効果が得られますので、「予算策定→実行→モニタリングと分析→改善活動→(時期)予算策定」というサイクルを回していくことが大切になります。

予算策定のサイクル図

予算で設定する数値

年度予算には具体的にどのような数値を設定するべきでしょうか?これについては様々な意見があると思いますが、「売上と利益」「運転資金」「投資計画」「人員計画」あたりが重要なポイントになると思います。

売上と利益

売上と利益は数値目標のうちでも最もわかりやすく、かつ、一般的に重視されるポイントです。事業の規模や特徴によってどのように売上と利益の予算を設定するかは異なってきますが、複数の商品(又は商品群)を取り使っている会社の場合には、その後のモニタリングや改善活動につなげられるように、例えば下図のように商品(又は商品群)単位で予算を設定しておくと良いでしょう。

(例)売上と利益の計画

売上と利益の計画の例

経常運転資金

会社の資金繰りを改善して金利負担を抑えるには資金を効率的に活用することが大切です。「売上の成長以上に運転資金を使っていないか?」、経常運転資金(=売掛金・受取手形-買掛金・支払手形+棚卸資産)についてもしっかりとした予算を立ててモニタリングすることが望ましいと言えるでしょう。

(例)運転資金の計画

運転資金の計画の例

投資計画

投資は事業の成長に重要な要素ですが、同時に減価償却費や維持管理費など将来に費用負担も発生させるものです。過剰な投資にならないように中長期的な視点を持って予算策定の段階で議論をしておくことが大切でしょう。

(例)投資計画

投資計画の例

人員数、人件費の計画

人員を急に増やしたり減らしたりすることは困難ですし、また社員教育なども考えると人員計画には中長期的なプランが必要になってきます。したがって中長期的な会社の戦略と整合性のある採用計画及び育成計画を立てる必要があるでしょう。

(例)人員、人件費の計画

人員数、人件費の計画の例

社員のモチベーションを上げる計画か?

様々な会社の計画を見ていると、ときどき夢物語な計画が見受けられます。もちろん、自社に革新的な技術やアイデアがあったり、市場が急成長しているような場合には大きな計画を立てるのも一つの方法ですが、業績が安定している会社の場合は「チャレンジングだが実現可能」という中期経営計画や年度予算にすることが大切です。

社員から「社長がまたこんな夢物語を語ってる」「どうせ無理だ」と思われるような計画では、社員のモチベーションアップにはつながりにくいでしょう。

社印のモチベーションを上げる計画

また、例えば3年間の中期経営計画の1年目、2年目が不調だったにも関わらず「何が何でも達成するんだ!」という根性論で頑張ろうとする経営者もいらっしゃいますが、社員から見て明らかに実現不可能な予算は望ましくありません。

社員のモチベーションを下げる計画

したがって、当初の計画が明らかに実現不可能になっている場合には、新たにチャレンジングだが「実現可能な計画」に修正することをお勧めします。

中期計画を修正するイメージ

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