第8回 売上増でも利益が減る場合

前回は損益分岐点の分析について解説しましたが、今回は損益分岐点分析の中で出てきた流動費と固定費を使って利益が増えるメカニズムと利益が減るメカニズムについて詳しく解説します。

利益を増やす4つの方法

通常、損益計算は「売上高」「売上原価」「販売費及び一般管理費」といった区分で表示されますが、第7回 損益分岐点分析で解説したとおり、別の切り口から眺めてみると、「売上」「変動費」「固定費」に区分することができます。

そして、この切り口で損益計算を分析すると、利益を増やすには売上を増やす方法として「単価を上げること」と「販売数量を増やすこと」の2種類が、費用を減らす方法として「変動費を減らすこと」と「固定費を減らること」の2種類の合計4種類があることがわかります。

利益を増やす効果的な方法

それでは「売上単価増」「売上数量増」「変動費減」「固定費減」がどのように利益の額に影響を及ぼすのか簡単なシミュレーションしてみます。

変動費が多いケース

最初に変動費が多いケース(1個あたりの売上100円に対して変動費70円)でシミュレーションしてみると、単価であれば2.0%増やせば利益が20%増えるのに対して、売上数量増では同じだけ利益を増やすのに数量を6.7%も増やす必要があります。これは売上の増加によって変動費も増加してしまうことに原因があります。

また、費用の削減の場合は、利益を20%増やすには変動費を2.9%の減少または固定費減を10%減少させる必要がありますので、最も利益に対する影響が大きいのが売上単価、次に変動費であることがわかります。

固定費が多いケース

次に固定費が多いケースでシミュレーションしてみると、単価増であれば流動費が多いケースとどうように2.0%増で利益が20%増えたのに対して、売上数量増では2.9%の増加、変動費減では6.7%の減少、固定費減では3.3%の減少が必要でした。

したがって、この場合もやはり最も利益に対する影響が大きいのが売上単価でした。

実際には各会社ごとに売上や変動費、固定費の金額や事業の特徴が異なりますので、各会社の状況に応じて「利益を効果的に増加させ」かつ「実現可能な方法」を探らなればなりませんが、いずれにしても売上単価が利益に対して大きなインパクトを与えるものであることがわかります。

そして、売上単価は上げる場合だけではなく下げる場合にも利益に対して大きなインパクトがあります。

売上増でも利益が減る「値引き」の逆効果

売上単価が利益に与える影響をさらに詳しく見ていくために、単純なシミュレーションですが次の図のように売上単価を10%増やした場合と10%減らした場合を比較してみました。

その結果、売上単価を10%増やした場合には利益が2倍に倍増したのに対して、売上単価を10%減少させた場合は利益が0円になってしまい、当初の利益を確保するためには売上数量を50%も増やす必要があることがわかりました。

このように売上単価は利益に対して非常に大きな影響を及ぼすため、たった10%の値引き販売であっても販売数量を大幅に増やすことができなければ、売上が増えたとしても利益は減ってしまうことがわかります。

もちろん会社によって状況が異なりますが、利益の観点から考えると商品の品質やサービスなどで他社との差別化を図る方が低価格によって集客を増やすことよりも好ましいと言えるでしょう。

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