第5回 投資をしないから内部留保が増える?

ときどき新聞やテレビで「日本企業の内部留保が増加している」と報道されますが、財務省のデータを見ても2018年度の内部留保は過去最大の463兆円にまでなっています。

ところで一部の政治家や評論家が「日本は投資をしないから内部留保が増え続けている」と批判していることがありますが本当でしょうか?内部留保とはどのようなものなので、内部留保と会社の資金との関係を解説します。

内部留保とは?

内部留保といえば「内部に留保するのだから、金庫の中に入っている現金や預金のことかな?」と思われるかもしれませんが、「内部留保=現金や預金」というわけではなく、多額の内部留保があるからと言って必ずしも多額の現金や預金を持っているとは限りません

第5回 貸借対照表の見方で貸借対照表の右側(負債と純資産)は「資金をどのようにして集めたか」を表すもので、左側(資産)は「集めた資金を何に換えたか」を表すものと解説しましたが、内部留保とは純資産のうちそれまでに稼いだ利益の部分(利益剰余金)をいいます

例えば貸借対照表の右側が「借入金400万円、株主からの出資1,000万円、それまでに稼いだ利益600万円」だとすれば、内部留保はそれまでに稼いだ利益の600万円ということになりますが、だからといって現金が600万円あるとは限りません。

内部留保が増えるのは悪いこと?

一部の政治家や評論家が言うように「日本は投資をしないから内部留保が増え続けている」という主張が正しいかと聞かれれば正しくありませんし、内部留保が多いからと言って会社の資金を寝かせているとは限りません

例えば、次の図のように300万円の現金を保有する会社が、現金の全てを使い切って新しい機械を導入した場合を考えても、現金300万円という資産が機械300万円という資産に置き換わるだけですので資産の総額には影響がなく内部留保の金額は減りません。

つまり、内部留保が増えるということは過去の利益が蓄積されて純資産が増えたことを意味するだけであって、会社が設備投資をせずに現金を貯めこんでいるというわけではありません。むしろ十分な内部留保があるということは会社の財政状態が良いと言えます。

「内部留保=資金の無駄」とは限らない

では、どうなれば内部留保が減少するのかと言えば「利益の額以上に配当をすること」や「赤字になること」によって内部留保は減少します。一方、利益の額よりも配当金が少なければ、たとえ多額の設備投資をしていたとしても内部留保の金額は増えていきます。

したがって、内部留保が多いことをに対して株主が「配当が少なすぎる」という理屈は正しいかもしれませんが、内部留保の金額をもって「設備投資不足」や「資金を無駄に寝かせている」とは言えないわけです。

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