第3回 調達した資金の効率的な利用

前回は貸借対照表の右側は「どのように資金調達したか?」を表し、左側は「調達した資金が何に換わったか?」を表すものであると解説しましたが、今回は調達した資金が効率的に利用されているか、「運転資金」について解説します。

受取手形・売掛金の資金への影響

得意先との取引を手形や掛けで行っている会社も多くありますが、こういった取引が会社の資金にどのような影響を与えるかを正しく理解することはとても大切です。

そして、残念ながら手形や掛けで販売するということは、販売から回収までの期間は資金を活用できていない、言い換えれば資金を眠らせている状態にあると言えます。

例えば月間の売上が3,000万円で売掛金の平均滞留期間が2カ月であれば、年間を通して平均6,000万円もの資金を眠らせていることになり、6,000万円もの資金を得意先に無利息融資しているのと同じことになります。

そして、自社の資金調達コストが年利3%であれば、これらの眠らせている資金に対して年間180万円もの金利を負担していることにもなります。

もちろんだからといって手形や掛けでの取引を一切やめて現金取引だけにするというわけにはいかないと思いますが、それでも「受取手形や売掛金=活用できていない資金」ということを理解して、受取手形や売掛金の支払いサイトを短くする努力が大切です。

支払手形・買掛金の資金への影響

一方、「支払手形や買掛金が資金に与える影響は?」と言えば、受取手形や売掛金とは反対に既に商品や原材料などを仕入れているにも関わらず支払いが猶予されているものですので、支払手形や買掛金の支払いサイトが長いほど会社の資金繰りは有利になります。

例えば月間の仕入金額が2,000万円で買掛金の支払いが仕入から平均2カ月後の場合、年間を通して平均4,000万円の資金を無利息で借りているのと同じことになるため、自社の資金調達コストが年利3%であれば、年間120万円の金利負担が減少していることになります。

当然、支払手形や買掛金の支払いサイトを一方的に長くすることはできませんが、少なくとも「売掛金の支払いサイトが2カ月なのに、買掛金の支払いサイトは1カ月」というようなことにはならないように適切な支払いサイトにするための交渉が大切です。

手持ち在庫の資金への影響

手形取引や掛け取引の他に会社の資金に大きな影響を与えるのが、商品や製品などの手持ち在庫の存在です。製造業や卸売業、小売業などの業種の場合は事業の性格上どうしても在庫を抱えざるをえませんが、在庫が店舗や倉庫などに保管されているということは、やはり資金を活用できておらず眠らせていることを意味します。

だからといって製造業や卸売業、小売業などの業種で在庫数量を極端に減らしてしまい、多くの在庫が欠品してしまうようだと売上の機会を逸することにもつながりかねませんが、「仕入れから販売までの過程を見直し無駄を省くこと」「製造数量や販売数量の予測精度を上げること」などの根拠を持った余剰在庫の削減によって資金のより効率的な活用が可能になります。

経常運転資金とは?

「受取手形・売掛金」や「手持ち在庫」は資金の効率的な活用にマイナスの効果がある一方で、「支払手形・買掛金」はプラスの効果があるわけですが、これらの3つの金額から計算した「受取手形・売掛金」-「支払手形・買掛金」+「在庫」の金額を「経常運転資金」といい、会社が営業活動を行うために必要な運転資金と考えられています。

そして、日頃からこの経常運転資金のモニタリングと増減分析を行って、経常運転資金を不必要に増やさないことが、調達した資金をより効率的に活用し、さらには資金調達コストを抑えるためのポイントになると言えます。

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