法人が支払った所得税の取扱い-所得税額控除

法人が配当金や銀行利子などを受け取った場合には法人であっても所得税が源泉徴収されますが、法人税と所得税の二重課税を避けるため法人税には所得税額控除の制度が設けられています。

所得税額控除の仕組み

法人の利益には法人税が課税されますが、配当金や銀行利子などを受け取った場合には法人であっても所得税が源泉徴収されます。したがって、法人が配当金や銀行利息などを受け取った場合には法人税が課税される一方で、所得税の源泉徴収もされることになります。

ところが、このままでは法人税と所得税が二重に課税されてしまうため、法人税の確定申告の際には、源泉徴収された所得税額を申告する法人税額から控除することが認められています(復興特別所得税についても同様)。

ただし、配当金等の計算期間中に配当のもととなった元本が増減している場合には、所得税額の一部のみ控除できます。

預貯金や公社債の利子等

法人が受け取った預貯金や公社債の利子から源泉徴収された所得税は、全額を法人税の額から控除できますが、所得税額控除の対象になった所得税は所得金額の計算上損金にはなりません。

(例1)所得税額控除する場合① (租税公課で経理処理)
銀行から100万円の利子(源泉所得税15万円、実際の受取額85万円)を受け取って、次の経理処理をしました(法人税率23.2%、これ以外の取引は考慮しない)
次のように法人税額を計算します。

項目 金額
当期純利益 受取利息100万円-租税公課15万円=85万円
法人税の所得金額 当期純利益85万円+租税公課15万円(※)=100万円
(※)所得税額控除の対象になる所得税は損金不算入のため加算調整
法人税額 所得金額100万円×23.2%-所得税額控除15万円=8.2万円
(例2)所得税額控除する場合② (仮払金で経理処理)
銀行から100万円の利子(源泉所得税15万円、実際の受取額85万円)を受け取って、次の経理処理をしました(法人税の税率23.2%、これ以外の取引は考慮しない)
次のように法人税額を計算します。

項目 金額
当期純利益 受取利息100万円
法人税の所得金額 当期純利益100万円(※)
(※)源泉所得税を仮払金にしているため加算調整は不要
法人税額 所得金額100万円×23.2%-所得税額控除15万円=8.2万円
(例3)所得税額控除しない場合
銀行から100万円の利子(源泉所得税15万円、実際の受取額85万円)を受け取って、次の経理処理をしました(法人税の税率23.2%、これ以外の取引は考慮しない)
次のように法人税額を計算します。

項目 金額
当期純利益 受取利息100万円-租税公課15万円=当期純利益85万円
法人税の所得金額 当期純利益85万円(※)
(※)所得税額控除しないため加算調整は不要
法人税額 所得金額85万円×23.2%=19.72万円

剰余金の配当等

法人が受け取った配当等についても所得税が源泉徴収されるため、源泉徴収された所得税は銀行利子等と同様に法人税の額から控除できます。

ただし、配当等の計算期間中に元本数が増減している場合には、次の「個別法」又は「簡便法」のうち法人が選択する方法で控除額を計算します。

配当等(元本の所有期間に応じて所得税額控除の額が変わるもの)
(1)剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、金銭の分配
(2)投資信託や特定受益証券発行信託の収益の分配
(3)国外投資信託や国外株式の配当等
(4)割引債の償還差益

個別法

個別法では、次の計算式のように銘柄ごとに控除額を計算します。

(例)保有しているX社株式とY証券信託から次の配当等を受け取りました。

配当の計算期間 購入・売却履歴 収入金額 所得税額
X社株式 2018/4-2019/3 1,000株購入 (2016/3/1)
1,000株追加購入(2019/1/1)
1,000,000円 150,000円
Y証券投資信託 2018/4-2019/3 2,000口購入(2017/10/1)
1,000口売却(2018/9/30)
600,000円 90,000円

X株式:
1,000株は計算期間12カ月の全期間所有、残りの1,000株は最後の3カ月間だけ所有

所得税額控除の額
12カ月間所有していた1,000株 150,000円×1,000株/2,000株=75,000円
最後の3カ月間だけの1,000株 150,000円×1,000株/2,000株×3カ月/12カ月=18,750円
合計 75,000円+18,750円=93,750円

Y証券投資信託:
1,000口は計算期間12カ月の全期間所有、残りの1,000株は最初の6カ月間だけ所有

所得税額控除の額
全期間所有の1,000口 90,000円×1,000口/2,000口=45,000円
最初の6カ月間だけ所有の1,000口 90,000円×1,000口/2,000口×6カ月/12カ月=22,500円
合計 45,000円+22,500円=67,500円

簡便法

簡便法では配当金の元本を、「株式・出資」と「集団投資信託」に区分し、さらに計算期間が「1年以下」のものと「1年超のもの」に区分したうえで、各銘柄ごとに次の計算式で所得税額控除の額を計算します。

・計算期間が1年以下のもの

・計算期間が1年超のもの

(※)計算期間が1年以内、1年超ともに、A≧Bの場合は所得税額の全額を控除できます。

(例)保有しているX社株式とY証券信託から、次のとおり配当等を受け取った場合

配当の計算期間 購入・売却履歴 収入金額 所得税額
X社株式 2018/4-2019/3 1,000株購入 (2016/3/1)
1,000株追加購入(2019/1/1)
1,000,000円 150,000円
Y証券投資信託 2018/4-2019/3 2,000口購入(2017/10/1)
1,000口売却(2018/09/30)
600,000円 90,000円

X株式:
配当等の計算期間開始時に1,000株、計算期間終了時に2,000株を所有
150,000円×(1,000株+(2,000株-1000株)×1/2)/2,000株=112,500円
Y証券投資信託:
配当等の計算期間開始時に2,000口、計算期間終了口に1,000株を所有
計算期間開始時の元本数2,000口が計算期間終了時の元本数1,000口よりも多いため、所得税額90,000円の全額を控除可能

控除不足額の取り扱い

当期の法人税額が0円というような場合には所得税額控除があったとしても控除することができませんが、所得税額控除できなかった金額がある場合には、法人税の確定申告で還付金の請求をすることができます。

法令等

この記事は2020年4月1日現在の法令等に基づいて書かれています。また、この記事は税法学習者に税法の一般的な取り扱いを解説するものですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。

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