2.9 所得税を払った場合(所得税額控除)

法人の儲けには法人税がかかりますが、配当金や銀行利子などを受け取った場合には法人税が課税されるだけではなく所得税も源泉徴収されます。したがって、法人が配当金や銀行利子などを受け取った場合、そのままでは所得税が源泉徴収されたうえに法人税まで課税されてしまう二重課税になってしまいます。

法人税ではこのような二重課税を避けるために配当金や銀行利子から源泉徴収された所得税を、一定のルールによって法人税の額から控除することを認めています。これを所得税額控除といいます。

所得税額控除の計算

法人が支払いを受ける利子や配当などには所得税が源泉徴収されますが、源泉徴収された所得税は原則として法人税の額から控除できます。

ただし、配当金などを受け取った場合で、その元本である株式等の保有数が配当金の計算期間中に増減している場合には、元本の所有期間に対応する所得税として一定の方法で計算した金額についてのみ所得税額控除ができます。

所得税と一緒に源泉徴収された復興特別所得税についても、所得税と同様に所得税額控除の対象になります。

預貯金や公社債の利子などの場合

法人が受け取った預貯金や公社債の利子から源泉徴収された所得税は、全額を法人税の額から控除することができます。

ただし、所得税額控除の対象になった所得税は、法人税の所得計算では損金不算入になります(所得税額控除を適用しなかった場合、源泉徴収された所得税を損金に算入することができます)

(例1-1)源泉徴収された所得税に所得税額控除をする場合①
銀行から利子が100万円ありました。ただし15万円の所得税が源泉徴収されるので受取額は85万円で、次のように経理処理しました(法人税の税率は23.2%、当期はこれ以外に取引がなかったものとします)
(借方)預金85万円   (貸方)受取利息100万円
(借方)租税公課15万円

・当期純利益の計算
受取利息100万円-租税公課15万円=当期純利益85万円
・所得金額の計算
当期純利益85万円+租税公課15万円(※)=所得金額100万円
(※)所得税額控除の対象になる所得税は損金不算入
・法人税の計算
所得金額100万円×23.2%-所得税額控除15万円=法人税8.2万円

(例1-2)源泉徴収された所得税に所得税額控除をする場合②
銀行から利子が100万円ありました。ただし15万円の所得税が源泉徴収されるので受取額は85万円で、次のように経理処理しました(法人税の税率は23.2%、当期はこれ以外に取引がなかったものとします)
(借方)預金85万円   (貸方)受取利息100万円
(借方)仮払金15万円

・当期純利益の計算
受取利息100万円=当期純利益100万円
・所得金額の計算
当期純利益100万円=所得金額100万円
・法人税の計算
所得金額100万円×23.2%-所得税額控除15万円=法人税8.2万円

(例2)源泉徴収された所得税に所得税額控除をしない場合
銀行から利子が100万円ありました。ただし15万円の所得税が源泉徴収されるので受取額は85万円で、次のように経理処理しました(法人税の税率は23.2%、当期はこれ以外に取引がなかったものとします)
(借方)預金85万円   (貸方)受取利息100万円
(借方)租税公課15万円
・当期純利益の計算
受取利息100万円-租税公課15万円=当期純利益85万円
・所得金額の計算
当期純利益85万円=所得金額85万円
・法人税の計算
所得金額85万円×23.2%=19.72万円
所得税額控除した場合(例1-1、1-2)としない場合(例2)を比較すると、所得税額控除した場合の方が法人税が少なくなっています。つまり所得税額控除した方が法人にとって有利ということです。

剰余金の配当など

他の会社から配当金などを受け取った場合も銀行利子などと同様に所得税が源泉徴収されるので、法人税の額から源泉徴収された所得税を控除できます。

ただし、配当金などから源泉徴収された所得税の場合は、所得税の全額を所得税額控除できるとは限らず、配当金などの基礎になった元本(株式など)の所有期間に応じて所得税額控除できる金額が変わってきます。

元本の所有期間に応じて所得税額控除するもの
・剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、金銭の分配
・投資信託や特定受益証券発行信託の収益の分配
・国外投資信託や国外株式の配当など
・割引債の償還差益
所得税額控除の計算方法には次の個別法簡便法の二つがあり、法人は事業年度ごとにどちらか有利な方(法人税が少なくなる方)を選択することがでるので、節税のためには多少面倒でも両方計算してみることが大切です。

所得税額控除の計算①:個別法

個別法では銘柄ごとに配当の基礎となった月数と元本所有期間をもとに以下のように控除額を計算します。

(例)X株式とY証券信託を保有しています。次のとおりX株式から配当金収入100万円、Y証券投資信託から収益の分配60万円を受け取った場合

・X株式の所得税額控除

1,000株は計算期間12カ月間の全て所有、残りの1,000株は3カ月間だけ所有していたので次のように所得税額控除を計算します。
(1) 計算期間12カ月間の全て所有していた1,000株分
150,000円×1,000株/2,000株=75,000円
(2) 計算期間の3カ月間だけ所有していた1,000株分
150,000×1,000株/2,000株×3カ月/12カ月=18,750円
(3) 所得税額控除
(1)+(2)=93,750円

・Y証券投資信託の所得税額控除

1,000口は計算期間12カ月間の全て所有、残りの1,000株は6カ月間だけ所有していたので次のように所得税額控除を計算します。
(1) 計算期間12カ月間の全て所有していた1,000口分
90,000円×1,000口/2,000口=45,000円
(2) 計算期間の6カ月間だけ所有していた1,000口分
90,000円×1,000口/2,000口×6カ月/12カ月=22,500円
(3) 所得税額控除(1)+(2)=67,500円

所得税額控除の計算②:簡便法

簡便法では配当などのもとになった元本を株式・出資と集団投資信託に区分、さらに計算期間が1年以下のものと1年超のものに区分して、銘柄ごとに次の計算式で計算します。

・計算期間が1年以下のもの

・計算期間が1年超のもの

A(計算期間開始時の元本数)がB(計算期間終了時の元本数)よりも多い場合は、所得税の全額を控除できます。言い換えれば、計算期間中に元本が減っている場合は所得税の全額を控除できるということです。

(例)X株式とY証券信託を保有しています。次のとおりX株式から配当金収入100万円、Y証券投資信託から収益の分配60万円を受け取った場合

・X株式の所得税額控除

計算期間開始時に1,000株、計算期間終了時に2,000株を所有していたので、次のように所得税額控除を計算します。
150,000円×(1,000株+(2,000株-1000株)×1/2)/2,000株=112,500円

・Y証券投資信託の所得税額控除

計算期間中に元本が減っているので所得税90,000円の全額を所得税額控除できます。

法人税額が0円の場合

法人税額が0円の場合は法人税の額から所得税を控除することができませんが、このように控除できなかった金額は法人税の確定申告で還付を請求することができます。

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2.1 法人税の計算の全体像

法令等

この記事は2018年12月31日現在の法令等に基づいて書かれています。