2.8 留保金課税とは

経営者や経理担当者の中には税理士から「配当しないと特別な法人税がかかるので〇〇円以上配当してください」などと言われたことがある方もいらっしゃるかもしれません。確かに配当金の額が少ないと特別な法人税が課税される場合があります。いわゆる特定同族会社の留保金課税です。

留保金課税とは

会社が事業で得た利益は通常配当として株主に還元されて、配当金を受け取った株主には所得税等が課税されます。

ただし、例えばオーナー企業であれば創業者などの非常に限られた人だけで株式を保有しているので、所得税等が課税されるのを避けるために配当しないで会社に利益を留保しておくという判断が容易にできます。

このような方法での課税回避を防止するため、一定の要件を満たす会社が配当をせずに過剰な金額を内部留保した場合には、通常の法人税とは別に内部留保した金額に対して追加の法人税が課税されます。これを留保金課税といいます。

同族会社と特定同族会社

少数の株主または出資者(以下「株主等」といいます)に支配されている会社を法人税では同族会社と呼び、同族会社の中でも特に限られた少数の株主に支配されている会社を特定同族会社といいます。

留保金課税は特定同族会社が多額の内部留保をした場合に課税されるものです。したがって、特定同族会社でなければいくら内部留保しても留保金課税はありません。

特定同族会社

特定同族会社の判定

特定同族会社とは一つの株主(または株主グループ)によって株式または出資金の50%超を保有されている会社をいいます。言い換えれば一つの株主(または株主グループ)に支配されている会社ともいえます。

一つの株主(または株主グループ)が株式または出資金の50%超を保有していなくても、その株主(または株主グループ)が会社の重要事項に関する議決権の50%超を有する場合など、実質的にその会社を支配している場合には特定同族会社になることがあります。

株主グループとは
一つの株主及びその株主と以下の関係(特殊関係)にある個人または法人をグルーピングしたものをいいます。
①株主の親族
②株主の内縁関係者
③個人株主の使用人
④個人株主が生活費を負担している人
⑤①~④と生計を一にしている親族
⑥株主が支配している会社

(例)A株式社(資本金5億円)は株式を1,000株発行しています。次の株主が株式を保有しています。
(1)太郎さん 300株
(2)太郎さんの内縁の妻 100株
(3)太郎さんが生活費を負担している内縁の妻の母 100株
(4)太郎さんが株式の50%超を保有しているB株式会社 100株
(5)太郎さんと全然関係ない次郎さん 200株
(6)次郎さんの妻 200株

太郎さんを中心に考えた場合、(1)~(4)が太郎さんグループになりますが、太郎さんグループが単独で株式の60%の株式を保有していますのでA株式会社は特定同族会社になります。

株主等に被支配法人でない法人が含まれいてる場合

特定同族会社の判定対象になった株主(または株主グループ)の中に、別の一つの株主(または株主グループ)から支配されていない法人が含まれる場合は、その法人を除いて特定同族会社の判定をします。

例えば親会社株式が多数の株主に保有されていて特定の株主や株主グループに支配されていない場合、その子会社は特定同族会社になりません。

(例)C株式会社(資本金5億円)は株式を1,000株発行しており、以下の株主が株式を保有してる場合
(1)D株式会社(特定の株主や株主グループに支配されていない) 600株
(2)D株式会社とは関係のない三郎さんグループ 400株

D株式会社は特定の株主や株主グループに支配されていませんので、特定同族会社の判定の対象から除きます。したがって、次郎さんグループが最大の株主グループになりますが、保有割合は50%以下ですので、C株式会社は特定同族会社にはなりません。

特定同族会社にならない会社

資本金または出資金の額が1億円以下の会社(資本金または出資金5億円以上の法人の100%子法人等を除く)や清算中の会社は特定同族会社になりません。

(例)E株式会社(資本金5,000万円)は株式を1,000株発行しており、四郎さんが全株式を保有してる場合

四郎さんが全株式を持っていますが資本金1億円以下ですので特定同族会社にはなりません。

(例)F株式社(資本金5,000万円)は株式を1,000株発行しており、G株式会社(資本金10億円)が全株式を保有してる場合。G株式会社の株式は全て五郎さんが持っています。

F株式会社:
資本金1億円以下ですが、G株式会社(資本金5億円以上)の100%子会社なので特定同族会社になります。
G株式会社:
資本金1億円超で五郎さんが株式の50%超を持っているので特定同族会社になります。

留保金課税の計算

会社が多額の利益を獲得したとしても、税金の支払いや将来のためなどにいくらか残しておかなければならず、利益のすべてを株主に配当するわけにはいきません。

留保金課税も会社の内部留保全てに課税されるわけではなく、留保金額から納付する法人税等や内部留保として適正な金額(留保控除額)を控除した後の課税留保金額に課税されます。

・留保金課税の計算式

課税留保金額がない場合は留保金課税は行われません。

留保所得金額

留保所得金額はその事業年度の所得金額に所定の項目を調整して計算します(所得金額の計算や税務調整の基礎については2.1 法人税の計算の全体像をご覧ください)

・留保所得金額の計算

(例)所得金額が3,000万円で受取配当等の益金不算入額が100万円、交際費等の損金不算入額が200万円でした。また、定時総会で配当金300万円の決議がされました。

所得金額3,000万円に受取配当等の益金不算入額100万円を加算、交際費等の損金不算入額200万円と決議された配当金300万円を控除して留保所得金額を計算します。

当期の法人税等

当期の法人税等とは、当期の法人税、地方法人税、住民税の金額として一定の方法で計算した金額です。

留保控除額

留保控除額は以下の三つのうち最も大きい額をいいます。

(1)所得基準額
所得等の金額×40%
・所得等の金額の計算

(2)定額基準額
年2,000万円

(3)積立金基準額
資本金(または出資金)×25%-利益積立金

(例)当事業年度(6カ月間)の所得等の金額が3,000万円の場合。なお、資本金は2億円、利益積立金は4,000万円です。

(1) 所得基準額
所得等の金額3,000万円×40%=1,200万円
(2) 定額基準額
2,000万円×6カ月/12カ月=1,000万円
(3) 積立金基準額
資本金2億円×25%-利益積立金4,000万円=1,000万円
(1)~(3)のうち最大の1,200万円が留保控除額になります。

特別税率

計算された課税留保金額に次の特別税率を掛けて留保金課税の税額を計算します。

(例)留保所得金額5億円、当期の法人税等1億円、留保控除額2億円の場合(事業年度は4月1日から3月31日までの1年間です)

留保所得金額5億円-法人税等1億円-留保控除額2億円=課税留保金額2億円
(1) 3,000万円以下の部分
3,000万円×10%=300万円
(2) 1億円以下の部分
7,000万円×15%=1,050万円
(3) 1億円超の部分
1億円×20%=2,000万円

留保金課税の税額は(1)+(2)+(3)=3,350万円

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2.1 法人税の計算の全体像

法令等

この記事は2018年12月31日現在の法令等に基づいて書かれています。