2.4.4 繰延資産の範囲と償却方法

企業会計では支出の効果が将来の期間にわたるものを繰延資産といい、支出時ではなく支出の効果があらわれる期間にわたって費用化します。

例えば、会社を設立登記するための支出は、将来の会社経営のための支出ですので、設立登記時の費用にするのではなく繰延資産として計上した後、時間の経過に応じて償却していきます。

繰延資産の範囲

繰延資産といえば一般的に企業会計で定める創立費や開業費を思い浮かべるかもしれませんが、法人税ではこれら企業会計の繰延資産に加えて、次に掲げる法人税固有の繰延資産を定めているため企業会計よりもその範囲が広くなっています。

法人税の繰延資産
企業会計の繰延資産 法人税固有の繰延資産
創立費 公共施設などを設置するための負担金
開業費 資産を賃借するための権利金等
開発費 役務の提供を受けるための権利金等
株式交付金 広告宣伝資産の贈与費用
社債等発行費 その他、自己が便益を受けるための費用

ただし、これらに該当するものであっても、支出の効果が支出日から1年未満のものは繰延資産にはなりません。

会社法の繰延資産

会社法の繰延資産には、創立費、開業費、開発費、株式交付費、社債等発行費の5種類がありますが、法人税では会社法の繰延資産について会社が行った経理処理を認めるという立場をとっています。

例えば、企業会計では創立費は会社の成立から5 年以内の効果の及ぶ期間にわたって償却することになっていますが、創立費を即時の費用として経理処理したとしても、3年間や5年間で償却したとしても、法人税では税務調整を行いません。

繰延資産 内容
創立費 会社設立登記までの費用
(発起人報酬や設立登記の登録免許税、定款作成費用など)
開業費 会社設立登記から営業開始までの費用
(事務所の賃借料や光熱費など)
開発費 新たな技術や資源の開発、新市場の開拓などの費用
(調査費用など)
株式交付金 会社設立後に新たに株式を発行するための費用
(株式発行の広告費用など。ただし会社設立時の株式発行費用は創立費)
社債等発行費 社債を発行するための費用
(社債発行の広告費用など)
(例1)創立費100万円を支出して当期は20万円を費用に計上しました。
法人税は会社法の繰延資産について会社の経理処理を認めるため、20万円の全額が損金になります。
(例2)開業費100万円を支出したが全額を繰延資産に計上し償却していない。
会社が費用として経理処理していないため損金はなりません。

法人税固有の繰延資産

内容

法人税では、費用や損失は原則として債務が確定した時の損金になりますが、法人税固有の繰延資産については、その支出の効果があらわれる期間にわたり償却することによって損金になります。

例えば建物を賃借するための権利金は法人税固有の繰延資産の一つですが、将来の期間に建物を使用するための支出ですので、支出時の損金になるのではなく建物の使用にあわせて損金化していきます。

償却方法

法人税固有の繰延資産は、各事業年度に償却費として損金経理した金額のうち、次の償却限度額までの金額が損金になります。ただし支出した額が20万円未満の場合は、繰延資産とはせずに債務が確定した事業年度に全額を損金にすることもできます。

(例)飲料メーカーが自社の社名が大きく描かれた30万円の冷蔵庫を、1月10日にレストランに寄贈しました。飲料メーカーの決算は3月末、繰延資産の償却期間は4年の場合。
寄贈した事業年度の償却限度額:
30万円×3カ月/48カ月=18,750円
翌事業年度の償却限度額:
30万円×12カ月/48カ月=75,000円

償却期間

法人税固有の繰延資産の償却期間はそれぞれ次のように定められています。したがって、この償却期間に基づいて各事業年度の償却限度額を計算します。

(1) 公共的施設などを設置するための負担金

・公共施設を設置又は改良するための費用の場合
(例)道路や堤防などを設置するための負担金

繰延資産の内容 償却期間
費用の負担者がもっぱら使用するもの その施設等の耐用年数×7/10
その他のもの その施設等の耐用年数×4/10

・協同施設を設置又は改良するための費用の場合
(例)同業者団体の会員が共同で使用する会館の建設負担金

繰延資産の内容
償却期間
負担者又は構成員が共同の用に供するもの、協会等の本来の用に供するもの 負担金のうち施設の建設又は改良に充てる部分 その施設等の耐用年数×7/10
負担金のうち土地の取得に充てる部分 45年
商店街の共同アーケードや日よけ等のように、負担者の共同の用と一般公衆の用の両方に供されるもの
5年
(ただし、施設の耐用年数が5年未満の場合はその耐用年数)

(2) 資産を賃借するための権利金等

・建物の賃借の場合

繰延資産の内容
償却期間
新築建物の権利金等で、賃借期間の建設費の大部分に相当し、かつ、建物の存続期間中賃借できるもの 賃借する建物の耐用年数×7/10
上記以外の建物を賃借するための権利金 借家権として転売できるもの 賃借する建物の賃借権後の
見積残存耐用年数×7/10
借家権として転売できないもの 5年
(契約による賃借期間が5年未満で、契約更新時に再び権利金等を支払うことが明かな場合は賃借期間)

・電子計算機などの機器の賃借の場合

繰延資産の内容 償却期間
電子計算機などの機器の賃借に伴う費用 賃借する機器の耐用年数×7/10
(その年数が賃借期間を超える場合は賃借期間)

(3) 役務の提供を受けるための権利金等

繰延資産の内容 償却期間
ノウハウの頭金など 5年
(設定契約の有効期間が5年未満で、契約更新時に再び一時金や頭金を支払うことが明かな場合は有効期間の年数)

(4) 広告宣伝用資産の贈答費用

(例)飲料メーカーが寄贈する商品名が大きく描かれた冷蔵庫

繰延資産の内容 償却期間
広告宣伝用資産の贈与費用 贈与した資産の耐用年数×7/10
(計算した年数が5年を超えるときは5年)

(5) その他自己が便益を受けるための費用

繰延資産の内容 償却期間
スキー場のゲレンデ整備費用 12年
出版権の設定の対価 契約に定める存続期間(存続期間の定めがない場合は3年)
同業者団体等の加入金 5年
プロスポーツ選手の契約金等 契約期間(契約期間の定めがない場合は3年)

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2.1 法人税の計算の全体像

法令等

この記事は2019年10月31日現在の法令等に基づいて書かれています。また、このサイトは税法を学ぶ方に税法の一般的な取り扱いを解説するものですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。