2.4.3 減価償却資産の取得価額と償却費

法人が建物や機械といった資産を取得した場合、取得にかかった費用の全額が取得した時の損金になるわけではなく、いったん資産として帳簿に計上し、その後使用期間にわたって徐々に損金にしていきます。これを減価償却といいます。

減価償却資産の範囲

法人税では固定資産のうち時間の経過によって徐々に価値が減少する資産を減価償却資産といい、減価償却によって取得価額を損金にしていきます。

一方、例えば土地のように時間の経過によって価値が減少していかない固定資産は減価償却資産ではありません。このような固定資産は減価償却することができませんので、取得価額を減価償却によって損金にすることはできません。

減価償却資産であるもの

減価償却資産には有形減価償却資産、無形減価償却資産、生物の三種類があり、具体的な内容は以下のとおりです。

・有形減価償却資産
建物、建物附属設備、構築物、機械装置、船舶、航空機、車両運搬具、工具、器具備品など

・無形減価償却資産
特許権、実用新案権、意匠権、商標権、ソフトウエア、鉱業権、漁業権など

・生物
牛、馬、豚、果樹など

ただし、減価償却資産であっても稼働休止中のものや建設中のものなど事業の用に供していないものは減価償却することができません。

減価償却資産ではないもの

土地や電話加入権、白金製品、一定の美術品などのように時間の経過によって価値が減少しないものは減価償却資産ではありません。

減価償却資産の取得価額

減価償却資産を取得した場合は購入代金などだけではなく、その減価償却資産を取得するにあたって付随して発生した費用(引取り運賃や荷役費など)も取得価額に含まれます。

取得価額に含まれるということは、このような付随費用は支出時の損金にはならずに減価償却資産の一部として使用期間にわたって減価償却していくことになります。

購入した場合の取得価額

購入した減価償却資産の取得価額は購入代金だけではなく、購入のために要した費用などを含めて取得価額になります。

(例)機械を100万円で購入し、設置費用などに20万円かかった場合
設置費用など20万円は取得時の損金にはできずに機械の取得価額に含まれます。したがって、機械の取得価額は120万円になります。

自己で製造等した場合の取得価額

自己で製造、建設、製作した減価償却資産の取得価額は原材料費、労務費、経費に事業の用に供するために直接要した費用を加えた額になります。

取得価額に含めないことができる費用

減価償却資産の取得に付随して発生した費用は原則として取得価額に含まれますが、取得に要した費用であっても次のような費用は取得価額に含めないことができます。

取得価額に含めないことができる費用の例
・不動産取得税や自動車取得税、事業所税、登録免許税、登記費用など
・建物の建設等のために行った調査、測量などで計画の変更のために無駄になった費用
・いったん締結した契約を解除して、別の減価償却資産の取得したことによる違約金
・減価償却資産を取得するために借りた借入金の利子

耐用年数

減価償却資産は耐用年数にわたって減価償却していきますが、各減価償却資産の耐用年数を正確に見積もることは簡単ではありません。また、各会社ごとに自由に耐用年数を見積ってよいのであれば、恣意的に耐用年数を決めて減価償却費の額を操作することもできてしまいます。

そこで法人税では資産の種類や構造、用途の異なる減価償却資産ごとに細かく耐用年数を定めています。これを法定耐用年数といいます。

法定耐用年数はeGOV:耐用年数省令で調べることができます。
別表第一(建物、構築物、車両及び運搬具、器具及び備品などの耐用年数)
別表第二(機械及び装置の耐用年数)
別表第三(無形減価償却資産の耐用年数)
別表第四(生物の耐用年数)
別表第五(公害防止用減価償却資産の耐用年数)
別表第六(開発研究用減価償却資産の耐用年数)
ただし、中古で取得した減価償却資産については新品の減価償却資産よりも使用可能期間が短いことが想定されるので、上記の法定耐用年数とは別の方法で耐用年数を決めます。

減価償却限度額の計算

減価償却費の計算には定額法、定率法などの方法があり、法人税では減価償却資産の区分(建物、建物附属設備、構築物など)に応じて減価償却限度額の計算方法が決まめられています。

同一の減価償却資産に複数の償却方法が認められている場合は、その中からどの方法で減価償却限度額を計算するかを税務署長に届け出ないといけません。

なお、法人税で定められているのは減価償却限度額ですので、実際の減価償却費が限度額よりも小さくでも問題ありません。一方、実際の減価償却費が限度額を超えている場合は限度額までが損金になります。

定額法

耐用年数にわたって毎期同額の減価償却限度額を計算する方法で次のように計算します。

減価償却限度額(原則)

償却限度額=取得価額×償却率
(償却率は4.3償却率、改定償却率、保証率をご確認ください)

(例)期首に耐用年数5年の機械装置を1,000万円で取得して使用開始しました。定額法で減価償却する場合(5年定額法の償却率は0.200)
各事業年度の減価償却費は取得価額1,000万円に償却率0.200を掛けた200万円です。ただし、機械装置は帳簿価額1円までしか減価償却できないので5年目終了時に帳簿価額1円が残ります。

事業年度が1年未満の場合などの減価償却限度額

・事業年度が1年未満の場合
償却限度額=事業年度が1年の場合の償却限度額×(事業年度の月数/12)

(例)期首に耐用年数5年の機械装置を1,000万円で取得して使用開始しました。定額法で減価償却する場合(5年定額法の償却率は0.200)。事業年度は6カ月間です
減価償却限度額は1,000万円×0.200×(6カ月/12カ月)=100万円

・事業年度の途中で取得した減価償却資産
償却限度額=期首からある場合の償却限度額×(事業の用に供した月数(※)/12)
(※)1カ月未満は切り上げます

(例)1月15日に耐用年数5年の機械装置を1,000万円で取得して使用開始しました。定額法で減価償却する場合(5年定額法の償却率は0.200)。事業年度は4月1日から3月31日です。
1月15日から3月31日は2カ月と17日ですが、端数は切り上げるので3か月と考えます。
したがって減価償却限度額は1,000万円×0.200×(3カ月/12カ月)=50万円

定率法

事業年度開始時の帳簿価額に償却率を掛けて減価償却費を計算する方法です。最初は減価償却費が大きいのですが、事業年度が進み帳簿価額が小さくなるにつれて減価償却費も小さくなっていくのが特徴です。

定率法の減価償却限度額(原則)

期首帳簿価額×償却率

ただし、上記の方法で計算した定率法の減価償却限度額が「取得価額×保証率」に満たない場合は次のように計算します。
改定取得価額(※)×改定償却率

(※)改定取得価額
初めて「期首帳簿価額×償却率<取得価額×保証率」となった時の帳簿価額

(償却率などは4.3償却率、改定償却率、保証率をご確認ください)

(例)期首に耐用年数5年の機械装置を1,000万円で取得して使用開始しました。定率法で減価償却する場合(償却率0.4000、保証率0.1080、改定償却率0.5000)
1年目から3年目は期首の帳簿価額に償却率を掛けて減価償却費を計算します。
4年目に「期首帳簿価額×償却率<取得価額×保証率」となりますので、4年目以降は改定取得価額216万円に改定償却率を掛けて減価償却限度額を計算します。

事業年度が1年未満の場合などの減償却限度額

・事業年度が1年未満の場合
償却限度額=事業年度が1年の場合の償却限度額×(事業年度の月数/12)

・事業年度の途中で取得した減価償却資産
償却限度額=期首からある場合の償却限度額×(事業の用に供した月数(※)/12)
(※)1カ月未満は切り上げます

償却率、改定償却率、保証率

償却率、改定償却率、保証率はeGOV:耐用年数省令の別表第七から別表第十で調べることができます。耐用年数20年までについては以下の表をご覧ください。

(参考資料)耐用年数20年までの償却率表

償却可能限度額

減価償却資産は必ずしも帳簿価額が0円になるまで減価償却できるわけではなく、法人税では帳簿価額が一定の金額に達するとそれ以上の減価償却はできないことになっています。

例えば建物や機械などの有形減価償却資産であれば帳簿価額として1円を残さないといけません。具体的に言いますと、100万円の有形減価償却資産を取得しても減価償却で損金に計上できるのは1円を残した999,999円までということです。

・有形減価償却資産、生物(坑道、リース資産を除く)
帳簿価額1円まで減価償却できます

・坑道、無形減価償却資産
帳簿価額0円まで減価償却できます

・リース資産
リース契約の残価保証額まで減価償却できます

減価償却限度額を超えて減価償却した場合

法人税で定められている減価償却限度額を超えて減価償却をしても減価償却限度額までしか損金にはなりません。

このように減価償却限度額を超えた行った減価償却費のことを減価償却超過額といい、減価償却超過額はその事業年度の次の事業年度に減価償却したものとみなします。

(例)取得価額100万円、耐用年数5年の機械を定額法で減価償却限度額を計算します。1年目に999,999円減価償却しました。
1年目の減価償却限度額は20万円ですので損金になるのは20万円で、799,999円は減価償却超過額として2年目減価償却したものとみなされます。
しかし2年目の減価償却限度額も20万円ですので、2年目の減価償却超過額599,999円はさらに3年目、4年目へと繰り越されていきます。

少額減価償却資産と一括償却資産

少額な減価償却資産や使用可能期間が短い減価償却資産は、通常の減価償却の方法に代えて簡便な方法で損金に算入することができます。

これらの減価償却資産についての具体的な取り扱いは2.4.3.1 少額減価償却資産と一括償却資産をご覧ください。

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法令等

この記事は2018年12月31日現在の法令等に基づいて書かれています。