2.4.3 減価償却資産の取得価額と償却費

法人が建物や機械などの減価償却資産を取得した場合には、取得にかかった費用の全額が取得した事業年度の損金になるわけではなく、いったん固定資産として帳簿に記帳した後、耐用年数にわたって少しずつ損金にしていきます。

減価償却資産とは?

減価償却資産になるもの

減価償却資産とは固定資産のうち時間の経過によって徐々に価値が減少する資産で、「有形減価償却資産」「無形減価償却資産」「生物」の三種類があり、固定資産として帳簿に記帳された後、使用期間する期間にわたって損金として認識していきます(減価償却)。

減価償却資産と減価償却費のイメージ(耐用年数4年、取得価額100万円の定額法)

減価償却資産にならないもの

減価償却資産には、有形減価償却資産、無形減価償却資産、生物の3種類がありますが、これらに該当するものであっても、少額なものや時間の経過に応じて価値が減少しないもの(土地、金地金、一定の美術品など)等は減価償却資産にはなりません。

減価償却資産にならないもの 取り扱い
取得価額が10万円未満のもの 取得価額全額が使用開始した事業年度の損金になります
使用可能期間が1年未満のもの
取得価額が10万円以上30万円未満のもの(※)
一括償却資産に該当するもの
一括償却資産として36か月間で償却します
時間の経過で価値が減少しないもの 減価償却できません
棚卸資産、建設(製造)中のもの 減価償却できません

(※)一定の要件を満たす青色申告者が取得するものに限ります

減価償却資産の取得価額

減価償却資産を取得した場合には、購入代金だけではなく取得するためにかかった付随費用(引取り運賃や荷役費など)も取得価額に含まれます。したがって、これらの付随費用も含めた取得価額が減価償却資産として帳簿に記帳され、耐用年数にわたって減価償却されることになります。

購入した資産

購入した減価償却資産の取得価額は、購入代金に購入のために要した費用、事業の用に供するために直接要した費用を加えた額になります。

(例)機械を100万円で購入し、引き取り運賃と設置費用に20万円かかった場合
引取運賃や設置費用は機械の取得価額に含まれます。したがって機械の取得価額は120万円になります。

自己で製造等した場合の取得価額

自己で製造、建設、製作した減価償却資産の取得価額は原材料費、労務費、経費に事業の用に供するために直接要した費用を加えた額になります。

取得価額に含めないことができる費用

減価償却資産の取得に付随して発生した費用は原則として取得価額に含まれますが、次のような費用は取得価額に含めないことが認められています。

取得価額に含めないことができる費用の例
不動産取得税や自動車取得税、事業所税、登録免許税、登記費用等
建物の建設等のために行った調査、測量などで計画の変更のために無駄になった費用
いったん締結した契約を解除して、別の減価償却資産の取得したことによる違約金
減価償却資産を取得するために借りた借入金の利子

減価償却限度額

各事業年度の減価償却費は法人税に定められた方法で計算した減価償却限度額までしか損金にすることができず、減価償却限度額を超えた部分は翌事業年度以降に繰り越して、減価償却不足額のある事業年度の損金になります。

減価償却限度額の計算には「定額法」「定率法」「生産高比例法」などの方法がありますが、ここでは代表的な方法として定額法と定率法について解説します。なお、減価償却資産であっても稼働休止中のものや建設中のものなど使用していないものは減価償却することができません。

定額法

原則

減価償却資産の耐用年数にわたって、各事業年度同じ金額を減価償却限度額とする方法です。各事業年度の減価償却限度額は「取得価額」に「定額法償却率」を乗じて計算します。

(例)3月決算の法人です。4月に新品の測定用工具を100万円で購入し、すぐに使用開始しました。減価償却限度額と同額を減価償却します(測定用工具の耐用年数は5年、定額法の償却率は0.200)。
減価償却費は次のように計算します。

減価償却費 減価償却後の帳簿価額
1年目 1,000,000円×0.200=200,000円 800,000円
2年目 1,000,000円×0.200=200,000円 600,000円
3年目 1,000,000円×0.200=200,000円 400,000円
4年目 1,000,000円×0.200=200,000円 200,000円
5年目 (償却前帳簿価額ー※1円)
200,000円ー1円=199,999円
1円

(※)有形固定資産は帳簿価額が1円になるまでしか減価償却できません

事業年度の途中で使用開始した減価償却資産

減価償却資産を事業年度の途中から使用開始した場合には、最初の事業年度の減価償却限度額は使用月数に応じて月数按分して計算します。

(例)3月決算の法人です。10月10日に新品の測定用工具を100万円で購入し、すぐに使用開始しました。減価償却限度額と同額を減価償却します(測定用工具の耐用年数は5年、定額法の償却率は0.200)。
1年目の使用期間は6カ月間ですので、減価償却費を月数按分して計算します。

減価償却費 減価償却後の帳簿価額
1年目 1,000,000円×0.200×6月/12月=100,000円 900,000円
2年目 1,000,000円×0.200=200,000円 700,000円
3年目 1,000,000円×0.200=200,000円 500,000円
4年目 1,000,000円×0.200=200,000円 300,000円 
5年目 1,000,000円×0.200=200,000円 100,000円 
6年目 (償却前帳簿価額ー※1円)
100,000円ー1円=99,999円
1円 

(※)有形固定資産は帳簿価額が1円になるまでしか減価償却できません

事業年度が1年未満の場合

事業年度が1年未満の場合には、取得価額に(定額法償却率×事業年度の月数/12)を乗じて減価償却限度額を計算します。なお、(定額法償却率×事業年度の月数/12)に少数点以下3位未満の端数が生じた場合には切り上げます。

(例)6月決算の法人です。7月に新品の測定用の工具を100万円で購入し、すぐに使用開始しましたが、2年目に決算を12月に変更しました。減価償却限度額と同額を減価償却します(測定用工具の耐用年数は5年、低額法の償却率は0.200)。
2年目の事業年度が6カ月間ですので次のように計算します。

減価償却費 減価償却後の帳簿価額
1年目 1,000,000円×0.200=200,000円 800,000円
2年目 (12月決算に変更したため、事業年度は6カ月間)
1,000,000円×(0.200×6月/12月)=100,000円
700,000円
3年目 1,000,000円×0.200=200,000円 500,000円
4年目 1,000,000円×0.200=200,000円 300,000円 
5年目 1,000,000円×0.200=200,000円 100,000円 
6年目 (償却前帳簿価額ー※1円)
100,000円ー1円=99,999円
1円 

(※)有形固定資産は帳簿価額が1円になるまでしか減価償却できません

定率法

原則

定率法は「期首の帳簿価額」に「定率法償却率」を乗じて減価償却費を計算する方法で、使用が進むにつれて減価償却費が減少する特徴があります。

なお、通常の減価償却費(「期首帳簿価額」×「定率法償却率」)が償却保証額(「取得価額」×「償却保証率」)を下回った場合には、「改定取得価額×改定償却率」によって減価償却費を計算します。

(用語の意味)
償却保証額

「取得価額×償却保証率」で計算した金額です。通常の減価償却費が償却保証額を下回る場合には、「改定取得価額×改定償却率」によって減価償却限度額を計算します。
改定取得価額
初めて「通常の減価償却費<償却保証額」となったときの帳簿価額をいいます。
(例)3月決算の法人です。4月に新品の測定用の工具を100万円で購入し、すぐに使用開始しました。減価償却限度額と同額を減価償却します(測定用工具の耐用年数は5年、定率法償却率は0.400、改定償却率は0.500、償却保証率0.10800)。
帳簿価額に定率法償却率を乗じて減価償却費を計算しますが、通常の減価償却費が償却保証額10.8万円(=取得価額100万円×償却保証率0.10800)を下回った場合には、以降は改定取得価額×改定償却率によって減価償却費を計算します。

減価償却費 減価償却後の帳簿価額
1年目 1,000,000円×0.400=400,000円 600,000円
2年目 600,000円×0.400=240,000円 360,000円
3年目 360,000円×0.400=144,000円 216,000円
4年目 216,000×0.400=86,400円<108,000円
(したがって、
改定取得価額×改定償却率で計算)
216,000円×0.500=144,000円
108,000円
5年目 (償却前帳簿価額ー※1円)
108,000円ー1円=107,999円
1円

(※)有形固定資産は帳簿価額が1円になるまでしか減価償却できません

事業年度の途中で使用開始した減価償却資産

減価償却資産を事業年度の途中から使用開始した場合には、最初の年の減価償却限度額は使用月数に応じて月数按分して計算します。

(例)3月決算の法人です。10月10日に新品の測定用の工具を100万円で購入し、すぐに使用開始しました。減価償却限度額と同額を減価償却します(測定用工具の耐用年数は5年、定率法償却率は0.400、改定償却率は0.500、償却保証率0.10800)。
1年目の使用期間は6カ月間ですので、減価償却費を月数按分して計算します。また、通常の減価償却費が償却保証額10.8万円(=取得価額100万円×償却保証率0.10800)を下回る場合には、以降は改定取得価額×改定償却率によって減価償却費を計算します。

減価償却費 減価償却後の帳簿価額
1年目 1,000,000円×0.400×6/12=200,000円 800,000円
2年目 800,000円×0.400=320,000円 480,000円
3年目 480,000円×0.400=192,000円 288,000円
4年目 288,000円×0.400=115,200円 172,800円
5年目 172,800×0.400=69,120円<108,000円
(したがって、改定取得価額×改定償却率で計算)
172,800円×0.500=86,400円
86,400円
6年目 (償却前帳簿価額ー※1円)
86,400円ー1円=86,399円
1円

(※)有形固定資産は帳簿価額が1円になるまでしか減価償却できません

事業年度が1年未満の場合

事業年度が1年未満の場合、減価償却限度額は次のように計算します。

(例)6月決算の法人です。7月に新品の測定用の工具を100万円で購入し、すぐに使用開始しましたが、2年目に決算を12月に変更しました(2年目の事業年度は6カ月間)。減価償却限度額と同額を減価償却します(測定用工具の耐用年数は5年、定率法償却率は0.400、改定償却率は0.500、償却保証率0.10800)。
2年目の事業年度が6カ月間ですので、減価償却費を月数按分して計算します。また、通常の減価償却費が償却保証額10.8万円(=取得価額100万円×償却保証率0.10800)を下回る場合には、以降は改定取得価額×改定償却率によって減価償却費を計算します。

減価償却費 減価償却後の帳簿価額
1年目 1,000,000円×0.400=400,000円 600,000円
2年目 (12月決算に変更したため、事業年度は6カ月間)
600,000円×(0.400×6月/12月)=120,000円
480,000円
3年目 480,000円×0.400=192,000円 288,000円
4年目 288,000円×0.400=115,200円 172,800円 
5年目 172,800×0.400=69,120円<108,000円
(したがって、改定取得価額×改定償却率で計算)
172,800円×0.500=86,400円
86,400円 
6年目 (償却前帳簿価額ー※1円)
86,400円ー1円=86,399円
1円 

(※)有形固定資産は帳簿価額が1円になるまでしか減価償却できません

償却方法の選択

減価償却限度額の計算方法は、減価償却資産の区分(建物、建物附属設備、構築物など)に応じて次のとおり決められています。一つの減価償却資産に複数の償却方法がある場合には、その中からどの方法を採用するかを税務署長に届け出ないといけません。届け出ない場合は、青字の償却方法(法定償却方法)で減価償却限度額を計算します。

ただし、これら以外にも特別な償却方法が認められる場合があります。

・2016年4月以降に取得した減価償却資産の償却方法

減価償却資産の区分 償却方法
1. 建物 定額法
2. 建物附属設備 定額法
3. 構築物
定額法
4. その他の有形減価償却資産
(鉱業用減価償却資産とリース資産を除く)

 定率法、定額法
5. 鉱業用減価償却資産 建物、建物附属設備、構築物 (2016年4月以降に取得したもの) 生産高比例法、定額法
 その他 生産高比例法、定額法、定率法
6. 無形減価償却資産(鉱業権を除く)、生物
定額法
7. 鉱業権
 生産高比例法定額法
8. リース資産
 リース期間定額法

償却可能限度額

減価償却資産には資産の種類ごとに減価償却できる限度額が決められており、例えば有形減価償却資産であれば「取得価額-1円」まで(帳簿価額が1円になるまで)しか減価償却することができません。

・2007年4月以降に取得した減価償却資産の償却可能限度額

減価償却資産の種類 償却可能限度額
有形減価償却資産
(坑道、リース資産を除く)
取得価額-1円
(帳簿価額が1円になるまで)
生物 取得価額-1円
(帳簿価額が1円になるまで)
坑道 取得価額全額
(帳簿価額が0円になるまで)
無形減価償却資産 取得価額全額
(帳簿価額が0円になるまで)
リース資産 取得価額-残価保証額
(帳簿価額が残価保証額になるまで)

減価償却限度額を超えて減価償却した場合

減価償却限度額を超えて減価償却した場合には、減価償却超過額は次の事業年度に繰り越し、減価償却不足額がある事業年度の損金になります。

(例)取得価額100万円、耐用年数5年の機械を定額法で減価償却限度額を計算します。1年目に999,999円減価償却しました。
1年目の減価償却限度額は20万円ですので799,999円は減価償却超過額として2年目以降に繰り越します。

減価償却費 減価償却限度額 減価償却超過額 損金算入額
増減 残高
1年目 999,999円 200,000円
(=1,000,000円×0.200)
+799,999円 799,999円 200,000円
2年目 0円 200,000円
(=1,000,000円×0.200)
-200,000円 599,999円 200,000円
3年目 0円 200,000円
(=1,000,000円×0.200)
-200,000円 399,999円 200,000円
4年目 0円 200,000円
(=1,000,000円×0.200)
-200,000円 199,999円 200,000円
5年目 0円 199,999円
(=200,000円-1円)
-199,999円 0円 199,999円

少額減価償却資産と一括償却資産

少額な減価償却資産や使用可能期間が短い減価償却資産は、通常の減価償却の方法に代えて簡便な方法で損金に算入することができます。

これらの減価償却資産についての具体的な取り扱いは少額減価償却資産と一括償却資産をご覧ください。

関連記事

2.1 法人税の計算の全体像
2.4.3.1 少額減価償却資産と一括償却資産とは
2.4.3.2 中古で取得した減価償却資産の償却
2.4.3.3 資本的支出と修繕費
2.11 特別償却と特別税額控除とは

法令等

この記事は2020年1月31日現在の法令等に基づいて書かれています。また、この記事は税法学習者に税法の一般的な取り扱いを解説するものですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。

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