減価償却資産であっても少額なものや使用可能期間が短いものは、通常の減価償却ではなく「少額減価償却資産」又は「一括償却資産」として簡便な方法で取得価額を損金にすることが認められています。
目次
簡便な計算
減価償却資産は耐用年数にわたって減価償却していくのが原則ですが、減価償却資産の「取得価額」や「使用可能期間」によっては、簡便な計算によって取得価額を損金にすることも認められています。
少額又は使用可能期間1年未満の減価償却資産
取得した減価償却資産の使用可能期間が1年未満又は取得価額が10万円未満の場合には、その減価償却資産を事業の用に供した事業年度に取得価額の全額を損金にすることができます。
ただし、この取り扱いは法人の帳簿で取得価額の全額を損金経理(費用又は損失として経理処理)している場合に限り適用できます。
(条件1)半年ごとに新品に買い替えている(使用可能期間1年未満)
(条件2)使用開始とともに全額を損金経理した
→機械の使用を開始した事業年度に取得価額の全額を損金にすることができます。
(条件1)5万円で購入した(取得価額10万円未満)
(条件2)固定資産に計上した(損金経理していない)
→固定資産に計上しているため減価償却によって損金に算入します。
使用可能期間1年未満
「使用可能期間が1年未満かどうか?」については、その業種(例えば、紡績業、鉄鋼業、建設業等の業種)で一般的に消耗性の資産として認識されているもののうち、その法人の過去3年間の平均的な使用状況や補充状況等から判断します。
10万円未満
「取得価額が10万円未満かどうか?」については、例えば機械装置であれば1台又は1基ごと、工具や器具備品については1個、1組又は1揃いごとに判定します。ただし、枕木や電柱等のように単独では使えないものは一つの工事ごとに判定します。
なお、消費税を税込み経理で記帳している場合には税込み額で、税抜き経理で記帳している場合には税抜き額で判定します。
テーブルとソファ4脚で一組の応接セットですので10万円未満かどうかは、応接セット単位で判定します。一組12万円ですので少額の減価償却資産には該当しません。
一括償却資産
取得価額が20万円未満の減価償却資産を事業の用に供した場合には、それらの資産の全部又は一部を一括し、次の計算式で計算した損金算入限度額までを損金に算入できます。ただし、損金に算入できる金額は損金経理している金額に限ります。
使用開始時期 | 使用開始した資産 | 取得価額 |
2019年4月 | コンピュータ×1台 | 15万円 |
2019年12月 | オフィス用の備品×1台 | 30万円 |
2020年1月 | テレビ×1台 | 12万円 |
(一括償却資産の判定)
コンピュータ: 15万円<20万円 一括償却資産になります
オフィス用の備品: 30万円≧20万円 一括償却資産にはなりません
テレビ: 12万円<20万円 一括償却資産になります
(一括償却資産の損金算入限度額)
損金算入限度額=(コンピュータ15万円+テレビ12万円)×12月/36月=9万円
損金算入限度超過額
一括償却資産の損金算入限度額を超えて損金経理した場合には、損金算入限度額を超える部分の金額は翌事業年度に損金経理したものとみなします。
使用開始時期 | 使用開始した資産 | 取得価額 |
2019年4月 | コンピュータ | 15万円 |
2020年1月 | テレビ | 12万円 |
(一括償却資産の損金算入限度額)
損金算入限度額=(コンピュータ15万円+テレビ12万円)×12月/36月=9万円
(2019年度の損金算入限度超過額)
損金算入限度超過額=27万円-9万円=18万円
20万円未満の判定
「取得価額が20万円未満かどうか?」については、例えば機械装置であれば1台又は1基ごと、工具や器具備品については1個、1組又は1揃いごとに判定します。ただし、枕木や電柱等のように単独では使えないものは一つの工事ごとに判定します。
なお、消費税を税込み経理で記帳している場合には税込み額で、税抜き経理で記帳している場合には税抜き額で判定します。
中小企業者等の特例
取り扱い
法人が取得価額30万円未満の減価償却資産を取得して、かつ、次の全ての要件を満たす場合には、取得価額の全額を事業の用に供した事業年度の損金にすることができます。
次のいずれかの要件を満たす法人をいいます。ただし、2019年4月以降に開始する事業年度からは過去3年間の平均所得金額が15億円を超える法人を除きます。
中小企業者の要件(次のいずれか) |
資本金又は出資金が1億円以下の法人(ただし以下のものを除く) ・同一の大規模法人に発行済株式等の2分の1以上を所有されている法人 ・複数の大規模法人に発行済株式等の3分の2以上を所有されている法人 |
資本又は出資がなく、かつ、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人 |
特例の限度額
30万円未満の判定
「取得価額が30万円未満かどうか?」については、例えば機械装置であれば1台又は1基ごと、工具や器具備品については1個、1組又は1揃いごとに判定します。ただし、枕木や電柱等のように単独では使えないものは一つの工事ごとに判定します。
なお、消費税を税込み経理で記帳している場合には税込み額で、税抜き経理で記帳している場合には税抜き額で判定します。
選択可能な方法のまとめ
法令等
この記事は2020年4月1日現在の法令等に基づいて書かれています。また、この記事は税法学習者に税法の一般的な取り扱いを解説するものですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。