法人税における有価証券の取り扱い

株券や社債券等の有価証券を保有する会社も少なくありませんが、保有する有価証券の取得価額や期末評価額をどのように計算するのか法人税のルールを解説します。

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有価証券の範囲

一般的に有価証券といえば株券や社債券などがありますが、法人税でいうところの有価証券の範囲には、株券や社債券など金融証券取引法で有価証券として定義されているもの加えて、法人税が独自に有価証券として定義したものを含みます。

有価証券の取得価額

有価証券の取得価額は「購入」や「金銭の払い込み」など、どのように取得したかに応じて、それぞれ次のように計算します。

一単位当たりの帳簿価額の計算方法

同じ銘柄の有価証券を異なる単価で取得している場合には、一単位当たりの取得価額をどのように計算するかによって有価証券の売買損益の金額が異なってきます。

法人税では同じ銘柄の有価証券を異なる単価で取得した場合には、一単位当たりの帳簿価額(平均単価)は移動平均法又は総平均法のうち、法人が税務署長に届け出た方法で計算することになっています。

移動平均法

同じ銘柄の有価証券を新たに取得する都度、一単位当たりの帳簿価額(平均単価)を計算し直す方法です。

(例)次のようにA株式会社の株式を保有している場合。

日付 取引 取引内容 購入金額 譲渡金額
期首 前期繰越 @8,000円×500株(400万円)
4/30 購入 @11,000円×1,000株(1,100万円) 1,100万円
7/31 購入 @12,000円×1,500株(1,800万円) 1,800万円
10/31 譲渡 @15,000円×2,000株(3,000万円) 3,000万円
1/31 購入 @14,000円×1,000株(1,400万円) 1,400万円

一株あたりの帳簿価額(平均単価)と譲渡損益の計算:
移動平均法では、下表のように有価証券を取得する都度平均単価を計算します。この方法で計算すると10/31譲渡時の平均単価(帳簿価額)は11,000円になるため、譲渡益は800万円((譲渡単価15,000円ー平均単価11,000円)×2,000株)になります。

日付
取引
取引内容
保有する有価証券の帳簿価額
帳簿価額合計(a) 保有株数(b) 平均単価(a)/(b)
期首 前期繰越 400万円 500株 8,000円
4/30 購入 @11,000円×1,000株 1,500万円
1,500株 10,000円
7/31 購入 @12,000円×1,500株 3,300万円
3,000株 11,000円
10/31 譲渡 @15,000円×2,000株 1,100万円
(11,000円×1,000株)
1,000株 11,000円
1/31 購入 @14,000円×1,000株 2,500万円
2,000株 12,500円

期末評価前の帳簿価額:
移動平均単価12,500円×2,000株=2,500万円

総平均法

同じ銘柄の有価証券について、前期繰越分と当期取得分の全ての平均単価を一単位当たりの帳簿価額とする方法です。

(例)次のようにA株式会社の株式を保有している場合。

日付 取引 取引内容 購入金額 譲渡金額
期首 前期繰越 @8,000円×500株(400万円)
4/30 購入 @11,000円×1,000株(1,100万円) 1,100万円
7/31 購入 @12,000円×1,500株(1,800万円) 1,800万円
10/31 譲渡 @15,000円×2,000株(3,000万円) 3,000万円
1/31 購入 @14,000円×1,000株(1,400万円) 1,400万円

一株あたりの帳簿価額(平均単価)と譲渡損益の計算:
総平均法では、下表のように前期から繰り越した株式と当期に新たに取得した株式の総平均単価を一株あたりの帳簿価額にします。

日付 取引 取得価額(a) 購入金額(b) 総平均単価(a)/(b)
期首 前期繰越 400万円 500株
4/30 購入 1,100万円 1,000株
7/31 購入 1,800万円 1,500株
1/31 購入 1,400万円 1,000株
合計 4,700万円 4,000株 11,750円

総平均単価は11,750円になりますので、10/31の譲渡時損益は(譲渡単価15,000円-平均単価11,750円)×2,000株=650万円になります。
期末評価前の帳簿価額:
総平均単価11,750円×2,000株=2,350万円

所轄税務署長への届出

新たに有価証券を取得した場合には、一単位あたりの帳簿価額を移動平均法と総平均法のいずれで計算するかを納税地を所轄する税務署長に届け出ないといけません。届出なかった場合には、移動平均法によって一単位あたりの帳簿価額を計算します。

有価証券の期末評価方法

法人が各事業年度の末に保有する有価証券については、その有価証券の区分に応じて時価法又は原価法で期末評価します。

区分 期末評価方法
売買目的有価証券 時価法
(銘柄ごとに期末時価で評価)
売買目的外有価証券 満期保有目的有価証券 原価法(※)
(期末の帳簿価額で評価)
その他の有価証券

(※)償還期限と償却期間が決まっている有価証券(一定の新株予約権付社債等を除く)は償却原価法

時価法

銘柄ごとに事業年度末の時価で有価証券を評価する方法です。この方法では移動平均法又は総平均法で計算した事業年度末の帳簿価額と時価に差異がある場合には、その差異を評価益(益金)又は評価損(損金)として認識します。

有価証券の区分 事業年度末の評価額(時価)
取引所売買有価証券 金融証券取引所によって公表された事業年度末の最終売買価格
店頭売買有価証券及び取扱有価証券 金融商品取引法によって公表された事業年度末の最終売買価格
その他価格公表有価証券 価格公表者によって公表された事業年度末の最終売買価格
上記以外の有価証券 事業年度末の帳簿価額
(償却期限と金額が決まってる場合は償却原価法を適用した金額)

なお、各事業年度末に評価益又は評価損として認識された金額は、翌事業年度に取り消します(損金又は益金にします)。

(例)売買目的で株式を1,000株保有しています。一株あたりの帳簿価額1,000円、事業年度末の取引所の最終売買価額は1,200円でした。
事業年度末の評価額: 時価1,200円×1,000株=1,200,000円
評価益: 評価額(時価)1,200,000円-帳簿価額1,000円×1,000株=200,000円

原価法

移動平均法又は総平均法で計算した一株当たりの帳簿価額を、そのまま期末評価額とする方法です。

(例)長期保有目的の株式を1,000株保有しています。一株あたりの帳簿価額1,000円、事業年度末の取引所の最終売買価額は1,200円でした。
事業年度末の評価額:帳簿価額1,000円×1,000株=1,000,000円

償却原価法

売買目的外有価証券のうち償還期限と償還金額が決まっているものの期末評価額は、償却原価法(帳簿価額と償還金額との差異を期間の応じて調整していく方法)で計算します。

償還金額が帳簿価額よりも大きい場合は益金、小さい場合は損金が発生します。

・償還金額>帳簿価額の場合

・償還金額<帳簿価額の場合

法令等

この記事は2020年4月1日現在の法令等に基づいて書かれています。また、この記事は税法学習者に税法の一般的な取り扱いを解説するものですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。

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