2.4.2 有価証券の取り扱い

株券や社債券等の有価証券を保有する会社も少なくありませんが、法人税では有価証券の取得価額や期末評価額の計算方法についてルールのを定めています。

有価証券の範囲

一般的に有価証券といえば株券や社債券を思い浮かべるかもしれませんが、株券や社債券は金融証券取引法で有価証券として定義されているものです。これに対して法人税では、金融証券取引法で定義された有価証券に加えて、法人税が独自に有価証券として定義しているものもあるため、その範囲が少し広くなっています。

有価証券の範囲(主なもの)
金融商品取引法で定めるもの 法人税施行令で定めているもの
 (1)国債証券  (1)譲渡性預金の預金証書
 (2)地方債証券  (2)合名会社、合資会社、合同会社の社員の持分
 (3)社債券  (3)協同組合等の組合員又は会員の持分
 (4)株券  
 (5)新株予約権証券  
 (6)投資信託の受益証券  
 (7)貸付信託の受益証券  

有価証券の取得価額

有価証券を取得した場合、購入や金銭の払い込み等どのように取得したかに応じて、それぞれ次のように取得価額を計算します。

どのように取得したか 取得価額
 購入した有価証券
(信用取引よる現物の取得等を除く)
 購入代価+手数料等の購入費用
(通信費、名義書換料は取得価額に含めず損金にできる)
 金銭の払い込みで取得した有価証券
(適格現物出資などで取得した有価証券を除く)
払い込んだ金額
金銭以外の資産の給付で取得した有価証券
(適格現物出資などで取得した有価証券を除く)
給付した資産の時価
 株式等の無償交換で取得した株式、新株予約権
(新株予約券社債の新株予約権等は除く)
 0円

一単位当たりの帳簿価額の計算方法

同じ銘柄の有価証券を異なる単価で追加取得した場合、一単位当たりの帳簿価額(平均単価)は移動平均法または総平均法のうち税務署長に届け出た方法で計算します。

移動平均法

同じ銘柄の有価証券を取得する都度、一単位当たりの帳簿価額(平均単価)を再計算する方法です。

(例)次のようにA株式会社の株式保有している場合。

日付 取引 取引内容 購入金額 譲渡金額
期首 前期繰越 @8,000円×500株(400万円)
4/30 購入 @11,000円×1,000株(1,100万円) 1,100万円
7/31 購入 @12,000円×1,500株(1,800万円) 1,800万円
10/31 譲渡 @15,000円×2,000株(3,000万円) 3,000万円
1/31 購入 @14,000円×1,000株(1,400万円) 1,400万円

一株あたりの帳簿価額(平均単価)と譲渡損益の計算:
移動平均法では、下表のように有価証券を取得する都度計算した平均単価を計算します。この方法で計算すると、10/31の譲渡時の平均単価(帳簿価額)は11,000円になりますので、(譲渡単価15,000円ー平均単価11,000円)×2,000株=800万円が譲渡益になります。

日付
取引
取引内容
帳簿価額の計算
帳簿価額合計(a) 保有株数(b) 平均単価(a)/(b)
期首 前期繰越 400万円 500株 8,000円
4/30 購入 @11,000円×1,000株 1,500万円
1,500株 10,000円
7/31 購入 @12,000円×1,500株 3,300万円
3,000株 11,000円
10/31 譲渡 @15,000円×2,000株 1,100万円
1,000株 11,000円
1/31 購入 @14,000円×1,000株 2,500万円
2,000株 12,500円
期末 翌期繰越 2,500万円 2,000株 12,500円

総平均法

同じ銘柄の有価証券について、前期繰越分と当期取得分の全ての平均単価を一単位当たりの帳簿価額とする方法です。

(例)次のようにA株式会社の株式保有している場合。

日付 取引 取引内容 購入金額 譲渡金額
期首 前期繰越 @8,000円×500株(400万円)
4/30 購入 @11,000円×1,000株(1,100万円) 1,100万円
7/31 購入 @12,000円×1,500株(1,800万円) 1,800万円
10/31 譲渡 @15,000円×2,000株(3,000万円) 3,000万円
1/31 購入 @14,000円×1,000株(1,400万円) 1,400万円

一株あたりの帳簿価額(平均単価)と譲渡損益の計算:
総平均法では、下表のように、前期から繰り越した株式と当期に新たに取得した株式の総平均単価を一株あたりの帳簿価額にします。

・総平均単価の計算

日付 取引 取得価額(a) 購入金額(b) 総平均単価(a)/(b)
期首 前期繰越 400万円 500株
4/30 購入 1,100万円 1,000株
7/31 購入 1,800万円 1,500株
1/31 購入 1,400万円 1,000株
合計 4,700万円 4,000株 11,750円

このケースの場合、総平均単価は11,750円になりますので、10/31の譲渡時損益は(譲渡単価15,000円ー平均単価11,750円)×2,000株=650万円になります。

所轄税務署長への届出

新たに有価証券を取得した場合、一単位あたりの帳簿価額を移動平均法で計算するか、それとも総平均法で計算するかを納税地を所轄する税務署長に届け出ないといけません。届出なかった場合は、移動平均法によって一単位あたりの帳簿価額を計算することになります。

有価証券の期末評価方法

法人が各事業年度の末に保有する有価証券については、その有価証券の区分に応じて、それぞえ価法又は原価法で、有価証券の期末評価額を計算します。

区分 期末評価方法
売買目的有価証券 時価法
(銘柄ごとに期末時価で評価)
売買目的外有価証券 満期保有目的有価証券 原価法(※)
(期末の帳簿価額で評価)
その他の有価証券

(※)償還期限と償却期間が決まっている有価証券(一定の新株予約権付社債等を除く)は償却原価法

時価法

銘柄ごとに事業年度末の時価で有価証券を評価する方法です。移動平均法又は総平均法で計算した期末の帳簿価額と事業年度末の時価の差額を、評価益(益金)又は評価損(損金)として認識します。

有価証券の区分 事業年度末の評価額(時価)
取引所売買有価証券 金融証券取引所によって公表された事業年度末の最終売買価格
店頭売買有価証券及び取扱有価証券 金融商品取引法によって公表された事業年度末の最終売買価格
その他価格公表有価証券 価格公表者によって公表された事業年度末の最終売買価格
上記以外の有価証券 事業年度末の帳簿価額
(償却期限と金額が決まってる場合は償却原価法を適用した金額)

なお、各事業年度末に評価益又は評価損として認識された金額は、翌事業年度に取り消します(損金又は益金にします)

(例)売買目的で株式を1,000株保有しています。一株あたりの帳簿価額1,000円、事業年度末の取引所の最終売買価額は1,200円でした。
事業年度末の評価額:
時価1,200円×1,000株=1,200,000円
評価益:期末評価額1,200,000円ー1,000円×1,000株=200,000円(益金)
評価益200,000万円は翌事業年度の損金になります。

原価法

移動平均法又は総平均法で計算した一株当たりの帳簿価額を、そのまま期末評価額とする方法です。時価法とは違って評価損益が発生しません。

(例)長期保有目的の株式を1,000株保有しています。一株あたりの帳簿価額1,000円、事業年度末の取引所の最終売買価額は1,200円でした。
事業年度末の評価額:一株当たりの帳簿価額1,000円×1,000株=1,000,000円

償却原価法

売買目的外有価証券で、償還期限と償還金額が決まっているものについて、帳簿価額と償還金額との差額を期間の応じて調整していく方法です。償還金額が帳簿価額よりも大きい場合は益金、小さい場合は損金が発生します。

・償還金額>帳簿価額の場合

・償還金額<帳簿価額の場合

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2.1 法人税の計算の全体像

法令等

この記事は2018年12月31日現在の法令等に基づいて書かれています。また、記事の内容は税法の一般的な取り扱いについての解説ですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。