2.4.1 棚卸資産の取り扱い

卸売業や小売業、製造業などのように棚卸資産を有する事業の所得金額を計算する場合、売上原価の計算はとても重要です。ここでは法人税で売上原価をどのように計算するかを解説します

棚卸資産と売上原価の関係

法人税では、商品や製品といった棚卸資産については、仕入れた事業年度ではなく販売した事業年度の売上原価として損金になるため、次の計算式で売上原価の金額を計算します。

その結果、棚卸資産の取得価額(当期仕入高)や期末残高(棚卸資産の評価額)は売上原価の金額に直結することになり、正しく計算することは法人税の計算上とても大切になります。

棚卸資産とは?

所得税では棚卸資産を次の(1)~(7)のものとして定義しています。

棚卸資産
 (1)商品・製品
 (2)半製品
 (3)仕掛品(半成工事を含む)
 (4)主要原材料
 (5)補助原材料
 (6)消耗品で貯蔵中のもの
 (7)その他これらに準ずる資産

棚卸資産の取得価額

棚卸資産の取得価額といえば購入先に支払った代金や製造原価を思い浮かべるかもしれませんが、法人税ではそれだけではなく棚卸資産の取得に付随して発生した費用を含めて取得価額を計算します。

購入した棚卸資産の取得価額

購入した棚卸資産の取得価額は購入代価に棚卸資産を消費又は販売するために直接要した費用を加えた額として計算します。

(例)商品の期首残高は20万円、期末残高が10万円、当期中の仕入額は購入先に支払った代金が50万円とその引取運賃10万円でした。
棚卸資産の取得価額:
購入代価50万円+引取運賃10万円=60万円
売上原価:
期首残高20万円+当期仕入(取得価額)60万円ー期末残高10万円=70万円

製造した棚卸資産の取得価額

自己で製造した棚卸資産の取得価額は、原材料費、労務費、経費に、棚卸資産を消費又は販売するために直接要した費用を加えた額になります。

取得価額に含めないことができるもの

少額ならば取得価額に含めないことができるもの

棚卸資産の取得に付随する費用は本来取得価額に含まれるため、棚卸資産を譲渡等したときの損金になりますが、次の費用については合計額が購入代価の概ね3%以内の場合は取得価額に含めないで発生時の損金にすることができます。

少額ならば取得価額に含めないことができるもの
 (1)買入事務、検収、整理、選別、手入れ等に要した費用の額
 (2)販売所等から販売所等へ移管するために要した運賃、荷造費等の費用の額
 (3)特別の時期に販売するなどのため、長期にわたって保管するために要した費用の額

なお、3%以内かどうかの判定は、事業年度ごとに、かつ種類等が同じ棚卸資産ごとに分けた合計で判定することもできます。

金額に関わらず取得価額に含めないことができるもの

次のような費用については、金額に関わらず棚卸資産の取得価額に含めないで発生時の損金にすることができます。

金額に関わらず取得価額に含めないことができるもの
 (1)不動産取得税、地価税、固定資産税、都市計画税、特別土地保有税
 (2)登録免許税、登記又は登録の費用
 (3)借入金の利子
(例)海外から製品を1,000万円で輸入して関税100万円を納税しました。この他に、買入のための事務手数料が10万円かかりました。
関税100万円:
購入価額に含まれる
事務手数料10万円:
購入代価の3%以内のため取得価額に含めないことができる

棚卸資産の評価方法

法人税では棚卸資産の年末評価方法について、納税者が6種類の原価法と低価法から選択することを認めており、いずれの方法を採用するかによって売上原価の金額が変わってきます。

6種類の原価法 低価法
個別法 低価法
先入先出法
総平均法
移動平均法
最終仕入原価法
売価還元法

原価法

個別法

個別法は棚卸資産一つ一つを個別に管理して、それぞれの取得価額を期末評価額とする方法です。不動産や貴金属のように一つ一つ個別に管理される棚卸資産に適用できる方法で、大量に取引される(規格によって価格が決められる)棚卸資産には使えません。

(例)ダイヤモンドを取り扱う宝石店で、当事業年度中のダイヤモンドの増減は以下のとおりでした(前期からの在庫の繰越しはありません)

日付 種類 内容 売上金額 仕入金額
4/30 仕入 ダイヤモンドA 1,200,000円
7/31 仕入 ダイヤモンドB 1,100,000円
10/31 売上 ダイヤモンドB 1,500,000円
1/31 仕入 ダイヤモンドC 800,000円

(解答)
期末にダイヤモンドA(1,200,000円)、C(800,000円)が在庫として残っているので、期末棚卸残高は2,000,000円です。

先入先出法

先入先出法は先に仕入れたものから先に売れたと考えて期末評価額を計算する方法で、期末近くに仕入れたものが期末棚卸残高として残っていると考えます。

先入先出法では物価上昇時には期末棚卸残高が大きくなり、売上原価が小さくなるという特徴があります。

(例)大量生産のA商品を取り扱っています。当事業年度中のA商品の増減は以下のとおりでした。

日付 種類 内容 売上金額 仕入金額 在庫数量
期首 在庫残 @110円×10,000個 10,000個
4/30 仕入 @100円×10,000個 1,000,000円 20,000個
7/31 仕入 @95円×20,000個 1,900,000円 40,000個
10/31 売上 @150円×30,000個 4,500,000円 10,000個
1/31 仕入 @115円×20,000個 2,300,000円 30,000個
期末 在庫残 @?円×30,000個 30,000個

期末に30,000個の在庫が残っていますが、期末近くに仕入れたものが残っていると考えるので、期末在庫は以下のとおり3,250,000円になります。

期末在庫 単価 在庫数量 在庫金額
7/31仕入分 @95円 10,000個 950,000円
1/31仕入分 @115円 20,000個 2,300,000円
合計 30,000個 3,250,000円

総平均法

総平均法は棚卸資産の平均取得単価によって棚卸資産を期末評価する方法です。

期末棚卸残高は平均取得単価×期末数量で計算します。

(例)大量生産のA商品を取り扱っています。当事業年度中のA商品の増減は以下のとおりでした。

日付 種類 内容 売上金額 仕入金額 在庫数量
期首 在庫残 @110円×10,000個 10,000個
4/30 仕入 @100円×10,000個 1,000,000円 20,000個
7/31 仕入 @95円×20,000個 1,900,000円 40,000個
10/31 売上 @150円×30,000個 4,500,000円 10,000個
1/31 仕入 @115円×20,000個 2,300,000円 30,000個
期末 在庫残 @?円×30,000個 30,000個

・総平均単価の計算
期首在庫を含めて年間の平均仕入単価を計算します。
総平均単価:合計仕入金額6,300,000円÷合計仕入数量60,000個=105円

仕入日 仕入単価 仕入数量 仕入金額 総平均単価
期首残 @110円 10,000個 1,100,000円
4/30 @100円 10,000個 1,000,000円
7/31 @95円 20,000個 1,900,000円
1/31 @115円 20,000個 2,300,000円
合計 60,000個 6,300,000円 6,300,000円÷60,000個=@105円

・期末在庫評価額
期末在庫数30,000個×総平均単価105円=3,150,000円

移動平均法

移動平均法は棚卸資産を取得するたびに平均取得単価を計算して棚卸資産を評価する方法です。

(例)大量生産のA商品を取り扱っています。当事業年度中のA商品の増減は以下のとおりでした。

日付 種類 内容 売上金額 仕入金額 在庫数量
期首 在庫残 @110円×10,000個 10,000個
4/30 仕入 @100円×10,000個 1,000,000円 20,000個
7/31 仕入 @95円×20,000個 1,900,000円 40,000個
10/31 売上 @150円×30,000個 4,500,000円 10,000個
1/31 仕入 @115円×20,000個 2,300,000円 30,000個
期末 在庫残 @?円×30,000個 30,000個

・移動平均単価の計算
期首在庫が1,100,000円(10,000個)のため、期首の移動平均単価は1,100,000円÷10,000個=110円です。次に4/30仕入後には在庫が2,100,000円(20,000個)になるため、移動平均単価は2,100,000円÷20,000個=105円になります。同様の計算を繰り返していくと、期末の移動平均単価は110円と計算されます。

日付 種類 内容 在庫金額(a) 在庫数量(b) 移動平均単価
(a)/(b)
期首 在庫残 @110円×10,000個 1,100,000円 10,000個 @110円
4/30 仕入 @100円×10,000個 2,100,000円 20,000個 @105円
7/31 仕入 @95円×20,000個 4,000,000円 40,000個 @100円
10/31 売上 @150円×30,000個 1,000,000円 10,000個 @100円
1/31 仕入 @115円×20,000個 3,300,000円 30,000個 @110円

・期末在庫評価額
在庫数30,000個×移動平均単価110円=3,300,000円

最終仕入原価法

事業年度の最後に取得したときの単価で棚卸資産を評価する方法です。最終仕入原価法では最後に取得した時の単価が大きく棚卸資産の評価額に影響すします。

(例)大量生産のA商品を取り扱っています。当事業年度中のA商品の増減は以下のとおりでした。

日付 種類 内容 売上金額 仕入金額 在庫数量
期首 在庫残 @110円×10,000個 10,000個
4/30 仕入 @100円×10,000個 1,000,000円 20,000個
7/31 仕入 @95円×20,000個 1,900,000円 40,000個
10/31 売上 @150円×30,000個 4,500,000円 10,000個
1/31 仕入 @115円×20,000個 2,300,000円 30,000個
期末 在庫残 @?円×30,000個 30,000個

期末棚卸残高は、最終仕入単価(1/31仕入分の単価)115円に期末在庫30,000個を掛けて3,450,000円と計算します。

売価還元法

期末棚卸資産の通常販売価額の総額に原価率を乗じて評価する方法です。原価率は次のように計算します。

(例)大量生産のA商品を取り扱っています。当事業年度中のA商品の増減は以下のとおりでした。A商品の通常の販売価額は1個150円です。

日付 種類 内容 売上金額 仕入金額 在庫数量
期首 在庫残 @110円×10,000個 10,000個
4/30 仕入 @100円×10,000個 1,000,000円 20,000個
7/31 仕入 @95円×20,000個 1,900,000円 40,000個
10/31 売上 @150円×30,000個 4,500,000円 10,000個
1/31 仕入 @115円×20,000個 2,300,000円 30,000個
期末 在庫残 @?円×30,000個 30,000個

・原価率の計算

・期末在庫評価額
期末棚卸資産の通常販売価額の総額4,500,000円(@150円×30,000個)×70%=3,150,000円

低価法

棚卸資産を種類等の異なるごとに区分して、上記の原価法のいずれかによって計算した金額と事業年度末の時価を比較して、いずれか低い方を評価額とする方法です。

棚卸資産の評価方法の届出

法人税では数多くの評価方法を認めていますが、法人は①事業の種類ごと、②棚卸資産の区分ごとに、棚卸資産の評価方法をどの方法にするか選択し、納税地の所轄税務署長に届け出ないといけません。ただし、届出期限までに届け出なかった場合、最終仕入原価法による原価法で評価することになります。

なお、同じ会社であっても小売業の商品は先入先出法による原価法で、製造業の主要材料費は総平均法による原価法といったように、事業の種類や棚卸資産の区分が違えば別々の評価方法を選択することができます。

特別な評価方法

所轄税務署長から承認された場合は、これまで説明した評価方法以外の方法を使うこともできます。なお、法人税の売価還元法と会計の売価還元法は同じ名称でも計算方法が少し違いますので、会計の売価還元法を法人税でもそのまま使用したい場合は、税務署長の承認が必要です。

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2.1 法人税の計算の全体像

法令等

この記事は2019年10月31日現在の法令等に基づいて書かれています。また、このサイトは税法を学ぶ方に税法の一般的な取り扱いを解説するものですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。