2.3.1 役員給与(報酬、賞与)の取り扱い

法人税では役員の報酬や賞与、退職金を役員給与といい、損金算入に一定の制限を設けています。役員給与の損金算入ルールを知らないと、不要な税金を支払うことになるため、会社の節税のためには役員給与の損金算入のルールを正しく理解しておく必要があります。

役員とは?

会社法では取締役や執行役、監査役等を役員といいますが、法人税法での役員の範囲は会社法よりも広く、会社法の役員以外でも、会社の経営に従事している相談役や顧問等が役員に含まれす。

法人税法の役員

次の(1)から(3)のいずれかに該当する場合、法人税法では役員になります。

役員の区分 内容
会社法の役員 取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事、清算人
使用人以外で
経営に従事している人
会長、相談役、顧問などで経営に従事(法人の主要な業務執行の意思決定に参画)している人
同族会社の使用人で
経営に従事している人
次の要件①~要件③を満たす人
要件①:その会社の株式を5%超保有している(配偶者、自分と配偶者が50%超保有する会社が保有する株式を含めて5%超)
要件②:その会社の株式を10%超保有している株主グループに属している
要件③:株式保有割合を最大の株主グループから順々に足していき、初めて50%を超えた段階でそれらの株主グループに属している
株主グループとは?
本人及びその本人と特殊な関係にある個人又は法人のグループをいいます。具体的には次の①~⑥が株主グループになります。

株主グループ
①株主の親族
②株主の内縁関係者
③個人株主の使用人
④個人株主が生活費を負担している人
⑤①~④と生計を一にしている親族
⑥株主が支配している会社
(例)田中一郎さんはA株式会社の使用人ですが経営に従事しています。A株式会社は同族会社で株主構成は次のとおりです。

株主 内容
鈴木さんの親族グループ 30%
田中さんの親族グループ 25%(うち、田中一郎さん10%)
上場会社B 15%
その他 30%(5%を超える株主グループはない)

田中一郎さんは「同族会社の使用人で経営に従事している人」の要件①~③を全て満たしているため法人税では役員になります。
要件①:
田中一郎さん個人で10%(5%超)保有
要件②:田中さんの親族グループで合計25%(10%超)保有
要件③:鈴木さんと田中さんの親族グループを合わせて50%超(55%)

使用人兼務役員

取締役や執行役等の役員でありながら、同時に使用人としての身分(部長や課長等)も持っていて、常時使用人として働いている人を使用人兼務役員といいます。法人が、使用人兼務役員に対して支給する使用人給与(使用人としての勤務に対する給与)は、役員給与ではないため、原則として損金算入に制限はありません。

取締役〇〇部長と取締役〇〇担当
取締役経理部長のように、役員(取締役)でありながら、同時に使用人(経理部長)でもある場合は使用人兼務役員になれますが、取締役経理担当の場合は、経理を統括する取締役という意味になり、使用人としての身分がないため使用人兼務役員にはなれません。

次の役員は使用人としての身分を持っていても使用人兼務役員にはなれません。

使用人兼務役員になれない役員
代表取締役、代表執行役、理事長、代表理事、清算人
社長、副社長、専務取締役、常務取締役、専務理事、常務理事等
合名会社、合資会社、合同会社等の業務執行社員
委員会設置会社の取締役、会計参与、監査役、幹事等
同族会社の特定役員

役員給与

法人が支給する役員報酬や役員賞与などの役員給与(役員退職給与を除く)は、次の3種類に限って損金になります。言い換えれば、この3種類以外の役員給与は支給しても損金にはなりません

損金に算入できる役員給与
定期同額給与
事前確定届出給与
業績連動給与

役員給与には、金銭や物品の支給だけではなく、無償で土地や家を役員に貸している場合のような経済的利益も含まれます。

定期同額給与

1か月以下の期間ごと(例:毎月25日に役員給与)に同額が支給される役員給与を定期同額給与といい、損金になります。同額については、額面が同額でも、税金や社会保険料等を控除した後の手取り額が同額であっても構いません。

定期同額給与は、原則として毎月同額でないといけませんが、役員の地位が変わった場合(例:専務から社長に昇格)や業績悪化で役員給与を減額した場合等の理由がある場合は、途中で役員給与額が変更されていても定期同額給与として認められる場合があります。

(例)社長に毎月額面50万円の役員報酬を支給している(役員賞与等はない)場合
毎月の支給額が同額ですので役員給与は損金になります。

事前確定届出給与

定期同額給与に該当しない場合でも、事前に役員給与の支給額(一定の要件を満たす株式や新株予約権等の支給を含む)が確定していて、納税地の所轄税務署長に届け出ている場合は事前確定届出給与といい、損金になります。

(例)毎月社長に額面50万円の役員報酬を支給していますが、この他6月に賞与として額面30万円を支払った場合
賞与の30万円は定期同額給与の要件を満たしませんが、事前に税務署に届け出ていれば損金になります。

業績連動給与

利益や株価といった業績の指標に連動して算定される役員給与を業績連動給与といい、一定の要件を満たす場合には損金になります。ただし、業績連動給与は要件が厳しいための定期同額給与や事前確定届出給与と比較して、採用できる会社はあまり多くありません。

過大役員給与

定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与は原則として損金になりますが、次のいずれかに該当する場合は、役員給与の額が過大であるとして損金になりません。

過大役員報酬 取り扱い
実質基準
(役員の職務内容や業績等から考えて
役員給与が過大)
過大な部分は損金になりません
(例:100万円支給したものの、適正な役員給与額が70万円と判断される場合、超過する30万円は損金になりません)
形式基準
(役員給与が定款や株主総会等の
限度額を超えている)
限度額を超える部分は損金になりません
(例:株主総会で役員報酬を1,000万円と決議していたものの1,200万円支給した場合、超過額200万円は損金になりません)

役員退職給与

役員に支給する退職給与が、役員として業務に従事した期間や退職の事情、他社の支給額等から考えて高額過ぎると判断される場合は、その高額過ぎる部分は損金になりません。

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2.3 損金の計算の基礎

法令等

この記事は2018年12月31日現在の法令等に基づいて書かれています。また、記事の内容は税法の一般的な取り扱いについての解説ですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。