資産の販売をした場合の法人税の取扱い

収益には商品の販売やサービスの提供など様々なものがありますが、企業会計において収益計上の包括的なルールとして2018年3月に「収益認識に関する会計基準」が公表されたことにあわせて、法人税でも法令通達が整備され収益認識の取り扱いが明確化されています。

ただし、収益認識に関する会計基準が適用されない中小企業については、法人税についても引き続き企業会計原則等に基づいた従来通りの処理が認められています。

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収益認識に関する会計基準

「収益認識に関する会計基準」の公表に伴って法人税の法令通達が整備されているため、最初に収益認識に関する会計基準の内容を簡単に解説します。

従来、日本では収益認識について企業会計原則で「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る」とだけ定められており、収益認識に関する包括的なルールが存在していませんでした。そこで企業会計基準委員会が収益認識に関する包括的なルールとして公表したのが収益認識に関する会計基準です(中小企業については従来通り企業会計原則に基づく会計処理が認められています)。

収益認識に関する会計基準では、収益を次の5つのステップに基づいて認識することにしています。

(具体例)顧客に機械を1,000万円で販売する契約(3年間の保守サービス付き)を締結しました(機械と保守サービスを別々に契約した場合、機械は960万円、保守サービスは240万円です)
次のようにステップ1~5で考えて収益認識します。

収益認識のステップ
ステップ1:顧客との契約を識別
機械の販売契約(3年間の保守サービス付き)を締結
ステップ2:契約における履行義務を識別
機械の販売することと保守サービスをすることの二つの履行義務がある
ステップ3:取引価額の算定
取引価額は機械を販売と3年間の保守サービス合計で1,000万円
ステップ4:契約における履行義務に取引価額を配分
取引価額1,000万円を機械800万円、保守サービス200万円に配分(個別契約の金額を基準に配分)
ステップ5:履行義務の充足により収益を認識
機械800万円は販売時に、保守サービスは3年間にわたって200万円を収益認識する

法人税の取り扱い

収益認識に関する会計基準では上記のとおり5つのステップに基づいて収益認識を行いました。法人税においても概ね同様なの取り扱いなのですが、法人税では「収益の計上単位」「取引価額」「収益の帰属時期」という3つにまとめて取り扱いを規定しています。

収益の計上単位

原則

資産の販売や譲渡、サービスの提供をした場合の収益は原則として個々の契約ごとに計上します。ただし、次のように計上することも認められています。

(1) 複数の契約を組み合わせる

複数の契約を同一の相手(その相手と支配関係のある者を含む)と同時期に締結した場合で、その複数の契約を組み合わせて初めて一つの履行義務になる場合には、別々に収益計上せずに組み合わせて収益計上することができます。

(例)ITシステムを開発のために、設計・開発契約と開発テスト契約を締結した場合
二つの契約を組み合わせて初めて一つの履行義務(システムを開発して引き渡すという約束)になるため、一つのものとして収益計上することができます。

(2) 一つの契約に履行義務に分ける

一の契約の中に複数の履行義務が含まれている場合、契約を履行義務に分割して収益を計上することができます。

(例)一つの契約に機械の販売と保守サービスが含まれている場合
一つの契約に二つの履行義務(機械の販売と保守サービス)があるため、別々に収益を計上することができます。

機械設備等の据付工事

販売した機械設備等の据付工事が次の2つの要件を満たす場合には、機械設備等の販売と据付工事を別々に収益計上することができます。

機械設備等の据付工事
(1) 一定規模以上の据付工事であること
(2) 契約などで機械設備等の販売対価と据付工事の対価を合理的に区分できること
(例)機械装置等を販売し、同時に据付工事をする場合
(1)据付工事が一定規模以上で かつ、(2)金額を合理的に区分できる場合には、区分して収益を計上することができます。

販売した商品等の保証

販売した商品やサービス等に対する保証のうち単なる品質保証(例えば1年以内に故障した場合は全ての顧客に修理交換対応する等)であるものは、商品やサービス等と合わせて収益を計上します。

(例)機械を1,000万円で販売しました。1年以内の故障はメーカーである当社の責任として無償で修理交換を行います。
1,000万円全額が機械の販売代金の収益になります。

部分完成した建設工事等

建設工事等(長期大規模工事を除く)が次のいずれかに該当する場合には、全部が完成していなくても、その事業年度に引き渡した建設工事等の量又は完成した部分ごとに収益計上します。

部分完成した建設工事等
(1) 一つの契約で同種の建設工事等を多量に請け負うような場合
引き渡した数量等に応じて工事代金を受け取る特約又は慣習がある場合は、引き渡した数量等に応じて収益を計上します。
(2) 一つの建設工事等で一部完成した部分を引き渡す場合
引き渡しの都度、その割合に応じて工事代金を受け取る特約又は慣習がある場合は、その割合に応じて収益を計上します。
(例)同種の住宅10戸を3億円で建設する契約を締結し、当事業年度に完成した6戸を引き渡しました。1戸引き渡す都度3,000万円受け取る契約になっています。
6戸の引き渡しが完了によって1億8,000万円受け取ることができるので、1億8,000万円を収益に計上します。

技術サービス

設計や作業の指揮監督、技術指導等の技術サービスが次のいずれかに該当する場合は、期間又は作業に応じて収益を計上します。

技術サービス
(1) 報酬の額が派遣する技術者等の数や滞在期間の日数等で決まる場合
一定の期間ごとに金額を確定させて支払を受ける場合は、その期間ごとに収益を計上します。
(2) 基本設計の報酬と部分設計の報酬が区分されている場合など
報酬額が作業の段階ごとに区分されていて、それぞれの段階の作業が完了する都度、金額を確定させて支払を受ける場合は、その区分ごとに収益を計上します。
(例)技術者一人あたり一日3万円で派遣しています。1年間の契約ですが、毎月金額を確定して支払ってもらうことになっています。
毎月確定した受取金額が収益になります。

ノウハウの頭金等

ノウハウを提供する場合で、2回以上にわたって分割してノウハウが開示され、かつ、支払を受ける一時金又は頭金がほぼこれに見合って分割して支払われる場合には、その開示をした部分ごとに収益をします。
(例)業務管理のノウハウを300万円で提供する契約を締結しました。ノウハウは3回にわたって開示し、開示の都度100万円ずつ支払いを受けます。
ノウハウを開示する都度100万円ずつ収益を計上します。

ポイント、クーポン等

資産の販売等にともなってポイントやクーポン等を不特定多数の顧客に発行する場合で、一定の要件に該当するときは、継続的に適用することを条件に、そのポイントやクーポン等を資産の販売等と区分して、前受金にすることができます。

(例)商品を3,000円で販売し、10%(300円分)のポイントを発行して顧客に付与しました(前受金処理の要件を満たしていてポイントは100%利用される見込み)
商品とポイント10%を合計3,000円で販売したと考えます。したがって3,000円の販売代金を商品の売上分とポイント分に分割し、ポイント分は前受金として処理できます(ポイントは使用されたときに売上になります)

収益の額に含めないことができる利息

資産の販売等を行った場合で、その販売等の契約に金銭の貸付けに準じた取引が含まれているときは、継続的に適用することを条件に、利息相当額を資産の販売等の収益に含めないことができます。

(例)商品を1,000万円で販売し、支払期日が5年後の場合
実質的に商品の販売と5年間の金銭貸付が合わさったものと考えられます。したがって、1,000万円を商品の代金と利息に区分して収益に計上することができます。

取引価額

原則

資産の販売等の取引価額は、原則として第三者間で取引される場合の通常の価額になります。

ただし、資産の販売等をした事業年度末までに対価の額が合意されていない場合は、同日の現況により価額等を適正に見積もります。

(例)通常10万円で販売される商品を、友人に1万円で販売した場合
通常の販売価額である10万円が収益の額になります(差額の9万円は寄附金)

変動対価

資産の販売等の対価が値引き、値増し、割戻し等によって変動する可能性がある場合(返品や貸倒れを除く)で、一定の要件を満たすときは、確定した決算で収益の額を減額又は増額して経理することを条件に、引渡し等の事業年度の取引価額に反映することができます。

(例)取引先に商品を100万円で販売しました。過去の実績から10万円の割戻しが見込まれています(変動対価を取引価額に反映する要件を満たしている場合)
割戻しの見込み額10万円を控除した90万円を収益にすることができます。

収益の帰属時期

原則

資産の販売等の収益は原則として資産の引き渡し日又は役務の提供をした日の属する事業年度の益金になります。

ただし、資産を引き渡した日又は役務を提供した日に近接する日の属する事業年度に収益として経理処理している場合には、その近接する日の属する事業年度の益金になります。

(例)毎月1回ガスの検針を行っています。ガス料金は検針日の属する事業年度の収益として経理処理しています。
検針日の属する事業年度の益金になります。

履行義務が一定期間にわたって充足される場合

役務の提供のうち履行義務が一定の期間にわたり充足されるものについては、その履行に着手した日から引渡し等の日(目的物を引き渡した日、または役務の全部を完了した日)にわたって益金になります。

(例)1年間の清掃作業を行う契約を締結し、当事業年度に3か月分の清掃作業が終わっています。
3か月分の清掃作業料が当事業年度の益金になります。

なお、請負(工事進行基準が適用されるものを除く)については原則として引渡し等の日の属する事業年度の益金になりますが、請負であっても履行義務が一定期間にわたって充足されるものである場合は、進捗度に応じて益金に算入することもできます。

法令等

この記事は2020年4月1日現在の法令等に基づいて書かれています。また、この記事は税法学習者に税法の一般的な取り扱いを解説するものですので、個別の事例につきましては税理士等の専門家にご相談ください。

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