2.11 特別償却と特別税額控除とは

企業に設備投資を促すためなど政策的な目的のため、一定の条件を満たす場合に法人税では特別償却や特別控除といった制度が用意されています。法人税節税の王道ともいえるこれらの制度について解説します。

特別償却

法人が一定の要件を満たした減価償却資産を取得して事業の用に供した場合には、通常の減価償却費とは別枠で追加の減価償却費の計上が認められます。これを特別償却といいます。

特別償却と割増償却
特別償却は計算方法によって2種類に分けられます。広い意味では両方とも特別償却なのですが、両者を区分するために(1)を特別償却(2)を割増償却と呼ぶ場合もあります。
(1)減価償却資産の取得価額×特別償却の割合
(2)通常の減価償却費(普通償却限度額)×特別償却の割合

特別償却や割増償却の割合は、例えば中小企業が設備投資した場合は減価償却資産の取得価額×〇〇%とった具合に、各特別償却や割増償却の制度ごとに決められています。

特別償却の具体例

具体例を使って特別償却した場合の減価償却限度額の計算方法を解説します。

通常の減価償却費の計算が定率法の場合

(例)期首に500万円で機械を取得して使用を開始しました。通常の減価償却費は耐用年数5年の定率法です。特別償却の要件を満たしたので別枠で取得価額の30%の特別償却ができる場合。

1年目:
通常の減価償却費200万円+特別償却150万円=減価償却費350万円

2年目:
期首の帳簿価額が150万円になるので、これを基準に定率法で減価償却すると、減価償却費は60万円になります。

3年目以降:
2年目同様に通常の定率法の減価償却のルールに従って帳簿価額が1円になるまで減価償却します。

特別償却しなかった場合と比較すると次のようになります。

1年目は特別償却した分だけ減価償却費が多くなり節税効果がありますが、2年目以降は逆に減価償却費が減少するので税額が増えてしまいます。耐用年数(5年間)全体で考えると特別償却をしてもしなくても減価償却費の合計額は同額になります。

通常の減価償却費の計算が定額法の場合

(例)期首に500万円で機械を取得して使用を開始しました。通常の減価償却費は耐用年数5年の定額法です。特別償却の要件を満たしたので別枠で取得価額の30%の特別償却ができる場合。

1年目:
通常の減価償却費100万円+特別償却150万円=減価償却費250万円

2年目-3年目:
定額法の場合は1年目に特別償却を行っても通常の減価償却費は100万円のまま変わりません。

4年目:
499,999円減価償却したところで帳簿価額が1円になるので減価償却が終了します。

5年目:
期首の帳簿価額が1円なので減価償却費は計上できません。

特別償却しなかった場合と比較すると次のようになります。

1年目は特別償却した分だけ減価償却費が多くなり節税効果がありますが、4年目の途中で減価償却が終了するので、4年目以降は逆に減価償却費が減少して税額が増えてしまいます。耐用年数全体(5年間)で考えると特別償却をしてもしなくても減価償却費の合計額は同額になります。

特別償却の効果

上記具体例のとおり、通常の減価償却が定率法の場合と定額法の場合とで減価償却費計上のタイミングに違いはありましたが、いずれにしても特別償却は減価償却費計上のタイミングを早めるものであって耐用年数全体で考えると減価償却費の総額は変わりません

特別税額控除

特別税額控除とは、国の政策的な目的のために一定の条件を満たした場合には法人税を減額してもらえる制度です。

特別税額控除の計算例

(例)500万円で取得した機械について取得価額の7%の特別税額控除ができる場合。特別税額控除前の法人税額は300万円でした。
500万円×7%=35万円を法人税から控除できます。したがって、特別税額控除後の法人税は265万円になります。

特別税額控除の効果

特別税額控除は特別償却のように2年目以降の税額計算に影響を与えないのが特徴です。特別償却では1年目に節税効果があるものの、2年目以降は逆に減価償却費が減って増税になってしまいましたが、特別税額控除では1年目に節税効果があるだけで2年目以降増税になりません。

したがって、特別償却が減価償却計上のタイミングを早める(納税を遅らせる)ものだったのに対して、特別税額控除は本当の意味での減税といえるでしょう。

主な特別償却と特別税額控除

特別償却と特別控除のうち主なものを紹介します。ただし、ここで説明しているこの以外にも適用要件や計算方法には細かな規定がありますので、適用にあたっては税理士等の専門家に相談するようにしてください。

1. 中小企業者等が機械等を取得した場合(中小企業投資促進税制)

青色申告書を提出する中小企業者などが1998年6月1日から2019年3月31日の間に一定の要件を満たす機械など(1台160万円以上の機械など)を取得等して国内で一定の事業の用に供した場合には、特別償却(30%)または特別税額控除(7%)ができます。

詳しい説明は2.11.1 中小企業投資促進税制とはをご覧ください。

2. 中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合(中小企業経営強化税制)

青色申告書を提出する中小企業者などが中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けて、2017年4月1日から2019年3月31日に特定経営力向上設備等を取得等し、国内で一定の事業の用に供した場合には、特別償却(100%)または特別税額控除(7%または10%)ができます。

詳しい説明は2.11.2 中小企業経営強化税制とはをご覧ください。

3. 特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合(商業・サービス業・農林水産業活性化税制)

青色申告書を提出する中小企業者などが、認定経営革新等支援機関等(国から認定を受けた税理士、公認会計士、弁護士、金融機関など)が経営改善に関する指導や助言を受けて2013年4月1日から2019年3月31日に経営改善設備を取得し、一定の事業の用に供した場合には、特別償却(30%)または特別税額控除(7%)ができます。

詳しい説明は2.11.3 商業・サービス業・農林水産業活性化税制とはをご覧ください。

4. 研究開発税制

(1) 試験研究費の総額に係る特別税額控除

青色申告書を提出する法人が試験研究をした場合、試験研究費の額に一定割合を掛けた金額を法人税から控除できます。

(2) 中小企業者等が試験研究した場合(中小企業技術基盤強化税制)

青色申告書を提出する中小企業者などが試験研究をした場合、上記(1)の代わりに、試験研究費の額に一定の割合を掛けた金額を法人税から控除できます。

(3) 特別試験研究に係る特別税額控除

青色申告書を提出する法人が試験研究を行って、特別試験研究費(国の試験研究機関や大学との共同研究など。上記(1)または(2)の適用を受けたものを除く)がある場合には、(1)と(2)の他に、特別試験研究費に一定割合を掛けた金額を法人税から控除できます。

(4) 試験研究費の額が高水準な場合の特別税額控除

青色申告書を提出する法人の試験研究費が平均売上金額に対して10%を超える場合には、上記(1)~(3)の他に、試験研究費に一定割合を掛けた金額を法人税から控除できます。

5. 企業主導型保育施設用資産の割増償却

青色申告書を提出する法人が、2018年4月1日から2020年3月31日までに、事業所内に保育施設の新設や増設をして、新しい建物やその付属設備、遊戯用の構築物などを取得等して保育の用に供した場合は、普通償却限度額の12%(または15%)の割増償却ができます。

6. 給与等の引上げと設備投資等を行った場合

青色申告書を提出する法人が2018年4月1日から2021年3月31日に開始する事業年度に支給した給与が一定割合以上増加している場合などの要件を満たす場合は、増加額に対して15%(または20%、25%)の特別税額控除ができます。

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2.1 法人税の計算の全体像
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2.11.3 商業・サービス業・農林水産業活性化税制とは
どっちが得?特別償却と特別税額控除

法令等

この記事は2018年12月31日現在の法令等に基づいて書かれています。