2.1 法人税の計算の全体像

法人税はたくさんある会社の税金の中でも最も重要なものと言っても過言ではありません。したがって、法人税の仕組みをよく理解することが会社の節税の第一歩とも言えます。今回は法人税がどのように計算されるのか、その全体像を解説します。

所得金額

法人税法では収益のことを益金、費用のことを損金といい、その差額つまり利益のことを所得といいます。法人税は所得の金額に税率を掛けることによって計算されます。

・法人税の計算

それでは法人税は会計(決算書)の利益額に法人税の税率を掛ければ計算できるのでしょうか?

確かに収益と益金、費用と損金はそれぞれよく似ているのですが少し違います。その結果、会計の利益額と法人税の所得金額は異なった金額になってしまうので、会計の利益額に税率を掛けても法人税は計算できません。

税務調整

どのように法人税の所得金額を計算するのでしょうか?法人税の計算のために益金と損金をそれぞれ集計するのであれば、会計帳簿とは別に税金計算用の帳簿を備え付けなければならずとても大変です。

そこで法人税では会計の利益額に会計と法人税の差異(具体的には収益と益金の差異、費用と損金の差異差異)を加減算して所得金額を計算することにしています。もちろんどこに会計と法人税の差異があるのか会社はきちんと把握しておかなければなりませんが、会計と法人税が別々に帳簿を持って管理することに比べればずっと簡単です。

(例)決算書の収益が1,000万円、費用が700万円、利益額が300万円でした。ただし費用700万円のうち100万円は交際費で、法人税では損金にならない場合。
交際費100万円が損金にならないということは、会計の費用よりも法人税の損金の方が100万円少ないことになり、結果として法人税の所得金額は会計の利益額よりも100万円多くなります。
したがって、利益額300万円に100万円を足した400万円が所得金額となります。

この例の場合、会計と法人税の差異は交際費の100万円とだけ把握しておけば、100万円を利益額300万円に足して簡単に所得金額400万円が計算できます。会計と法人税が別々に帳簿を持って管理する必要はありませんね。

加算調整と減算調整

このように所得金額は会計の利益額を調整して計算しますが、このような調整のことを税務調整といいます。そして、所得金額を増やす税務調整を加算調整、減らす税務調整を減算調整といいます。

税務調整には以下の4パターンがあります。

(1) 会計上収益に計上したが、法人税では益金にならない場合
会計の収益よりも法人税の益金の方が小さくなるので、会計の利益額よりも法人税の所得金額の方が小さくなる→減算調整が必要

(2) 会計上収益に計上しなかったが、法人税では益金になる場合
会計の収益よりも法人税の益金の方が大きくなるので、会計の利益額よりも法人税の所得金額の方が大きくなる→加算調整が必要

(3) 会計上費用に計上したが、法人税では損金にならない場合
会計の費用よりも法人税の損金の方が小さくなるので、会計の利益額よりも法人税の所得金額の方が大きくなる→加算調整が必要

(4) 会計上費用に計上しなかったが、法人税では損金になる場合
会計の費用よりも法人税の損金の方が大きくなるので、会計の利益額よりも法人税の所得金額の方が小さくなる→減算調整が必要

税務調整の具体例

実際に法人税を計算すると様々な税務調整がありますが、代表的な税務調整をご紹介します。

交際費等

交際費等を会計上費用として計上したとしても法人税では原則として損金にできません(※)。その結果、交際費等を会計上の費用として計上している場合は加算調整が必要になります。法人税ではこのように費用が損金にならないことを損金不算入といいます。

(※)一人あたり5,000円以下の飲食等(社内飲食等を除く)については接待等であっても損金に算入できます。また、一人あたり5,000円超の飲食費等や資本金1億円以下の法人(資本金5億円以上の法人の子法人を除く)の交際費等の中にも損金に算入できるものがあります。また中小企業には交際費等の取り扱いの特例があります。

寄附金

寄附金は損金算入に制限があり、その制限を超える寄附をしても法人税では損金になりません。したがって寄附金のうち制限(限度額)を超える部分の金額には加算調整が必要です。

受取配当金

受取配当金のうち一定の方法で計算した金額は益金の額から除外できます。会計処理としては配当金を受け取った場合に収益になりますので法人税の計算では減算調整が必要です。このように収益を益金から除くことを益金不算入といいます。

退職給付費用

将来支払らうと予測される退職金(または退職年金掛金)を事前に費用計上するのが退職給付費用ですが、法人税では実際に退職金等が支払われるまで損金になりません。この結果、会計処理で費用に計上するタイミングと法人税の計算で損金に計上するタイミングがズレてしまうので、そのズレを調整しないといけません。

(例)社員が入社5年後に退職し、退職金1,000万円支払う場合。退職給付費用は毎年同額計上するものとします。
退職給付費用は毎年200万円ずつ計上されますが、法人税では社員が退職した5年目の損金になります。その結果1年目~4年目は毎年200万円の加算調整、5年目に800万円の減算調整が必要になります。
この場合、費用と損金の計上のタイミングがズレているだけですので1年目から5年目までを合計した場合、税務調整額は0円になります。

法人税の税率

ここまで法人税の所得金額を計算を見てきました。所得金額が計算できたら所得金額に法人税の税率を掛けて税額を算出します。

会社(普通法人)の2018年4月以降に開始する事業年度の税率は以下のとおりです。

(例1)資本金500万円で所得金額1,000万円の株式会社
800万円×15%+(1,000万円-800万円)×23.2%=166.4万円
(例2)資本金3億円で所得金額1億円の株式会社
1億円×23.2%=2,320万円

その他の法人税の計算規定

これまで説明してきたこと以外で法人税の計算に影響がある主なものを紹介します。

欠損金の繰越しと繰戻し

益金が損金より小さい場合、所得金額はマイナスになってしまいますが、このようなマイナスの所得金額のことを欠損金といいます。

欠損金が発生した場合、一定の要件に基づいて翌事業年度に繰り越して翌事業年度の所得金額から控除することができます。また、一定の中小法人等に欠損金が発生した場合、前事業年度に納付した法人税の還付を請求することができます。

欠損金の繰越しと繰戻しの詳しい説明は2.6 欠損金の繰越しと繰戻しをご覧ください。

留保金課税

資本金1億円超の特定同族会社が配当せずに所得を内部留保した場合、通常の法人税の他に追加の法人税が課税されることがあります。これを留保金課税といいます。

(用語の解説)特定同族会社
株式の50%超が創業者一族に保有されているなど少数の株主または株主グループに支配されている会社。
留保金課税の詳しい説明は2.8 留保金課税とはをご覧ください。

所得税額控除

銀行利息や配当などを受け取ると所得税等が源泉徴収(天引き)されますが、源泉徴収された所得税等の額は一定のルールに従って会社が納税する法人税の額から控除することができます。これを所得税額控除といいます。

所得税額控除の詳しい説明は2.9 所得税を払った場合(所得税額控除)をご覧ください。

特別税額控除

政策的な見地から一定の要件を満たした法人は特別に法人税の額を減額してもらえる制度があります。これを特別税額控除といいます。

具体的には社員の給与を一定額以上増やした場合や(社員の所得拡大を促す目的)、中小企業などが特定の減価償却資産を取得した場合(会社の設備投資を促す目的)などに特別税額控除があります。

特別税額控除の詳しい説明は2.11 特別償却と特別税額控除とはをご覧ください。

地方法人税

これまで法人税の計算について説明してきましたが、法人税の子供のような税金に地方法人税という税金があります。

地方法人税もやはり会社が納税しないといけない税金ですが法人税の額をベースに計算するところに特徴があります。

・地方法人税の計算
基準法人税額に地方法人税率4.4%を掛けて計算します。

(用語の解説)基準法人税額
所得税額控除、外国税額控除等の規定を適用しないで計算した法人税の額
(例)法人税の額1,000万円(ただし所得税額控除等はありません)の場合
地方法人税の額は、法人税1,000万円×4.4%=44万円になります。

関連記事

2.2 益金の計算の基礎
2.3 損金の計算の基礎

法令等

この記事は2018年12月31日現在の法令等に基づいて書かれています。