前回までは財務諸表から「収益性」「安全性」を見てきましたが、財務諸表分析最終回の今回は会社の「成長性」について解説します。
会社の成長性はどこを見る?
会社の成長性を判断する上で重要なポイントは、当然のことかもしれませんが本業の収益である売上高の増加にあります。
ただし、このときに大切なのは売上の金額や売上成長率だけを見るのではなく「自社のシェアが伸びている」「業界全体の成長率が高い」「一時的に大きな受注があった」など、売上成長率の裏にある原因を分析することです。
また、自社と他社の成長率を比較することも大切です。自社の成長率が他社よりも高い場合は業界や地域でのシェアが向上していることになりますが、他社よりも低い場合には仮に売上が伸びていたとしても顧客からの支持はむしろ失っている(他社の方が支持を集めている)ため危険なサインと考えるべきでしょう。
「良い成長」と「悪い成長」
会社の売上が順調に伸びている場合は一安心と言いたいところですが、会社の売上高が順調に伸びている場合であっても必ずしも良い成長ばかりとは限らず、悪い方向に向かって成長している可能性もあるため、良い成長と悪い成長を見分けることがとても大切です。
利益率の成長
売上が成長しているときに利益も一緒に成長していることが大切です。例えば売上が5%成長しているにも関わらず利益が2%しか成長していない場合には「値下げ」や「売上原価の増加」「販売費用の増加」などによって利益率が低下していると考えられます。
利益率の低下が一時的な理由による場合であれば大きな問題にはなりませんが、恒常的な理由によって利益率が低下している場合には、売上に対して十分な利益が出せないという体質になりかねないため早期の原因解明と対策が肝心です。
貸借対照表の成長
一般的には売上の成長にともなって債権債務や固定資産なども増えていくため、貸借対照表の総資産も一緒に成長していきます。
ところがここで気を付けたいのが売上の成長よりも貸借対照表の成長の方が早いケースです。このようなケースでは「設備投資を行ったにもかかわらず稼働率が低く売上が伸びていない」など総資産を有効に活用できていない可能性があるため原因分析が大切になります。そして過剰な資産を保有している場合には、将来の設備投資計画の見直しや不要資産の売却なども検討しなければなりません。